シリコンウェハー
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シリコンウェハー

シリコンウェーハ
エッチング(配線形成)済みの300 mmシリコンウェハー。

シリコンウェハー(: silicon wafer) は、高純度な珪素(シリコン)のウェハーである。シリコンウェハーは、珪素のインゴットを厚さ1 mm程度に切断して作られる。

シリコンウェハーは集積回路 (IC、またはLSI)の製造に最も多く使用される。このウェーハにアクセプターやドナーとなる不純物導入や絶縁膜形成、配線形成をすることにより半導体素子を形成することができる。
大口径化

ウェハー1枚あたりに取れるチップの数が多ければ低コスト化に繋がるため、インゴットの直径は大口径化が進んでいる。MOSデバイス用には150 mm(6インチ)、200 mm(8インチ)、300 mm(12インチ)のものが一般的に使用される。ダイオード等のチップサイズの小さなものには未だに100 mm(4インチ)、125 mm(5インチ)のものも使われている。基本的にチップサイズの大きなMPUや、大量に生産してコストを低減する必要のあるメモリDRAMフラッシュメモリ)には大口径のウェーハが使用され、300 mm化の進展も著しい。

また近年は450 mmのシリコンウェハーを開発する動きがあり、半導体メーカー数社によるコンソーシアムG450C」も作られている。また一方で、450 mm化してもその開発コストを回収できるのか懸念する動きも見られる。
種類

半導体デバイス用シリコンウェーハとしては、鏡面加工したPolished Wafer (PW) が使われるが、その内容を細かく見るとPWの中でも結晶欠陥COP (Crystal Originated Particle) の密度によっていくつかの水準に分けられるほか、Epitaxial Wafer(エピタキシャルウェーハ)、Anneal Wafer(アニールウェーハ)などいくつかのバリエーションがあり、コスト、特性を勘案してデバイス製造に用いられている。
製造工程

ここではシリコンウェハーの一般的な製造工程を記す。
大まかな流れ

現在のシリコンウェーハの大部分はCz法によって製造されているため、Cz法の大まかなプロセスを示す。
結晶成長プロセス
シリコン融液→種結晶からの成長→ネッキングによる結晶無転位化→径制御→直胴部形成→ボトム形成→メルトからの切り離し→冷却→方位&径加工→ブロック切り出し
ウェーハ加工プロセス
スライス→面取り→ラップ→エッチング→ドナーキラー→精面取り→研磨工程間には汚れを取り除くため、RCA洗浄をベースにした各種洗浄が用いられる。
シリコン精製「ケイ素#製法」も参照

ノルウェーブラジルで産出した純度の比較的高い石英を還元して、純度98 %程度の金属シリコンを作る。これを粉砕して塩素ガス、次いで水素ガスと反応させて、モノシラン (SiH4) やトリクロロシラン (SiHCl3) を作る。この過程で金属性の不純物はAlCl3やFeCl3のような塩化物として蒸発させトリクロロシランと分離することで金属性の不純物を1 ppba (parts per billion atomic) 以下まで取り除く。トリクロロシランは高純度の水素と CVD装置中に導入することで単体のシリコンを析出させ、高純度の多結晶シリコン・ロッドを得る[1][2]ケイ素単結晶インゴット。これを薄く切断してシリコンウェハーにする。
単結晶成長

高純度多結晶シリコン・ロッドは砕いて粗い粒状とし、一度洗浄した後、チョクラルスキー法(Czochralski法、Cz法)、又は、フローティングゾーン法(Floating Zone法、FZ法)によって単結晶のインゴットが作成される。
Cz法チョクラルスキー法の概略図

材料となる粗く砕かれた高純度多結晶シリコンは、石英るつぼに詰められる。この段階で最終的な半導体の特性を決める微量の導電型不純物である、P型ならホウ素 (B) を、N型ならリン (P) やアンチモン (Sb) を加えておく。石英るつぼは不活性ガスで満たされた炉内に納められると、周囲からカーボンヒーターで加熱されて多結晶シリコンはやがて溶融する。溶けたシリコン液相表面の温度は溶解温度となるように厳密に管理され、その表面中心にピアノ線で吊るされた種結晶を接触させた後、ゆっくりと回転させながら引き上げていく。種結晶が接触した下部ではわずかに冷やされたシリコンが固体となって析出し種結晶の結晶配列を引き継いで溶解シリコン表面との間に成長してゆく。溶解シリコンから引き上げて成長させる過程で、引き上げ速度を少し上げたり溶解シリコンの温度を少し上げると結晶径が減少し、その逆は結晶径が拡大する。

種結晶はそれまでに作ったシリコン単結晶の残余であるが、内部に原子配列の転位が含まれている可能性があるため、下に成長してゆくシリコンへこの乱れが引き継がれないように「種しぼり」(ネッキング)と呼ばれる意図的に3 ? 5 mm程度まで細くした部分を作る。この種しぼりによって結晶に転位が存在していても熱拡散によって転位が上方に移動するので無転位となる。また、結晶欠陥は転位が表面に移動することで結晶界面のエネルギーを減じることも欠陥が排除されることになる。種しぼり後は、るつぼの温度を下げて溶解シリコンを過冷却状態にする。望む口径のインゴットとなるように、溶解シリコンの温度、引き上げ速度、回転数を調整しながらゆっくりと回転させて引き上げていく。2000年代後半現在最新の直径300 mmインゴットは重さ350 kgにもなる。

石英製るつぼの表面から溶解シリコン中に酸素が混入するが、多くがSiOとして融解シリコン表面からガスとなって蒸発し炉壁などに付着して微粒子となる。この微粒子が再び融解シリコン表面に落下して結晶内に取り込まれると転位結晶となるため、炉の上部からアルゴンガスを導入して真空ポンプで吸引しSiOガスを排除することでこの影響を小さくする。また、炉壁から対流によって直接、結晶中に取り込まれる酸素を少なくするために、超伝導電磁石による静磁場を炉内に印加して溶解シリコン内の対流を抑制するMCZ法(Magnetic CZ法)が使われる[1]。また、融解シリコンから出たSiOガスが炉内のヒーターとして使われるグラファイトと反応してCOやCO2が発生している。これを放置すると融解シリコンに溶け込み結晶中に取り込まれて炭素濃度を高めることになるのでこのためにもアルゴンガスで排気されている[2]。偏析係数が1より小さい炭素 (0.07) や窒素 (7×10?4) 、ホウ素 (0.8) 、リン (0.35) といった不純物の濃度は結晶の成長に従って石英るつぼ中の融解シリコン液の減少により徐々に濃くなるため、結晶成長初期より終期の方が結晶中に取り込まれる不純物の濃度は高くなる。偏析係数が1より大きい不純物はこの逆の効果が起きる。酸素の偏析係数が1より大きいか小さいかは結論が出ていない。ドーパントとしてリンよりホウ素が選ばれるのは偏析による偏りが比較的小さいためである。

CZ法は大口径の単結晶が作りやすく、2000年代現在では量産半導体で使用される[100]方位の大口径ウェハー用の単結晶インゴットは、すべてこの方法により作られている。例外として結晶の成長方向にそって抵抗率の変化が大きいという問題により、パワーデバイスにはあまり用いられない。
FZ法

多結晶シリコンのインゴットを部分的に溶融しながら単結晶化を行う方法でゾーンメルト法の一種。結晶の成長方向の不純物分布が一定であり、また酸素濃度が非常に少ないという利点があるが、結晶の半径方向の抵抗率分布にばらつきがあるため、中性子照射により抵抗率の均一化が図られる。
加工
ブロック切断・外周研削

インゴットの両端部(トップとテール)を切断し外周を研削して、長い物は適切な長さで切断され所定の直径を持った長さ30 cm ? 50 cmの円柱状の「ブロック」を作る。
方位加工オリエンテーションフラットの位置の分類

X線方位測定によって結晶方位を測定し、後の工程で方位が判るように所定の位置に「オリエンテーションフラット」 (orientation flat; OF) 又は「ノッチ」を刻み込む[1]
スライシング

ブロックをカーボン台に接着してから、ダイシングソー、ワイヤーソー、又は内周刃ブレード[1] (ID‐Saw) でウエハー状に切り出す。直径300 mmのブロックは、通常、マルチ・ワイヤーソーによって1度に最大200枚の切断が行なわれる[2]
ベベリング

シリコンは固くてもろく、ウエハーの端面がスライシング時の鋭利なままでは、続く処理工程での搬送や位置合わせなどの取り扱い時に容易に割れたり欠けたりして、断片がウエハー表面を傷つけたり汚染したりする。


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