シャープゲンゴロウモドキ
鴨川シーワールド(千葉県鴨川市)で生体展示されているシャープゲンゴロウモドキ成虫
分類
シャープゲンゴロウモドキ(Dytiscus sharpi、シャープ源五郎擬)は、コウチュウ目ゲンゴロウ科ゲンゴロウモドキ属の水生昆虫の一種。 体長28 - 33mm、体重は約1.7gで[1]、ゲンゴロウ科の代表種であるナミゲンゴロウよりやや小型である。体型は雌雄で異なり、雄は長卵型、雌は卵型である[1]。背面はわずかに緑色を帯びた黒褐色だが、頭楯
目次
1 特徴
2 生態
2.1 生活史
2.2 行動
2.2.1 産卵
2.3 生理生態
2.4 移動と分散
3 分類・分布
4 保全状況評価及び絶滅の危機と対策
5 参考文献
6 脚注
6.1 注釈
6.2 出典
7 関連項目
特徴
前頭中央後方には暗赤色の三角形の紋がある[1]。前頭両側の黄色部の内側には点刻を有する浅い凹みがあり、上唇前縁は弓状に湾入する[1]。前胸背板は前縁付近に粗い点刻列を不規則に備え、雄では光沢があるが、雌では点刻列を密に装い光沢を欠く[1]。雄の上翅にはより強い点刻があり各2条の点刻列があり、後方にも粗い点刻を散布するが、雌の上翅にはより強い点刻が散布され前半に各10個の縦溝を持つ[1]。この縦溝は一般的に関西型では上翅中央にまで及ぶ深いものとなり、関東型では雄の上翅の点刻列程度か消失しているが、個体差がある[1]。
覆面は暗赤褐色で光沢が強く、前胸両側は黄褐色、前胸腹板突起、後胸腹板内方、後季節内方はより暗い色となる[1]。腹部第4・5節には両側に赤褐色の長い紋があるがあまり目立たない[1]。
脚は黄褐色ないし赤褐色で、中・後脚の脛節及び附節には雌雄ともに長い遊泳毛を持つ[1]。雄の前・中附節は基方3節が広がり、吸盤を持つ[1]。
幼虫は体長43.4 - 55.4mmでゲンゴロウモドキ属の他2種よりやや小型[2]。背面は灰褐色もしくは黄褐色から暗褐色であるが、ゲンゴロウモドキに比べてより淡色である[2]。側面および腹面は白色もしくは灰白色、ただし頭部、前胸、腹部第7節および第8節の硬化した部分は黄褐色から暗褐色を帯びる[2]。脚は黄褐色、頭部は亜方形で大腮の湾曲は他2種より弱い[2]。下唇側面には多くの短毛をそなえる[2]。前胸腹板は腎臓形で、幅は長さの2.32倍、前方の縁は明瞭に切れ込む[2]。附節前方腹面縁に3 - 7本の二次毛をそなえる[2]。 雌成虫は3 - 4月頃にセリやガマなどの水生植物の茎に産卵し、卵は2 - 3週間ほどで孵化する[3]。1・2齢幼虫はそれぞれ約1週間、3齢幼虫は約2週間で成長し、孵化後約1ヶ月ほどで3齢幼虫は餌を摂らなくなりその1 - 3日後に上陸する[3]。 上陸後岸辺の土中の地表から1 - 2cmの深さに蛹室
生態
生活史
交尾は秋季から始まり3月程度まで続く[3]。交尾の際には、雌の尾端には雄の分泌物により白色の交尾栓が形成されるが、交尾栓はメスが自ら後肢で外して複数回の交尾が可能となる[3]。成虫の寿命は、飼育下では 3年以上の記録もあるが、野外では3年まで確認されている[3]。また夏季の温度が高い場所では短くなり、1年ほどとされる[3]。 基本的に夜行性である。幼虫、成虫ともに、呼吸のために水面に浮上する[3]。また、成虫は飛翔により移動できるが、幼虫の蛹化の際の陸上での移動能力は極めて低く、コンクリート等による護岸上を移動することはできない[3]。繁殖時は、オスが前肢および中肢の吸盤を使って、メスの前胸背および上翅に付着し、約2 - 4時間交尾を続ける(実際の交尾時間は3 - 4 分と見積もられている)[3]。メスは柔らかい植物の茎に産卵管で切れ目を入れて、茎の内部に差し込み、1卵ずつ産卵し、複数回で合計100個程度の卵を産む[3]。 産卵植物はセリ、ヘラオモダカ、カサスゲ、ガマなど10種ほどが知られており、生息する水域にいずれかが生育していれば種を問わないが、数が少ないと繁殖の制限要因となる[3]。 受精卵から1齢幼虫初期に温度感受性が高い時期があり、15℃を超える水温では卵発生や幼虫の発育に悪影響を及ぼすことが明らかにされている[3]。卵の発育ゼロ点は約4.2℃、孵化までの有効積算温度は約143日程度とされている[3]。また、幼虫、成虫ともに高水温への耐性が弱く、水温30℃ほどで死亡することが経験的に知られている[3]。生殖休眠解除は日長に関係なく、温度による2段階の生殖休眠解除の存在が示唆されている[3]。 止水域間の移動は、成虫期の飛翔に限られ、野外における追跡調査によって約600mの移動が確認されている[3]。ただし、良好な生息環境ではほとんどの個体は生息地から移動しない[3]。環境悪化時にどの程度の個体が生息地間の移動を行うかは定かではないが、平常時の分散能は低いと考えられる[3]。 本種は北方系であるゲンゴロウモドキ属の内で、アジアではもっとも南に分布する種である[3]。1937年に中国内陸部での記録があるものの、記録の信頼性が低いことから、2013年8月現在本種は日本固有種とされている[3]。 本種は2013年8月現在、環境省では1種として記載されているが、アズマゲンゴロウモドキ(D. s. sharpi , Wehncke, 1875)とコゲンゴロウモドキ(D. s. validus , Regimbart 河川の氾濫原、後背湿地、開墾された低地の水田、中山間部の水田などの里山環境などに生息する[3]。
行動
産卵
生理生態
移動と分散
分類・分布
アズマゲンゴロウモドキ(関東型)
基亜種。本種は1875年にWehnckeによって記載された。記載はThoreyから受け取った1ペアの日本産の標本に基づいているが、その採集地の詳細は明らかでないものの関東地方近辺で採集されたものと推測されている。その後1884年にSharp