ショートメッセージサービス
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ショートメッセージサービス(: short message service、SMS)とは、携帯電話スマートフォン同士で短いテキスト文章)によるメッセージを送受信するサービスである。テキストメッセージ(: text message)と呼ばれる場合もある。
概要

1984年フィンランド人のマッティ・マッコネン[1]が、GSM携帯電話のサービスのひとつとしてSMSを発案。1992年12月にイギリスの携帯電話会社「ボーダフォン」のエンジニアがSMSの送受信に初めて成功した[2]

その後、欧州電気通信標準化協会(ETSI)がSMSを国際標準規格に採用し、ほぼ世界共通(日本を除く)のテキスト・メッセージサービスとして定着した。国際電気通信連合(ITU)によると、全世界で2010年に発信されたSMSの総数は、6兆1000億通に達した[3]

SMSは、電話番号宛に送信する。プッシュ型電子メールと同様[4]に、携帯電話の電源が入っていれば自動的に受信する。メッセージは、SMSセンター(SMSC)を経由して送られる。送信先が圏外の場合は、受信可能になった時に再度送信される。GSM/W-CDMAのSMSでは、1回のメッセージで送信可能な文字数は最大140オクテットまでで、文字コードには「GSM 7ビット標準アルファベット」[5]UCS-2を使用できる。前者を使用した場合、最大文字数は160文字である。UCS-2を使用した場合、ラテン文字のほか漢字キリル文字アラビア文字など様々な文字を送受信できるが、送受信する端末が対応している必要がある。この場合は最大70文字となる。また、SMSはGSM(3GPP系)でもCDMA(3GPP2系)でも、仕様の上での配達保証はない。すなわち、携帯電話の電源をオフにしていたり圏外にいる期間が、2-3日以上あると、その後、携帯電話を圏内に持っていってもメッセージは残っている保証はない。これは仕様上、滞留しているメッセージをSMSC側で消去することが認められているためである。

携帯電話のメッセージ・システムとしては、MMSやeメールがトラフィック・チャネルを使用するのに対して、SMSおよび拡張メッセージサービス(英語版)(EMS)は、信号チャネルだけで伝送されトラフィック・チャネルは使用しない。このため、待受状態や通話中でも着信可能であり、メッセージのバイト単価が安く、近代的な携帯電話網では即時性が高い。また、SMSは、テキストメッセージとしての利用以外に、マルチメディアメッセージングサービス(MMS)、WAP Pushプッシュ型電子メールボイスメール通知、インスタントメッセージの実装、OTA(オーバー・ジ・エア)プロビジョニング、さらには、各種オンラインサービス・アカウントの二段階認証などにも使用されている。

2008年11月、英「エコノミスト」誌は、SMSの世界中での成功に対して、発明者のマッコネンに「イノベーション賞(英語版)」を授与した[6]

なお、SMSは、技術規格から生まれた技術者用語で、より一般消費者向けの用語として、当初はテキストメッセージとの呼称が用いられていた。同じような用語として、MMSに対する、ピクチャーメッセージがある。しかし現在では、SMSという用語はより一般に浸透していて、普通に使われている。
字数制限の緩和

2000年代に3GPPの仕様が改訂されて、連結SMS(英語ではConcatenated SMS)が可能となった。これは、SMSのペイロード140オクテットから6オクテットを連結制御用のフィールドに割り当て、最大255連結することが出来るようにした。255連結の場合、符号化方法により、17085文字(UCS-2)あるいは39015文字(GSM 7bit)まで記述できる。連結SMSの作成、分割、組み立ては、送信端と受信端でおこなわれて、携帯電話網の上を長大なパケットが流れるわけではなくてパケットサイズは従来と同じで配送メカニズムも従来どおりである。3GPP仕様の上では、最大255連結可能だが、実際には、オペレータまたは端末メーカーが、送信元(端末、SMSCのインターネットI/F)の仕様を255より遥かに低い値で設定しているので、255連結のメッセージを作成できることは、ほとんどない。連結SMSに対応していない古い端末では、バラバラに流れてくるメッセージを組み立てて連結することができないので、ひとつのメッセージとして読むことは出来ない。
世界のSMS

SMSは全世界で、携帯電話を利用して短いテキストを送受信する際の主流の通信手段である。第二世代携帯電話規格の主流であるGSMCDMAでは、業界標準の端末認定仕様であるGCFやCDGの基準を満たすにはSMSの実装が必要で、テレメトリー(遠隔測定)用などを除いたほぼ全ての端末が装備している。世界的には実質この二つのみが標準仕様なのでゲートウェイの開発は困難ではなく、通信規格やキャリア(通信会社)さらには国をまたいで電話番号のみでのメッセージ交換が可能となっている。

携帯電話のサービスとしては通話よりも安価なため、若い世代を中心にSMSの送受信が頻繁に行われるようになった。

携帯電話の高機能化の過程で、携帯電話のメッセージサービスは、文字の大きさを変えたり画像音声、簡単なアニメーションなどを入れたりできるようにしたEMS[7]や、さらにカラー画像や動画を入れられるようにしたマルチメディアメッセージングサービス(MMS)が後に導入された。しかし、両側の端末の対応が必要なEMSやサーバーが必要なMMSに対し、SMSは全てのGSM/CDMA端末に必ず実装されており、メッセージあたりの単価が大幅に安く、かつ即時性が高いため、携帯端末間の短文通信では、依然として主流である[8]

また短文の送受信しか出来ないため、使用言語によって様々な略語が用いられる。例えば、英語の場合は、U(you)、R(are)、BTW(by the way)、WBASAP(write back as soon as possible)、CUL(see you later また後で)などが使われ、texting(SMSを使用中、SMSで送る)などの言葉も生まれた。

従来の携帯電話からスマートフォンが主流の時代になり、様々なインスタントメッセンジャーが開発、利用されるようになった。代表的なものには、WhatsAppFacebook MessengerWeChatLINEカカオトークSignalなどがあげられる。しかし、それらのアカウントを開設する場合に、SMSでの本人確認を求められることが多い。

SMSは、携帯端末同士のメッセージの交換に止まらず、インターネットオークションの通知メッセージ、テレビ番組が企画する人気投票、視聴者の投稿、世論調査、銀行のオンライン口座やソフトウェア・ライセンスのPINコード認証などにも用いられている。パスワードよりも強固な二段階認証として各種サービスを使用する前に、SMSにコードを送付する用途も多くある。
日本のショートメッセージ・サービス

日本はSMSの対応が遅く、キャリア間のSMS送信も海外と比べて遅れを取った。その代わり日本の携帯端末は独自の進化をし、高機能化とEmailサービスが拡充されていた。
2G/PDC時代(1990年代)

1996年に日本で初めてSMSが開始された。1997年後期に新たに三社の携帯電話事業者でショートメール・サービスが開始されると、それまでブームにあったポケベルは急速に駆逐され、若者に新たな文字コミュニケーション文化を誕生させた。

日本では電話番号でメッセージを送受信するこのサービスを当初文字メッセージ・サービスと呼ぶことが多かった[9]。日本での第2世代移動通信システムの時代には、NTTドコモ・グループ/デジタルフォン・グループ/ツーカーフォン・グループの「PDC」、IDO/セルラーフォン・グループのCDMA、およびPHSと規格が並立した。このうち、IDO/セルラーフォン・グループのCDMAのSMSは世界仕様のひとつであり、本来国外とのやりとりは問題なかった。しかし、ユーザーが第一に求める国内・他事業者のユーザーとのメッセージ交換ができず、SMSの最大の利点である「電話番号のみでのテキスト交換」は失われてしまった。[10]

1996年4月

ショートメッセージ・サービスが開始された。

DDIセルラー(その後のau関西地域など)のPDCサービス セルラー文字サービス


1996年11月20日

DDIポケットのPメールが開始。Pメールは20文字まで送受信


1996年12月

アステルのAメール


1997年4月

ドコモPHSのきゃらトーク・きゃらメール


1997年5月

モジトーク(1997年5月)


1997年6月

携帯電話各社がサービスを開始。

NTTドコモmovaショートメールSoftBankおよびY!mobileのSMS、KDDI沖縄セルラー電話au)のSMS(Cメール)・SMS(i)、


1997年9月

日本移動通信(IDO、その後のau関東・中部地域)のPDCサービスで提供されていたプチメール


1997年11月

デジタルホンデジタルツーカースカイメール


1999年1月頃

たのしメールDDI-セルラーグループ(現在のau)


1999年6月?1999年12月

スカイメールで、デジタルツーカー、デジタルホンとツーカー各社との事業者間でメッセージが可能になった。

1999年8月にデジタルツーカーとデジタルホンが日本テレコム傘下になり、同年10月に「J-フォン」を冠した商号に変更。ツーカー3社は第二電電に譲渡。

なお、ツーカーはスカイメールを2008年3月31日にサービス終了。ソフトバンクはスカイメールを2010年3月31日に終了。


3G時代(2000年代)

日本では通信方式の規格が乱立し、SMSの最大の利点である「電話番号のみでのテキスト交換」が、携帯会社が違うと行えないという状況となった。それに代わり、日本でのメッセージ・サービスとしては、携帯電話事業者所有のドメインをメールアドレスとしたキャリアメールが主に使われた。歴史的内容となるので、各社のEメールサービスに付いても記載する。

第3世代移動通信システムでは、日本の各社も世界標準のW-CDMAcdma2000を採用し、これらの端末はSMSの実装がなければ、業界標準の端末認定試験をパスできないのでSMSを実装していたが、ひきつづき日本国内では事業者間を跨いでメッセージの送受信が出来なかった。

1999年2月

NTTドコモがEメールサービス、iモードとともにiモードメールを開始。movaでは全角テキスト250字までの送受信。データ量に応じたパケット通信のため安く送信ができた。


1999年4月14日

DDI-セルラーおよびツーカーセルラーは、EZwebを開始した。cdmaOne/PDC用


1999年4月頃?

IDOは、EZaccessを開始。

EZaccessのメールアドレスは「△△△@ez▲.ido.ne.jp」。開始当初は△△△の携帯番号であったため2000年4月下旬よりシステム変更をして、Eメールネームにするようにした。その後、"EZweb" とサービス名が変更された。


1999年11月25日

ツーカーグループ(ツーカーホン関西、ツーカーセルラー東京、ツーカーセルラー東海)も「EZweb」でサービスを提供。PDCでの提供。


2000年6月1日

DDIポケット ・ライトメールを開始。全角かな漢字が45文字まで送受信可能。


2005年10月11日

10月1日付けでKDDI本体に吸収合併されたツーカーから、同じKDDIのauへの同番移行が可能となった。


2006年10月24日

携帯電話番号ポータビリティが開始された。


2007年1月16日

ソフトバンクがホワイトプランの提供を開始。ソフトバンク同士のSMSとMMS送受信は終日無料


3G→4G時代(2010年代)

SMSの規格が統一され、携帯電話のキャリアが違ってもショートメッセージの送受信が可能になった。

2011年6月1日

NTTドコモ、KDDI、沖縄セルラー電話、ソフトバンクモバイル、イー・アクセスの5社(当時)がそれぞれ提供しているSMSサービスで、2011年7月13日より相互接続が開始される事が発表され、実施された[11]。これは、海外に遅れること約10年にしての達成である。なお、NTTドコモとソフトバンクモバイルについては当初より国際SMSの提供はしていた。


2011年6月23日

LINEが日本でサービスを開始。スマートホンの連絡帳と連動し、双方が連絡帳に登録している場合は、メッセージを開始できる仕組み。SMSと違い、テキストメッセージだけでは無く、写真や映像、スタンプを送ることが出来る。


2011年10月12日

Apple社からiMessageがリリースされた。(通信事業者が許可している場合)iOSのメッセージAppで、双方が携帯番号をiMessageに紐付けている場合は、メッセージ以外に写真や動画なども送る事ができる。iMessageで送信した場合はSMS送信料はかからず、データ通信量が消費される。iMessageを使っていない相手には、通常のSMS/MMSで送信されその場合は通信会社が規定の送信料がかかる。


2014年5月以降

NTTドコモ、KDDI、沖縄セルラー電話、ソフトバンクモバイル、イー・アクセス、ウィルコムの携帯電話・PHS事業者6社(当時)では、SMSの絵文字の共通化を行うこととなった。[12]


2014年10月1日

ウィルコム(現・ソフトバンク)のPHSでもSMSサービスを開始した。ただし、これ以後に発売される端末と従来からの端末についてはアップデート対応を行う端末に限定される。なお、SMS非対応機種へのMNP移行は不可としており、SMS対応機種(アップデート対応の端末を含む)については、カタログでは「MNP対応」とも表示されている。


2017年

これまで70文字制限だったSMSが、670文字まで引き上げられた。

KDDIでは2017年5月26日、NTTドコモは2017年10月30日、ソフトバンクは不明。


2018年

次世代SMSとして「+メッセージ」が提供され、NTTドコモ、au、ソフトバンクとサブブランドから利用出来る。リッチコミュニケーションサービス(RCS)規格に準拠したサービスで、電話番号だけで送信が出来る。ただし、SMSとの互換性は無く、+メッセージを使用していない利用者への送信が出来なく、メッセージ作成時にSMS送信アプリに誘導される。


4G→5G時代(2020年代)

2020年4月8日

楽天モバイルがサービスを開始。


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