シリアルポート(英: serial port)とは、情報を(パラレルポートとは異なり)1度に1ビットずつ送受信するシリアル通信物理インタフェースである[1]。パーソナルコンピュータの歴史の大半において、データはシリアルポートを通じてモデム、端末、その他様々な周辺装置のデバイスに伝送された。
イーサネット、FireWire、そしてUSBといったインタフェースも全てデータをシリアルストリームとして送信するが、「シリアルポート」という用語は通常、モデムやそれに類似した通信デバイスとの接続を目的としたRS-232規格と上位互換または下位互換なハードウェアと同一視される。
シリアルポートがない現代のコンピュータでは、RS-232シリアルデバイスとの互換を可能とするためにはシリアル-USB間のコンバータ(USB - シリアル変換ケーブル)が必要となる。工業自動化システム、科学計器、POSシステムのようなアプリケーションや、一部の工業用および消費者製品では今日においてもシリアルポートを多く使用している。サーバコンピュータはシリアルポートを診断用制御コンソールとして使用することがある。(ルーターやスイッチといった)ネットワーク機器は設定用にシリアルコンソールを使用することが多い。シリアルポートは単純で安価であり、コンソール機能が高度に規格化され普及しているため、ネットワーク機器の分野で永く使用されている。シリアルポートはホストシステムからのソフトウェアサポートをほとんど必要としない。
ハードウェア1つのシリアルポートを搭載するPCI Express×1カード。
IBM PCのようにコンピュータの中には、非同期シリアル形式に文字を変換したり逆に文字に非同期シリアル形式を変換したり、さらに自動でデータのタイミングや構造の面倒を見てくれるUARTと呼ばれる集積回路を使用しているものもあった。初期のホームコンピュータに見られたようにとても低コストなシステムではビットバンギング技術を使用することで、出力ピンを通じたデータの送信用にはUARTの代わりにCPUを使用していた。ラージスケールインテグレーション (LSI) UART集積回路が普及する前のミニコンピュータやマイクロコンピュータは、シリアルポート用のシフトレジスタ、論理ゲート、カウンタやその他全てのロジックを実装した複数のスモールスケール集積回路から構成されたシリアルポートを搭載していた。
初期のホームコンピュータはRS-232と非互換なピンアウトであったり、RS-232と非互換な電圧レベルであるプロプライエタリなシリアルポートを搭載していることが多かった。このようなシリアルポートは生成される電圧レベルに耐えられなかったり、特定業者の製品にユーザをロックインするために様々な違いがあったりするので、RS-232デバイスとの相互運用が不可能な場合もある。
低価格プロセッサにより、RS-232を代替するUSBやFireWireのような現在の高速でより複雑なシリアル通信規格が可能となった。低価格プロセッサにより、マスストレージ、音楽、そしてビデオデバイスといったより低速なシリアル接続ではうまく動作しないデバイスを接続できるようになる。
ピンヘッダを通じてしかアクセスできないとしても、多くのパーソナルコンピュータのマザーボードには未だに最低1個のシリアルポートが搭載されている。スモールフォームファクタシステムやラップトップではスペースを節約するためRS-232コネクタポートが省かれているが、回路は依然として存在する。RS-232が標準となって非常に長いため、シリアルポートを制御するために必要な回路はとても安価になった。さらにRS-232は、時にはパラレルポート用の回路も併せた単一のチップとして存在することがよくある。 シリアルポートの個々の信号は単方向で、2つのデバイスを接続する時1つのデバイスの出力はもう1つのデバイスの入力に接続しなければならない。デバイスは「データ端末装置」(Data Terminal Equipment, DTE) と「データ回線終端装置」(Data Circuit-terminating Equipment, DCE) の2種類に分類される。DTEデバイスへの出力である回線はDCEデバイスへの入力であり、DTEデバイスへの入力である回線はDCEデバイスへの出力である。このため、ストレート有線ケーブルでDCEデバイスをDTEデバイスに接続できる。慣例として、コンピュータと端末はDTEであり、モデムと周辺装置はDCEである。 2つのDTEデバイス(または非常にまれだが2つのDCEデバイス)を接続する必要がある場合、アダプタかケーブルのどちらかの形式によるクロスオーバーヌルモデムを使用しなければならない。
DTEとDCE