シャイ・ドレーガー症候群(シャイ・ドレーガーしょうこうぐん、Shy-Drager syndrome:SDS)は、自律神経症状を主要症状とする脊髄小脳変性症の中の病型のひとつである。
多系統萎縮症(MSA)のひとつで、他にオリーブ橋小脳萎縮症(OPCA)や線条体黒質変性症
(SND)がある。1986年1月1日以降、特定疾患に認定されている。(現在はオリーブ橋小脳萎縮症、線条体黒質変性症とともに多系統萎縮症として、特定疾患に27番目の疾患として認れている。)人口10万人対0.31人、厚生省特定疾患運動失調症調査研究班の全国調査では、146名がこの疾患と認められている。脊髄小脳変性症に占める割合は、6.8%とされている。男性が女性の3倍?5倍発症しやすいといわれている。全例が孤発性であり、遺伝する例の報告は現段階ではない。 自律神経症状がゆるやかに、かつ潜行性にはじまり、次第に多彩かつ顕著になるのが特徴である。さらに小脳症状、錐体外路症状も加わり、きわめてゆっくりと進行していく。すべての患者にすべての進行症状がそろうわけではない。
症状
自律神経系の症状
起立性低血圧:立ちくらみ、めまいが初期症状。進行すると失神をきたすようになり、ときに失神に伴う痙攣発作が現れることがある。食後低血圧
分泌異常:汗、涙、唾液の分泌の減少。
排尿障害:頻尿、夜間尿、排尿困難に始まり、尿失禁や膀胱内に尿が貯まっているにもかかわらず尿が出ない症状(=尿閉)が見られるようになる。
インポテンス:勃起不全
便秘
これらは初期症状で見られることが多い。
小脳機能に関する病状
歩行障害:歩行時にふらつく。
書字障害:字を書くことが以前より困難になる。書いた文字が乱れる。
言語障害:言葉が不明瞭になる。
これらは発病後かなりたってから現れる症状である。
錐体外路症状
筋固縮:他人が関節を動かすと固く感じられる。
動作緩慢:着脱衣、寝返り、食事動作といった動作が全般的に遅くなる。
振戦:自分の意思とは関係なく、勝手に手が震える。
これらはパーキンソン病と同じ症状であり、原因は線条体・黒質系の病変であると考えられる。
※その他、物忘れやいびき、嚥下障害、睡眠時の無呼吸、視力の低下が見られることがごくまれにある。 この病気は他の脊髄小脳変性疾患と同じく、根本的な治療法が確立されていないのが現状である。よって、現れる症状にあわせた対症療法を行って症状を軽減するのが現段階でできる、最大の治療である。とくに、起立性低血圧には細心の注意を払わなければならない。
治療
起立性低血圧の対策
薬物療法
ジヒドロエルゴタミン:血管の拡張をおさえる薬。血管の緊張を保ち、血圧の低下を防ぐ。立ちくらみ、めまい、頭重感に有効。
ドロキシドパ(ドプス):細動脈収縮により血圧を保つ。また、不足しているノルアドレナリンを補充する効能もあり、併発しやすいパーキンソニズムにも効果がある。
ミドドリン