シュトゥルモヴィーク
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最も有名なシュトゥルモヴィークの一つである Il-2

シュトゥルモヴィーク(ロシア語:штурмовик;ラテン文字転写:?turmovik、Shturmovikなど)は、労農赤軍ソビエト連邦軍ロシア連邦軍などロシア圏で用いられる軍用機の機種区分の一つ。略号としてはしばしばSh(?;Шシャー)が用いられる。シュツルモヴィーク、シュトルモヴィク、シュトルモビクといった表記をされる事もあるが、当記事ではシュトゥルモヴィークで統一する。
概要冷戦期に開発された軍用ジェット機でシュトゥルモヴィークの一種とされるSu-25

「штурмовик(シュトゥルマヴィーク、シュトゥルモヴィーク)」という語は、一般に「襲撃する者」を意味するロシア語名詞で、ドイツ語系の名詞「штурм」(シュトゥールム:「襲撃、攻撃」の意)から作られた動詞「штурмовать」(シュトゥルマヴァーチ:「襲撃する、攻撃する」の意)から作られた語である。従って、ロシア語内では「攻撃機」以外により一般的な意味で使用されることも多く、航空機名としても単に「襲撃するもの」という意味で使用され始められたと考えられる[注 1]。現代においては、超音速ジェット戦闘機よりも小型で軽便な、西側諸国の高等練習機軽攻撃機に相当する機体(Yak-130MiG-ATなど)も含まれる。

そのため、日本語として最も適当な訳は「襲撃機(しゅうげきき)」であるが、「攻撃機」と訳されることも多い。また、個々のシュトゥルモヴィークによって性格が異なることもあり、「戦闘爆撃機」や「爆撃機(軽爆撃機)」、あるいは「急降下爆撃機」と訳される場合もある。こうしたことから、急降下爆撃を任務としないシュトゥルモヴィークでも「急降下爆撃機」と翻訳されるという弊害も生じている。逆に、「急降下爆撃機」(Пикирующий бомбардировщик)と呼ばれるAr-2Pe-2Tu-2などがシュトゥルモヴィークと呼ばれることはまずない。

一方、第二次世界大戦前半にソ連軍の主力対地攻撃機としてシュトゥルモヴィーク的役割を担ったSu-2は、「近接爆撃機」(ブリージュニイ・ボムバルヂローフシチク;ближний бомбардировщик;略号:ББ)または「軽爆撃偵察機」(リョーフキイ・ボムバルヂローフシチク・ラズヴィェーチク;легкий бомбардировщик-разведчик)と分類されている。また、ソ連には他に「攻撃機」(または「打撃機」;ウダールヌィイ・サモリョート;ударный самолет)や「戦闘爆撃機」(イストリェビーチェリ・ボムバルヂローフシチク;истребитель-бомбардировщик)という機種区分もある。前者は主流にはならなかったが、後者は特にジェット機時代、数多くの機体が開発・使用された。

また、Il-2のみを指して「シュトゥルモヴィーク」と呼ぶことがあるが、これはIl-2が最も有名なシュトゥルモヴィークであるためで、これがこの機体の固有名称というわけではない。シュトゥルモヴィークとして開発された初めの機体は、1928年2月から計画されたTSh-Bや同時期に開発され1931年に初飛行したTSh-1などで、前者は大型の単葉機、後者は小型の複葉機であった。前者は計画に終わったが、後者からはTSh-2などの発展型がいくつか製作され、1930年代中盤のSSS(R-5SSS)やDI-6Shなどの開発・配備まで使用された。

なお、1930年代後期以降の大日本帝国陸軍においても、既存の「軽爆撃機」と異なる新機種区分として「襲撃機」が存在している。この計画によって誕生・量産された「九九式襲撃機」は、「重爆撃機(九七式重爆撃機一〇〇式重爆撃機)」と同じく航空撃滅戦に特化している「軽爆撃機(九九式双発軽爆撃機)」と異なり、低空域にて敵地上軍(地上部隊・機甲部隊砲兵陣地)の攻撃・友軍地上部隊の支援(近接航空支援)に比重を置いた「地上攻撃機」に相当するものであった[1]。また、防漏タンクに留まらず機体要部に本格的な装甲エンジン下面、中央翼下面、操縦席下面、背面、胴体下面を防弾鋼板で保護)を施すなど、日本陸軍の「襲撃機」は運用思想・設計思想ともにシュトゥルモヴィークに相当する区分である。
主なシュトゥルモヴィーク

東側諸国で開発された航空機の内、シュトゥルモヴィークと分類されるものの年代順の一覧。

設計局機体名称初飛行年分類
TsKBTSh-11931シュトゥルモヴィーク
TSh-2
ShON
ツポレフTSh-B重シュトゥルモヴィーク
ミコヤン・グレヴィッチTSh-31934シュトゥルモヴィーク
ポリカルポフSSS (R-5SSS)高速軽シュトゥルモヴィーク
コチェーリギン・ヤーツェンコDI-6Sh1935軽シュトゥルモヴィーク
コチェーリギンBSh-11937シュトゥルモヴィーク・爆撃機
ポリカルポフVIT-1 (MPI-1、SVB)対戦車攻撃機
グルーシンSh-Tandemシュトゥルモヴィーク
ポリカルポフVIT-21938対戦車攻撃機
ニェーマンHAI-51シュトゥルモヴィーク
HAI-52
コチェーリギンSh (LBSh)1939軽シュトゥルモヴィーク
スホーイShBシュトゥルモヴィーク・爆撃機
イリューシンBSh-2(TsKB-55)装甲シュトゥルモヴィーク
BSh-2(TsKB-57)1940
Il-2重シュトゥルモヴィーク
ミコヤン・グレヴィッチPBSh-1シュトゥルモヴィーク
PBSh-2シュトゥルモヴィーク
スホーイSu-61940
イリューシンIl-41941重シュトゥルモヴィーク
ポリカルポフU-2VS多目的軽夜間爆撃機
ヤコヴレフYak-2 KABBシュトゥルモヴィーク
トマシェビッチペガース1942
スホーイSu-4軽爆撃機・シュトゥルモヴィーク
ヤコヴレフUT-1B軽シュトゥルモヴィーク
UT-2MV
イリューシンIl-81943重シュトゥルモヴィーク
スホーイSu-8
イリューシンIl-101944
ツポレフTu-2Sh
イリューシンIl-161945シュトゥルモヴィーク
Il-201948
Il-401953
ミコヤン・グレヴィッチSN(MiG-17SN)
MiG-15bis(ISh)1959
ヤコヴレフYak-361964
イリューシンIl-28Sh1967
ヤコヴレフYak-381970
スホーイSu-251975
イリューシンIl-1021982重シュトゥルモヴィーク
ヤコヴレフYak-52B1985軽攻撃機
スホーイSu-391993対戦車シュトゥルモヴィーク
MAPO MiGMiG-AT1996多用途戦闘教育機
ヤコヴレフYak-130戦闘教育機
ROS-アエロプログリェースT-504
スホーイPSSh開発中止シュトゥルモヴィーク

主な襲撃機

日本陸軍において襲撃機に分類されていた航空機の一覧。

開発者試作名称(キ番号)機体名称初飛行年備考
中島キ13キ13試作襲撃機計画のみ
三菱キ51九九式襲撃機1939
キ65キ65試作襲撃機計画のみ・戦闘機に要求変更
満飛キ71キ71試作軍偵/襲撃機1941試作のみ・軍偵察機兼用
陸軍航空工廠キ93キ93試作襲撃機1945試作のみ
満飛キ98キ98試作戦闘襲撃機高高度戦闘機に要求変更・試作中断
川崎キ102乙キ102乙試作襲撃機1944試作段階で実戦配備
三菱キ103キ103試作襲撃機キ83試作戦闘機の襲撃機型・計画のみ


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