シュードウリジン
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シュードウリジン

IUPAC名

5-[(2S,3R,4S,5R)-3,4-Dihydroxy-5-(hydroxymethyl)-oxolan-2-yl]-1H-pyrimidine-2,4-dione
優先IUPAC名5-(β-D-ribofuranosyl)pyrimidine-2,4(1H,3H)-dione
別称psi-Uridine, 5-Ribosyluracil, beta-D-Pseudouridine, 5-(beta-D-Ribofuranosyl)uracil
識別情報
CAS登録番号1445-07-4 
PubChem15047
ChemSpider14319 
UNII7R0R6H6KEG 
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CHEBI:17802 

SMILES

O=C1N\C=C(/C(=O)N1)[C@@H]2O[C@H](CO)[C@@H](O)[C@H]2O

InChI

InChI=1S/C9H12N2O6/c12-2-4-5(13)6(14)7(17-4)3-1-10-9(16)11-8(3)15/h1,4-7,12-14H,2H2,(H2,10,11,15,16)/t4-,5-,6-,7+/m1/s1 Key: PTJWIQPHWPFNBW-GBNDHIKLSA-N 

InChI=1/C9H12N2O6/c12-2-4-5(13)6(14)7(17-4)3-1-10-9(16)11-8(3)15/h1,4-7,12-14H,2H2,(H2,10,11,15,16)/t4-,5-,6-,7+/m1/s1Key: PTJWIQPHWPFNBW-GBNDHIKLBY

InChI=1S/C9H12N2O6/c12-2-4-5(13)6(14)7(17-4)3-1-10-9(16)11-8(3)15/h1,4-7,12-14H,2H2,(H2,10,11,15,16)/t4-,5-,6-,7+/m1/s1Key: PTJWIQPHWPFNBW-GBNDHIKLSA-N

特性
化学式C9H12N2O6
モル質量244.20 g/mol
外観White granular powder
への溶解度Highly soluble in water.
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

シュードウリジン (: pseudouridine、ギリシャ文字のΨや英文字のQで略記される)[1] は、ヌクレオシドであるウリジン異性体リボース環ウラシルの間のグリコシド結合のN-C結合がC-C結合に置き換わっている。RNAに知られている100を超える修飾塩基としては最も一般的で[2]、Ψはすべての生物種、ほとんどのRNAに見出されている[3][4]

転写やその後の合成過程の後、RNAは化学的に異なる100以上の修飾を受ける。こうした修飾は転写後の段階でRNAの発現を調節している可能性があり、RNAの翻訳、局在、安定化などさまざまな役割を果たしている可能性がある。シュードウリジル化もそうした修飾の1つであり、ウリジンがC5-グリコシド結合型異性体であるシュードウリジンへ変換される。ウリジンには一般的なリボースのC1位とウラシルのN1位の間のC-N結合が存在するのに対し、シュードウリジンではリボースのC1位とウラシルのC5位がC-C結合を形成している。C-C結合は、より大きな回転自由度と立体配座の柔軟性を与える[3]。さらに、シュードウリジンにはN1位に余分な水素結合供与体が存在する。シュードウリジンは5-リボシルウラシルとしても知られ、tRNArRNAsnRNAsnoRNAなどの構造的RNAの構成要素として普遍的に存在している。近年では、タンパク質をコードするmRNAにも発見されている。シュードウリジンは最も豊富に存在する修飾塩基であり、生物の3つのドメインすべてに存在し、最初に発見された修飾塩基である。このヌクレオチドは「5番目のヌクレオチド」であると見なされており、酵母のtRNAの4%を占めている。この塩基修飾はRNAを安定化し、余分なイミノ基を介して水分子と水素結合を形成することで塩基のスタッキングを強化する。大腸菌Escherichia coliのrRNAにはシュードウリジンが11個存在し、酵母の細胞質のrRNAには30個、ミトコンドリアの21S rRNAには1つ、ヒトのrRNAには約100個存在する。これらからは、生物の複雑さとともにシュードウリジル化の程度が増大していることが示唆される。rRNAやtRNA中のシュードウリジンは局所的な構造を微調整して安定化し、mRNAの解読、リボソームの組み立てとプロセシング、そして翻訳に関する機能の維持を助けることが示されている[3][5][6]。snRNA中のシュードウリジンは、スプライソソームRNAとpre-mRNAとの相互作用を高め、スプライシングの調節を促進することが示されている[7]シュードウリジンはΨ-シンターゼの働きによりウリジンから生合成される。
さまざまなRNAへの修飾と影響
tRNA出芽酵母S. cerevisiaeのtRNAAla。シュードウリジンはΨで示されている。

ΨはtRNAに普遍的に存在し、tRNAに共通した構造モチーフの形成を促進する。そうした構造モチーフの1つがTΨCステムループであり、Ψ55が関係している。ΨはDステムとアンチコドンステムループにも一般的にみられる。各構造モチーフにおいて、Ψの独特な物理化学的な性質は標準的なUでは不可能な構造安定化を可能にしている[3]

翻訳時に、ΨはtRNA分子とrRNA、mRNAとの相互作用を調整する。Ψや他の修飾ヌクレオチドは、それらが存在するドメインの局所的構造に影響を与えるが、RNA分子全体のフォールディングに影響を与えることはない。アンチコドンステムループ(ASL)では、ΨはtRNAがリボソームに適切に結合するために重要であるようである。ΨはASLの動的な構造を安定化し、30Sリボソームへのより強固な結合を促進する。ASLのコンフォメーションの安定化は、翻訳時の適切なアンチコドン-コドン対合の維持を助ける。この安定性は、ペプチド結合の形成速度を低下させ、不正確なコドン-アンチコドン対合を排除するための時間を長くすることで、翻訳の正確性を向上させている可能性がある。しかしながら、tRNAのシュードウリジル化は細胞の生存に必須ではなく、アミノアシル化にも通常は必要とされない[3]
mRNA

Ψは、タンパク質合成の鋳型となるmRNAにも存在している。mRNA中のΨ残基は終止コドンUAA、UGA、UAGのコーディング特性に影響を与える。これらの終止コドンのU→Ψへの修飾は、U→Cへの変異と同様に、ナンセンスサプレッション(英語版)を促進する[8]
rRNA

Ψは、全ドメインの生物とその細胞小器官のリボソームの大小のサブユニットに存在する。リボソームでは、Ψ残基はドメインII、IV、Vに密集しており、RNA-RNA間またはRNA-タンパク質間の相互作用を安定化している。Ψによってもたらされる安定性は、rRNAのフォールディングとリボソームの組み立てを補助している可能性がある。Ψは局所構造の安定性にも影響を与えている可能性があり、翻訳時のデコーディングの速度と正確性、校正機能に影響を与える[3]
snRNA

Ψは、真核生物の主要なスプライセオソームのsnRNAにも存在している。snRNA中のΨ残基は多くの場合系統学的に保存されているが、分類群や生物種によって多少の差異が存在する。snRNA中のΨ残基は、通常RNA-RNA間またはRNA-タンパク質間の相互作用に関与する領域に位置しており、スプライセオソームの組み立てや機能に関与する。snRNA中のΨ残基は、スプライセオソームの適切なフォールディングや組み立て位に寄与し、pre-mRNAのプロセシングに必要不可欠である[3]
シュードウリジンシンターゼ

シュードウリジル化は、転写後、すなわちRNAが形成された後に行われるRNA修飾である。この修飾を行うタンパク質はシュードウリジンシンターゼ(PUS)と呼ばれている。PUSは生物の全てのドメインに存在する。研究の大部分はPUSがtRNAを修飾する機構に関して行われており、そのためsnRNAやmRNAに関する機構は明確ではない。PUSタンパク質のRNAに対する特異性、構造、そして異性化機構はさまざまである。さまざまなPUSの構造は4つのファミリーに分類される。ファミリー内では、共通した活性配列と重要な構造モチーフが存在する[2]
TruA

TruAドメインは、tRNA、snRNA、mRNAのさまざまな部位を修飾する。このファミリーによるウリジンの異性化機構にはまだ議論がある[6][9]tRNAと結合したシュードウリジンシンターゼ

PUS1(英語版)は内に存在し、tRNAのさまざまな部位、U2 snRNAU44、U6 snRNAのU28を修飾する。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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