シャインマスカット
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シャインマスカット

シャインマスカット (Shine Muscat) は、日本の農林水産省が所管する農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)によって育種・登録された広島生まれの[出典 1]ブドウ栽培品種[出典 2]。命名登録番号は「ぶどう農林21号」[出典 3]

近年人気が急拡大しており[出典 4]、日本園芸農業協同組合連合会の統計によるとシャインマスカットの栽培面積は、2022年に1797ヘクタールにまで広がり[9]、ついに国内の主要品種であった巨峰(1621 ha)やデラウェア(1627 ha)を抜き、トップに躍り出たとされる[出典 5]

「皮ごと食べられる」「種なし」「大粒」「高糖度」という特徴を持つ、高級ぶどうの火付け役となり[出典 6]、日本中に、海外にもぶどうファンを増やした[18]。2023年頃から"ぶどうの女王と呼ばれるようになった[出典 7]
概要・歴史

広島県東広島市安芸津町にある農研機構のブドウ研究拠点(旧農林水産省果樹試験場安芸津支場)において育成された栽培品種で[出典 8]、育成地の広島では8月中旬に成熟する早生種である。

広島で開発が始まった1973年当時は、雨が多い日本でも栽培しやすいアメリカ産のデラウエアなどが広まる一方で、雨に弱いヨーロッパ産のマスカットなどは、あまり出回ってなかった[3]。日本で一般にマスカットと呼ばれる「マスカット・オブ・アレキサンドリア」は食味・食感が良いブドウだが、同種を含むヨーロッパブドウは雨の多い地域では実が割れたり病気になったりしやすく[出典 9]、日本の気候には適しておらず[3]、栽培にはガラス温室等の施設が必要であった。逆に日本の気候にも耐えられるアメリカブドウは、病害に強いが、噛み切りにくい触感で、一般的にヨーロッパブドウに比べ食味が劣るとされる。またフォクシー香という独特の香りがある。

これらの欠点を改良すべく、ヨーロッパ産の甘味で、しかも栽培しやすいブドウを作れば、消費が拡大するはずという目標を置いて交配がスタートした[3]。アメリカブドウの中でも糖度の高い栽培品種「スチューベン」[22]とマスカット・オブ・アレキサンドリアの交配を行い、5年後の1978年に「ブドウ安芸津21号」が誕生した[出典 10]。シャインマスカットの親となるこの安芸津21号はマスカット・オブ・アレキサンドリアに似た肉質を持ち、やや大粒であったが、マスカット香とフォクシー香が混ざった、あまりよくない香りを持っていた[23]。そこで、山梨県の植原葡萄研究所にて誕生した「品質、食味は最高だが、果皮の汚れがひどく諦めた品種」である大粒なヨーロッパブドウの栽培品種である「白南」[24](カッタクルガンと甲斐路の交雑種)を交雑し、マスカット香のみを持つ本品種が誕生した[6]。開発に33年も要した渾身の力作である[出典 11]。広島の農研機構でその開発に一番長く関わった現在日本大学特任教授を務める山田昌彦は「今世紀最大のヒットじゃないかと思いましたね」と述べている[3]

1988年に安芸津21号と白南を交配した実生から選抜され[7]1999年から2002年まで、「ブドウ安芸津23号」の系統名をつけて系統適応性検定試験に供試し全国で特性を検討した。名称を「シャインマスカット」とし、2003年9月5日に登録番号「ぶどう農林21号」として命名登録、2006年3月9日に登録番号「第13,891号」として品種登録(有効期限30年)された[出典 12]
日本国外への流出・品質低下

シャインマスカットを開発した日本の農研機構は、2006年に日本において品種登録を実施している。しかし輸出を想定していなかったため、海外での品種登録を行わなかった[出典 13]植物の新品種の保護に関する国際条約においては、海外における果物の品種登録は国内での登録から一定期間(ブドウは6年)以内に行うことが定められており[出典 14]、日本がシャインマスカットの海外での品種出願に手をこまぬいているうち、登録期限の12年を過ぎ、産地化が進む中国から取れるはずだった年間100億円とも試算されるライセンス料や[出典 15]、韓国などからのロイヤルティー(使用料)を徴収する権利も失った[出典 16]。日本国外では日本の許可などを要さず合法に栽培できる[25]。海外での品種登録をしなかった理由について農研機構の担当者は、「当時は海外に積極的に出ていくことを想定していなかった」と話している[27]

シャインマスカットを含むブランド果物の苗木や種子が、2010年代から韓国[出典 17]中国を通して、アジア諸国へ渡るケースが相次いだ[出典 18]。韓国産のシャインマスカットが、海外での登録期限を過ぎた2014年に本格的に市場に流通するようになっても、日本の農家は海外での品種出願をしていなかったためロイヤリティーは受け取れなかった[7]。2020年からは中国、ベトナム香港米国ニュージーランドなど19ヶ国・地域に輸出されている[7]。韓国のシャインマスカットの栽培面積は、日本とほぼ同じ1800ha[26]、韓国のぶどうの輸出額は2021年4月時点のデータで約8億円(727万ドル)となっており[20]、その内訳はシャインマスカットが9割を占めており[20]、海外輸出量は日本の5倍になっている[20]。中国での農地面積は日本の40倍もの規模になるという[20]。農研機構によれば中国へは2007年ごろから複数のルートで持ち込まれたと見ている[27]。中国では2015年以降、シャインマスカットの作付面積が急速に拡大し、全国で広く栽培されるようになり、2020年には日本の約30倍に及ぶ53,000ヘクタール[8]、2021年にはその面積が1,000,000(1畝は約1/15ヘクタール)となり、中国のブドウの栽培面積の10分の1を占めるに至った[32]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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