シルバー仮面
[Wikipedia|▼Menu]

.mw-parser-output .hatnote{margin:0.5em 0;padding:3px 2em;background-color:transparent;border-bottom:1px solid #a2a9b1;font-size:90%}

この項目では、1971年 - 1972年の特撮テレビ番組について説明しています。2007年のリメイク版については「シルバー假面」をご覧ください。

シルバー仮面
ジャンルSFアクション
脚本

佐々木守

上原正三

市川森一

石堂淑朗

井上愉味子

監督

実相寺昭雄

山際永三

樋口弘美

大木淳

佐藤静夫

田村正蔵

外山徹

山本正孝

福原博

出演者

柴俊夫

亀石征一郎

夏純子

篠田三郎

松尾ジーナ

玉川伊佐男

岸田森

北村佳子

久保田鉄男

加藤寿

小坂生男

ナレーター森山周一郎
オープニング柴俊夫、ハニー・ナイツ「故郷は地球」
製作
プロデューサー

橋本洋二(TBS)

小林利雄宣弘社

制作TBS宣弘社

放送
音声形式モノラル放送
放送国・地域 日本
放送期間1971年11月28日 - 1972年5月21日
放送時間日曜 19時00分 - 19時30分
放送枠タケダアワー
放送分30分
回数26
特記事項:
第11話より『シルバー仮面ジャイアント』に改題
テンプレートを表示

『シルバー仮面』(シルバーかめん、Silver Kamen)は、宣弘社日本現代企画の製作により特撮テレビ番組の題名、およびその劇中に登場する変身ヒーローの名称である。第11話より『シルバー仮面ジャイアント』に改題された。1971年11月28日から1972年5月21日まで、TBSで毎週日曜19時00分 - 19時30分 (JST) のタケダアワーにて全26話が放送された。
ストーリー

光子ロケットの設計者・春日博士は、設計図を狙うチグリス星人に殺害され、自宅を燃やされてしまう。そのさなか、春日博士の遺児たち5人からなる春日兄妹は父がロケットエンジンの設計図を何らかの方法で隠したことと、次男の光二にシルバー仮面に変身する能力(銀の力)を与えていたことを知る。

父の遺志を継いで光子ロケットを完成させることを決意した春日兄妹は、光子ロケットを奪取して自らの宇宙制覇に利用しようと画策する宇宙人や、人類の宇宙進出を脅威に感じて妨害しようと暗躍する宇宙人などのさまざまな敵と戦う一方、出会う人々の無理解や冷たい視線に耐えながら、父の協力者たちに会うために日本各地を旅する。

そんな春日兄妹の努力が実を結び、ついに光子ロケットは完成して宇宙へ飛び立つことになったが、その行先でサザン星人に襲撃され、ロケットは破壊されてしまう。その時、シルバー仮面はあふれ出た光子エネルギーを浴びてシルバー仮面ジャイアントへ進化し、サザン星人を倒した。こうして新たな力を得た春日兄妹は、父の愛弟子・津山博士と共に新たなロケット開発と、押し寄せる巨大宇宙人との戦いに情熱を燃やしてゆく。
概要

本作品は、特撮映像制作会社・日本現代企画の制作した初の特撮テレビドラマである。当初は等身大ヒーローものとしてスタートしたが、第11話から巨大ヒーローものに路線変更され、作品タイトルも『シルバー仮面ジャイアント』に改められた。

ストーリーは、「正義の目的を持ちながら世間から理解されず、冷たく迫害されながらも、父の遺した光子ロケットの完成を夢見て各地を放浪する春日兄妹の葛藤」という設定を前面に押し出し、TBSプロデューサー橋本洋二の意向で『逃亡者』の設定を参考にした、アダルトタッチのドラマ作りが行なわれている[1][2][3][4]。事実、TBSも本作品のターゲットを小学校の高学年から中高生とコメントしていた[5]。シルバー仮面のキャラクターも地味で、派手な光線技や肉体技もなく、全体的に重いトーンの作劇が行われた[注釈 1]

企画段階から参加した佐々木守は、春日兄妹の設定について「『ウルトラマン』の科学特捜隊をホームドラマの図式にはめ込んだもの」としており、宇宙人を一方的な敵として描かない展開は「『ウルトラマン』などを書いてきた“結果”」であると述べている[6]。脚本家の1人である市川森一は後年、本作品について「巨大な社会正義に押しつぶされそうになりつつも、懸命に生きる兄弟の姿を描きたかった」と語っている。橋本も「打倒ホーム・ドラマ」が企画意図にあったとし、リアルで硬質なドラマ作りが念頭に置かれていた。佐々木が左翼的な思想の人物であったことから、春日兄妹の描写を当時の学生活動家に重ね合わせたものと解釈する向きもある[1][7]
企画経緯

怪獣ブームが去った後に経営難となった円谷プロダクションから分かれた多数のスタッフによって日本現代企画が設立され、自前の撮影スタジオを所有し、新しい映像作品の製作を目指していた。

一方、前番組『ガッツジュン』の不振を受けたTBSプロデューサーの橋本洋二と広告代理店宣弘社小林利雄は、当時社会現象となっていた「変身ブーム」のなか、実相寺昭雄監督を交え、新番組として本作品を企画[1]。かつて「ウルトラシリーズ」が放映されていた、「タケダアワー」で放送されることとなった。

スタッフは実相寺率いる「コダイグループ」が核となり[注釈 2]、同グループの池谷仙克が宣弘社社長の小林によって招かれ、シルバー仮面と、すべての宇宙人のデザインを担当。企画当時のネーミングは、『21世紀鉄仮面』だったが、さすがに「大時代過ぎる」との意見で没となっている。5人兄妹という設定は、クランクインが迫った中での選考では『逃亡者』のように1人でこなす力量のある俳優が望めないのではないかとの考えから採用された[2]

主演の春日光二役となる柴俊夫は、所属事務所の社員が懇意にしていた小林に紹介し、彼から監督の田村正蔵を介して橋本と顔合わせし、起用された[11]。橋本は、当時「柴本」だった彼の芸名を、この番組で「柴俊夫」と改名させている。当時の柴は俳優業よりモデル業がメインだったが、橋本はこの起用によって、すでに決定していた春日兄妹の配役を柴のイメージに合わせようと改めてオーディションを行い、松尾ジーナ以外を配役し直す入れ込みようだった。しかし、この再配役は後述するように、クランクインを大幅に遅らせることとなった。篠田三郎は、『ガッツジュン』に出演していた縁で橋本に起用された[11]

脚本家の市川森一による初期プロット『大仮面』では、「四次元」や「超獣」といった単語が使われており、これらの要素は市川がメインライターを務めた『ウルトラマンA』へ引き継がれた[12]。同じく市川による別プロット『白銀仮面』では、後半に登場するサソリンガやインバス星人に類似した怪獣が描写されていた[13]
異例ずくめの第1話

前述したように、柴と松尾以外のキャスティングの決定が遅れたこともあって、クランクインは11月4日にずれ込んでしまった[14]。さらに裏番組には、原作者の許可が得られず制作中止となった『長くつ下のピッピ』のピンチヒッターとして円谷プロダクションの特撮番組『ミラーマン』が放送されることになり、TBSは前番組『ガッツジュン』を予定より1週早く打ち切り、初回放映が12月5日から11月28日に繰り上げられた[15]

このため、第1話は異例の短期間での制作を余儀なくされた。そんな中、劇中クライマックスのチグリス星人の炎上シーンが先行撮影されたが、着込んだ着ぐるみに火薬を仕込んで撮影した際に火が内部へ燃え移り、着ぐるみの半分以上が燃えて溶けてしまった[16][17][注釈 3]。この結果、チグリス星人の着ぐるみは使い物にならなくなってしまい、焼け残りが死骸の描写に使われたものの、その後のチグリス星人の描写は顔のアップだけで処理し[16][20]、春日兄妹がスペクトルグラスでチグリス星人の正体を見破るシーンも暗いものとなってしまった。第1話の画面の暗さは、これをごまかすために仕方なく採られた処置だった。

第1話の試写会では、冒頭の暗さなどに関係者の多くが懸念を抱いたという[21][22][2]

一方、監督の実相寺や春日光三役の篠田三郎は試写会では好評であったと証言しており[23][24]、宣弘社大阪支社に在籍していた佐多直文も、スポンサーの武田薬品から特にクレームはなかったと述べており[25]、宣弘社営業部に在籍していた渡辺邦彦は、多くの関係者が作品に難色を示す中で、宣弘社営業部長の大本勝義だけが「画期的だ」と絶賛して放送に至ったと述べている[26]

この第1話はタイトルが出るまで実に6分強ものプロローグが入るという異例の構成になっており、その後も予告編のテロップミスなどが生じてしまっている。しかし、実相寺は異例づくめの第1話の映像に対して強いこだわりを持ち、本放送時にTBSの調整室に出向き、放映画像の輝度を明るく調整しないよう指示していた[要出典]。一方、あまりにも暗すぎた映像となったため、実相寺本人が輝度を明るくするよう調整指示して放映した、という逆の証言もある[27]

実相寺は第1話・第2話を監督した後は制作に参加していないが、その理由についてはTBSが若手スタッフを育てようという方針であったことと、ウルトラシリーズと異なり連続性のあるストーリーであったことから途中復帰が難しかったことを挙げており、自身から降板を希望したわけではないとしている[23]。擬斗の高倉英二も実相寺の降板は本人の意志ではなく、視聴率が取れなかったことによるプロデューサーらの判断であったと推測している[28]
『ミラーマン』との視聴率競争

本作品は、放映開始時から裏番組として同じ特撮ヒーロー番組である円谷プロダクションの『ミラーマン』(フジテレビ)との視聴率競争が意図されていた作品である[注釈 4]。『ミラーマン』の放送は急遽決定したものであったが、結果として円谷プロと同社を離れたスタッフによる同門対決となった[30][注釈 5]。奇しくも主役の春日光二を演じた柴俊夫は、『ミラーマン』のパイロット版でも主役を演じており[33]、『ミラーマン』の主演の石田信之も『シルバー仮面』の主役へのオファーがあったと述べている[34]。「ミラーマン#『シルバー仮面』との視聴率競争」も参照

『ミラーマン』に先行した第1話は14.6%の視聴率を獲得したものの、『ミラーマン』の放送開始日である第2話からは、20%台を記録する同作に対して本作品は1桁台となり、視聴率は常に苦戦を強いられた[35][36]。また、重いドラマ作りに加え、等身大で暗躍する宇宙人に代表される怪奇要素やストーリーの暗さ、異色の演出描写が、ターゲット層である児童層からの支持を受けにくいものとなってしまったことが視聴率的苦戦の一因とされている[37]。第9話「見知らぬ町に追われて」の回は予告編からショッキングな映像を中心に構成し、結果的に全26話の中で最低の視聴率3.8%を記録している。

こうして、高いストーリー性を持ち込んだ本作品のドラマ作りは視聴率的な苦戦を呼んだため、第11話から大胆な軌道修正が行われた[38][37]。TBSおよび宣弘社は第3話・第4話の視聴率を見て、第6話の制作と並行して路線変更に乗り出した[36]
巨大化ヒーローへの設定変更

かくして等身大ヒーロー番組だった『シルバー仮面』は、第11話から『シルバー仮面ジャイアント』と改題され、巨大化ヒーロー番組として設定の多くが修正・変更されることとなる[注釈 6]。第11話から第13話は、宣弘社作品常連の田村正蔵が監督を務めた[40][注釈 7]

それまでの基本設定だった春日兄妹の放浪と設計図探しは、第10話で春日博士がすでに完成させていた光子ロケットのエンジンが発見され、設計図をめぐる秘密は春日博士が兄妹たちに与えた試練だったという形で終了する。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:150 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef