シルベスター数列
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シルベスター数の逆数和 1/2 + 1/3 + 1/7 + 1/43 +… が1に収束することのグラフィカルな実演。各行は一辺が 1/k である正方形 k 個からなり、従って面積は 1/k となり、それら正方形の全体は一辺が1の正方形をちょうど被覆する。一辺 1/1807、あるいはそれ以下の正方形は小さすぎて図中で見ることはできない。

数論において、シルベスター数列 (英語: Sylvester's sequence) とは、各項がそれまでの項の総積に1を足したものであるような数列である。最初のいくつかの項は次のようになる:2, 3, 7, 43, 1807, 3263443, 10650056950807, ... (オンライン整数列大辞典の数列 A000058)

「シルベスター数列」という名称は、1880年にこの数列を最初に調査したジェームス・ジョセフ・シルベスターに由来している。数列の各項の値はシルベスター数 (: Sylvester number) と呼ばれることもある。

シルベスター数列の値は二重指数関数的に増加し、その逆数の和は他の単位分数級数よりも速く1に収束する。シルベスター数列を定義する漸化式は、各項の数の素因数分解をより容易にさせるが、数列の増加速度が急速であるために、完全な素因数分解はいくつかの項に対してしか知られていない。

シルベスター数は1のエジプト式分数表現、佐々木・アインシュタイン多様体、オンラインアルゴリズムの実装などに応用されている。
形式的定義

シルベスター数列の第 n 項は次の式で定義される: s n = 1 + ∏ i = 0 n − 1 s i . {\displaystyle s_{n}=1+\prod _{i=0}^{n-1}s_{i}.}

0個の項の積 (空積) は 1 であるため、s0 = 2 である。

あるいは、次のような漸化式で定義してもよい: s i = s i − 1 ( s i − 1 − 1 ) + 1 , ( s 0 = 2 ) {\textstyle \displaystyle s_{i}=s_{i-1}(s_{i-1}-1)+1,\quad (s_{0}=2)}
閉形式での表現とフェルマー数

シルベスター数列は n の関数として、二重指数関数的に増加する。具体的には s n = ⌊ E 2 n + 1 + 1 2 ⌋ {\displaystyle s_{n}=\left\lfloor E^{2^{n+1}}+{\frac {1}{2}}\right\rfloor }

という形式で書くことができる。ここで E はおよそ 1.2640847353...である[1] (オンライン整数列大辞典の数列 A076393)。

シルベスター数列が二重指数関数的増加を示すことは、フェルマー数列 Fn と比較すると驚くべきことではない。フェルマー数は通常、二重指数関数による表式 F n = 2 2 n + 1 {\textstyle F_{n}=2^{2^{n}}+1} によって定義されるが、これはシルベスター数列のような総積を使った漸化式によっても定義が可能である[2]: F n = 2 + ∏ i = 0 n − 1 F i . {\displaystyle F_{n}=2+\prod _{i=0}^{n-1}F_{i}.}
エジプト式分数との関係

シルベスター数列の逆数和による無限級数 ∑ i = 0 ∞ 1 s i = 1 2 + 1 3 + 1 7 + 1 43 + 1 1807 + ⋯ . {\displaystyle \sum _{i=0}^{\infty }{\frac {1}{s_{i}}}={\frac {1}{2}}+{\frac {1}{3}}+{\frac {1}{7}}+{\frac {1}{43}}+{\frac {1}{1807}}+\cdots .}

について考える。この級数の部分和は次のような単純な形で書ける: ∑ i = 0 j − 1 1 s i = 1 − 1 s j − 1 = s j − 2 s j − 1 . {\displaystyle \sum _{i=0}^{j-1}{\frac {1}{s_{i}}}=1-{\frac {1}{s_{j}-1}}={\frac {s_{j}-2}{s_{j}-1}}.}

これは、帰納法によって、またはより直接的に、任意の i に対する次の等式 1 s i − 1 − 1 s i + 1 − 1 = 1 s i {\displaystyle {\frac {1}{s_{i}-1}}-{\frac {1}{s_{i+1}-1}}={\frac {1}{s_{i}}}}

から、級数の畳み込みを行うことによって示される: ∑ i = 0 j − 1 1 s i = ∑ i = 0 j − 1 ( 1 s i − 1 − 1 s i + 1 − 1 ) = 1 s 0 − 1 − 1 s j − 1 = 1 − 1 s j − 1 . {\displaystyle \sum _{i=0}^{j-1}{\frac {1}{s_{i}}}=\sum _{i=0}^{j-1}\left({\frac {1}{s_{i}-1}}-{\frac {1}{s_{i+1}-1}}\right)={\frac {1}{s_{0}-1}}-{\frac {1}{s_{j}-1}}=1-{\frac {1}{s_{j}-1}}.}

部分和が j → ∞ で1に収束することから、級数全体が1に収束することがわかる。従って私たちは、これによって無限の長さを持つ1のエジプト式分数表示を得たことになる。 1 = 1 2 + 1 3 + 1 7 + 1 43 + 1 1807 + ⋯ {\displaystyle 1={\frac {1}{2}}+{\frac {1}{3}}+{\frac {1}{7}}+{\frac {1}{43}}+{\frac {1}{1807}}+\cdots }

このとき、級数を適当な長さで切って、最後の分母を1小さいものに置き換えることで、任意の長さを持つ1のエジプト式分数表示を得ることができる。 1 = 1 2 + 1 3 + 1 6 , 1 = 1 2 + 1 3 + 1 7 + 1 42 , 1 = 1 2 + 1 3 + 1 7 + 1 43 + 1 1806 , … . {\displaystyle 1={\tfrac {1}{2}}+{\tfrac {1}{3}}+{\tfrac {1}{6}},\quad 1={\tfrac {1}{2}}+{\tfrac {1}{3}}+{\tfrac {1}{7}}+{\tfrac {1}{42}},\quad 1={\tfrac {1}{2}}+{\tfrac {1}{3}}+{\tfrac {1}{7}}+{\tfrac {1}{43}}+{\tfrac {1}{1806}},\quad \dots .}

また、無限級数の最初の k 項の和は、k 項からなるエジプト式分数表示のうち1未満で最も大きいものを提供する[3]。例えば、最初の4項の和は 1805/1806 となるため、開区間 (1805/1806, 1) に含まれる数のエジプト式分数表示は少なくとも5つの項が必要になる。

シルベスター数列は、各ステップごとにその部分和が1以下となるような最小の分母を選ぶ貪欲法の結果として見ることもできる。あるいは、(初項である1/2を除外して、) 1/2の奇数貪欲法によるエジプト式分数展開 (Odd greedy expansion) だと考えることもできる。


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