プロテオバクテリア門(プロテオバクテリアもん、Proteobacteria)は細菌の門の一つである。光栄養、化学栄養、独立栄養、従属栄養、好気呼吸、嫌気呼吸、発酵など様々な代謝様式をもつ系統群が含まれ、炭素・窒素固定に関わるものや、自然界の物質循環に関わる多くの自由生活性のものが含まれている。また、大腸菌、サルモネラ、ビブリオ、ヘリコバクターなど多種多様な病原体が含まれている。また、この分類群は、他の細菌の分類群と同様に基本的にはrRNA配列によって定義されている。その多様性から、ギリシャ神話で姿を変幻自在に変える神プローテウスにちなんで名付けられた。
プロテオバクテリア門は、2021年に国際原核生物命名規約によってPseudomonadota(シュードモナス門)と改名された[15]。 プロテオバクテリアは、主としてリポ多糖(LPS)から成る外膜を持ち、グラム陰性である。鞭毛によって動き回るものが多いが、不動性のものや、滑走性のものもある。滑走性のものとして、粘液細菌という集合して多細胞性の子実体を形成する独特な細菌が挙げられる。代謝型も多様である。ほとんどのものは絶対好気あるいは通性嫌気性の従属栄養性細菌であるが、例外も多い。必ずしも近縁ではない多くの属が光合成を行うことができるが、それらは赤い色をしていることが多いので紅色細菌と呼ばれている。しかし、系統的には光栄養と化学栄養の菌種が混在しているので、それらをまとめて紅色細菌と呼ばれたこともある。 プロテオバクテリアは非常に大きな分類群であり、綱から種まで全ての階級で細菌最大の多様性を持つ。rRNA配列に基づいて7つに大別され、オリゴフレクサス綱以外はギリシャ文字のアルファからゼータで呼ばれている。これらは綱として取り扱われ、ゼータ以外は、分類命名の公式雑誌であるInternational Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology (JSEM) に学名として正式に記載されている。ただし、一部のグループの単系統性については疑問が持たれており、実際、近年のゲノム解析に基づく新体系(例えば GTDB アルファプロテオバクテリアには光合成性の属の大部分と、それ以外にC1化合物を代謝する属、植物や動物の共生体(リゾビウム目など)、危険な病原体であるリケッチアなどが含まれている。さらに真核細胞のミトコンドリアはこのグループの細菌に由来していると考えられている(細胞内共生説を参照)。ただし、ミトコンドリアと最も近縁のアルファプロテオバクテリアが何かについては結論が出ていない。酢酸菌のアセトバクター属も含まれる。Magnetococcales
特徴
下位分類
アルファプロテオバクテリア綱
ベータプロテオバクテリア綱
ベータプロテオバクテリアは好気性や通性の細菌からなり、それらはたいてい非常に多様な化合物を分解できるが、さらに化学合成無機栄養性(アンモニア酸化をするニトロソモナスなど)や、光合成性(RhodocyclusやRubrivivax属)のものも含まれている。ベータプロテオバクテリアはアンモニアを酸化して植物にとって重要な亜硝酸を生じ、様々な植物の窒素固定に重要な役割を演じている。その多くは下水や土壌といった環境試料に見付かる。この綱の病原体としては淋病や髄膜脳炎を起こすナイセリア科のものや、バークホルデリア目の百日咳菌などがある。
ガンマプロテオバクテリア綱
ガンマプロテオバクテリアは、腸内細菌科、ビブリオ科、シュードモナス科といった、医学的、科学的に重要な細菌群を含んでいる。非常に多くの重要な病原体がこの綱に所属しており、例えばサルモネラ(腸炎・腸チフス)、赤痢菌、エルシニア(ペスト)、ビブリオ(コレラ、腸炎ビブリオ)、緑膿菌(院内感染や嚢胞性線維症患者における肺感染症)、肺炎を発症させるレジオネラ、肺炎桿菌などがある。