シュナン・ブラン
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シュナン・ブラン
ブドウ (Vitis)
シュナン・ブラン
色白
種Vitis vinifera
別名スティーン、ピノー・ド・ラ・ロワール
原産地フランス、ロワール
主な産地ロワール、南アフリカ
主なワインヴーヴレ、コトー・ド・レイヨン、ソーミュール(スパークリング)
病害房の腐敗、日焼け、収量過剰

シュナン・ブラン(仏:Chenin blanc)、あるいはピノー・ド・ラ・ロワール(仏:Pineau de la Loire)はフランスロワール渓谷原産の白ワイン用ブドウ品種である。酸味に富んだブドウ品種であるため、スパークリングワインに用いたり、甘口のデザートワインに仕上げてもバランスの良いものになるほか、樹勢を抑えずに栽培すれば穏やかな味わいのワインにもなる。ロワール以外では、ニューワールドにおいても栽培されている。特に南アフリカでは極めて広く栽培され、スティーンの名前で知られている。ヤン・ファン・リービックが1655年に南アフリカで最初にブドウ栽培を始めた時から、シュナン・ブランは栽培されていた可能性がある[1]。あるいは、1685年にナントの勅令が撤回された際に南アフリカに逃れたユグノーによって持ち込まれたのが始まりであるとの説もある。オーストラリアにおいては、過去には別の品種だと間違えられることが多々あったため、シュナン・ブランの歴史にははっきりしない部分が多い。ジェームズ・バズビーが1832年に植えた可能性があるほか、C. ウォーターハウスが南オーストラリアのホートンでスティーンを1862年から栽培していた[2]
目次

1 品種特性

2 歴史

3 他のブドウ品種との関係

4 栽培

5 収穫量と収穫期

6 産地

6.1 フランス

6.2 南アフリカ

6.3 アメリカ合衆国

6.4 その他の生産地域


7 醸造とワインのスタイル

8 ワイン

9 食品との組み合わせ

10 脚注

品種特性

シュナン・ブランからなるワインは、テロワールヴィンテージ、生産者の醸造手法などを反映しやすい[3]。冷涼な気候においては、果汁の糖度は高く、酸は豊富でありフルボディでフルーティーなワインになる。フランス北部では、夏の気温が不安定であるため、果実が未熟で酸味が強くなってしまうのをカバーするために補糖を行うことがあるが、そうすると十分な品質のワインにならない。そこで、現在では熟度の低いブドウはクレマン・ド・ロワールと呼ばれるスパークリングワインの原料にすることが多い。AOCアンジューの白ワインにはマルメロ林檎の香りがあり、辛口白ワインのなかでは最もシュナン・ブランの特徴が現れている。近郊のヴーヴレではそこまで辛口ではなく、熟成とともに蜂蜜のような香りが出てくる。素晴らしいヴィンテージでは、収穫を遅らせブドウを貴腐化させることも行われ、香りが強く粘性の高いデザートワインが生み出される。そのような貴腐ワインは長期熟成により品質が向上しうる[4]
歴史

フランスのワイン学者であるピエール・ガレによると、シュナン・ブランは9世紀頃にアンジューで生まれ、少なくとも15世紀までにはトゥーレーヌにまで広まった[4]。845年にシャルル2世の領地の2箇所で栽培されていたとの記述がGlanfeuil修道院に残されている。そのブドウ畑はロワール川左岸に位置し、それぞれスーランジェ、ベッセという名前で呼ばれていた[5]

トマス・ボワイエは1496年1月3日にシュノンソー周辺のブドウ畑を購入し、ブルゴーニュボーヌジュラのアルボワ、あるいは近郊のオルレアンやアンジューから数種類のブドウ品種を持ち込んだ。このときのブドウ品種のひとつ、当時プラン・ダンジューと言われていた白ブドウは、シュノンソー城の当主とその義理の兄弟でコルムリーの大修道院長であるDenis Briconnetの手によって、1520年から1535年の間にトゥーレーヌのシノン城の近くの地域に植えられた。このプラン・ダンジューこそが現在のシュナン・ブランである可能性があり、名前はシュナン山に由来して偶然に付けられたとみられる[5]

フランスの作家であるフランソワ・ラブレー(1494-1553)はアンジュー産の白ワインを激賞しており、ガルガンチュワ物語の25章においてこのブドウのとしての効能について記している。

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犬葡萄(レザン・シュナン)の汁でフロジエの臑を優しく洗ってやると、効果覿面、忽ち癒ってしまった。[6]

南アフリカにこのブドウがもたらされたのは、オランダ東インド会社が築いたケープ植民地にヤン・ファン・リーベックがブドウの苗木を持ち込んだのがきっかけであると考えられている。20世紀には、ロワールで栽培されていたシュナン系統の1品種が、実はシュナン・ブランとは無関係のベルデホという品種であることが判明した。ベルデホはフランスのAOC規定ではロワールで使うことができない[3]
他のブドウ品種との関係

1999年に行われたDNA解析により、シュナン・ブランはジュラ地方で栽培されているサヴァニャンと親子関係にあることが分かった。さらなる解析で、トロソーやソーヴィニヨン・ブランの兄弟であることが分かり、これらはサヴァニャンの子孫にあたると考えられているため、シュナン・ブランもサヴァニャンを親に持つことが強く示唆されている[5]

この品種とGouais blancと呼ばれるHunnic grapeの交配によってバルザック・ブラン、コロンバール、ムスリエ・サン・フランソワといった品種が生まれたこともDNA解析によって判明している。南アフリカでは、イタリア系品種であるトレッビアーノと交配させることで、ウェルドラやチェネルといった品種が生み出された[5]

長年にわたり、シュナン・ブランは遺伝的に遠い品種とも混同されることが起きていた。ポルトガル領のマデイラ島アゾレス諸島で栽培されるベルデホや、スペインで栽培されるアルビージョといった品種は、オーストラリアでシュナン・ブランだと思われていたことがある[5]
栽培 貴腐の影響を受けたブドウの例。写真はソーテルヌ地方のソーヴィニヨン・ブラン。

シュナン・ブランは芽吹きが早く、果実が熟す時期は中庸からやや遅い程度である[5]。暖かい年では、ロワールの冷涼な気候にあってもブドウは十分に熟し、複雑性とフィネスに富んだワインができる。ブドウの樹齢もワインの品質に影響し、樹齢が高いワインは自然と収量が減るため高品質なワインとなる。貴腐の影響を受けると、果汁は濃縮され香りは強くなり、できあがるワインは、花の香りこそ明確ではなくなるものの、より深く重層的な香りを持つようになる[3]

芽吹きを遅くし、熟す際の糖度が高くなるように、新たなクローンが模索されている。これらのクローンのうち6つがフランス政府によって認可されている。ブドウの木は半直立性で、には3?5箇所切れ目が入っている。果房は円錐形で翼状であり、黄緑色をしている[2]。果実の粒は、平均で長さ16.0 mm、幅14.2 mm、重量1.79 gである[7]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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