シネコン
[Wikipedia|▼Menu]

漫画家ビリーの日本の漫画については「シネマこんぷれっくす!」をご覧ください。
アメリカ合衆国カリフォルニア州オンタリオにあるシネマコンプレックスの一例

シネマコンプレックス(英語: cinema complex)は、同一の施設に複数のスクリーンがある映画館である。シネコン、複合映画館とも呼ばれる。目次

1 概要

2 特徴

2.1 定義

2.2 従来館との相違点


3 現状

3.1 サイト数・スクリーン数

3.2 運営・経営

3.3 サービス・設備


4 歴史

4.1 1930年代 - 1992年

4.2 1993年 - 2002年

4.3 2003年 - 2009年

4.4 東日本大震災による影響


5 商圏と各地の状況

5.1 商圏の変化

5.2 近年の状況


6 各社シネマコンプレックス

6.1 大手中堅興行会社・映画会社系列

6.2 小規模興行会社・独立系


7 脚注

7.1 注釈

7.2 出典


8 関連項目

9 参考文献

概要

モデルは北米発祥のマルチプレックス (multiplex) またはシネプレックス (cineplex) と呼ばれる映画館である。劇場構造はそれに準じた作りになっており、ロビー、チケット売場、売店、映写室等の設備を複数のスクリーンで共有している。

世界的に見るとメガプレックス (megaplex) と呼ばれる20スクリーン以上の例もある。アメリカカリフォルニア州AMCオンタリオミルズ30(30スクリーン、約5700席、1996年12月13日開館)を始めとする、複数のメガプレックスが、上映スクリーン数としては最多の30を有する。また、座席数はスペインマドリードキネポリスマドリード(25スクリーン、約9200席)が最も多い。日本国内の場合、7 - 12スクリーン程度を1つの映画館内に集約していることが多い。これは、日本の主要な映画配給チェーンが13しかないため[1]、メジャー作品はおおよそ14作品以上同時に配給されない事情によるものである。

各スクリーンの客席数は80 - 500席程度で、大小組み合わせることが多く、集客力の見込める作品は客席数の多いスクリーンで上映し、封切りから時間の経った作品や、集客力の落ちた作品は客席数の少ないスクリーンで上映する方式をとる。ただし、作品を抱き合わせた2 - 3本立てでの興行は通常は行われず、完全入替制を採用しているため、単一または複数の作品を退場せずに連続して見ることはできない。

大抵の場合、ショッピングセンターテナントとして運営されているか、スーパーマーケットなどが併設されている。これは、ショッピングセンターとシネマコンプレックスの双方の集客効果を狙ったものである。また、ショッピングセンターの駐車場が利用出来るため、シネマコンプレックスは自動車で来場する客層の取り込みに成功した。一方で、シネマコンプレックスの利用者は、ショッピングセンターでの購買率が低いとの調査結果もあり、相乗効果を疑問視する声もある。

日本に、現代型のシネマコンプレックスが登場した1990年代は、ロードサイド店舗に設置されることが多かったが、2000年代に入ってからは従来のロードショー館を置き換える形で繁華街に作られることも多くなってきた。シネマコンプレックスの登場に伴い、1億2千万人前後で推移していた日本の映画人口は、1億6千万人以上にまで回復した。一方で、2001年以降はシネマコンプレックスが増加しているにもかかわらず、映画人口は横ばいとなっているため、飽和状態になっているとも言われている。

なお、本項では慣例に基づき映画館(施設)内に設置された上映室を「スクリーン」と記述する。また、単一または複数のスクリーンを包括する映画館を「サイト」と記述する。
特徴
定義

シネマコンプレックスについて法令等での明確な定義はなく、統計や書籍によって条件が異なっている。

例えば、通商産業省が1998年(平成10年)にまとめた『映像産業活性化研究会報告書』では、
6以上のスクリーンを有する、

3以上のスクリーンを共有する映写室がある、

チケット販売窓口やロビー等を共有する、

総入れ替え制を採用して立ち見なし

と定義されている[2]

また、日本映画製作者連盟が毎年1月に発表する日本映画産業統計[3]では、

同一運営組織が同一所在地に5スクリーン以上集積して名称の統一性(1、2、3…、A、B、C…等)をもって運営している映画館

とされている。

このように様々な定義があるが、おおよそ共通する条件として下記のようなものが挙げられる。
複数のスクリーン(5以上)を同一の施設内に集約していること。

ロビーや売店、チケット売場、入口(もぎり)、映写室等を複数のスクリーンで共有していること。

映画館としての名称は1つであるか、もしくは複数のスクリーンで統一性を持っていること。

完全入替制を採用し、定員制か全席指定席制を併用することで立ち見がないこと。

なお、シネマコンプレックスという言葉自体は1980年代から使用されており[4][5]、1990年代前半までは複数のスクリーンを持つことだけを条件にシネマコンプレックスとしていた[6][7]。1990年代後半以降、マルチプレックスと同義とみなされるようになり、前述のような定義で使われること[8]が多くなってきている。そのため、本項でも歴史的な記述を除きそれに従って述べる。
従来館との相違点

シネマコンプレックスは、前述の定義以外にも従来の劇場と比べて次のように異なる点がある。ただし以下に挙げる事項は、全てのシネマコンプレックスに当てはまるものではない。逆に、従来館でもこれらの特徴を取り入れた例もある。
劇場構造
従来館に比べて、劇場の床の傾斜が大きいスタジアムシートを採用している。また従来館では、劇場の扉を二重扉にして遮光をすることが多かったが、シネマコンプレックスでは扉の前に壁を設けたり、扉をスクリーンに対して垂直に設置したりして遮光をしている。二重扉の場合、2つの扉が同時に開くとスクリーンに余計な光が入ることがあるが、シネマコンプレックスの構造だと、どのような場合でもスクリーンに余計な光が届くことがない。これらの構造と全席座席指定を採用することにより、シネマコンプレックスでは快適性を謳っている。なお、地域の火災予防条例や
バリアフリー関連の制約により、異なる構造のシネマコンプレックスもある。
収益構造
従来館の場合、入場料収入を主な収入源としているが、シネマコンプレックスは入場料だけでなく、飲食物にも収入源としてのウェイトを置いている。具体的には飲食物の客単価が従来館は152円程度である一方、シネマコンプレックスは250円程度と1.6倍以上に見積もっている[9]。そのため、従来館では市販の菓子類を販売し、飲食物の持ち込み制限も緩やかな場合が多かったが、シネマコンプレックスでは、できたてのポップコーンチュロス、お菓子の量り売りなど、市販の菓子とは差別化できる物を販売しており、シネマコンプレックス以外の飲食物持ち込みが禁止されている。また、座席にカップホルダーを設置し、売り上げ向上を図っている。
上映設備
シネマコンプレックスで多かったノンリワインド映写機の例従来の映画館は映写機2台を自動で切り替える全自動映写機を採用することが多かった。それに対し、シネマコンプレックスは映写機1台で上映を行うノンリワインド映写機を採用する場合が多かった。シネマコンプレックスの場合、立ち見を許していないため、1スクリーンの座席数以上の集客が見込める上映作品では入場できない観客が出る恐れがある。そこで、複数スクリーンで1つのフィルムを同時上映する「インターロック」と呼ばれる仕組みが採用された。インターロック上映に対応しているのがノンリワインド映写機だったため、シネマコンプレックスでの採用が多くなったと考えられる。現在は、デジタルシネマプロジェクターが普及したため、このようなノンリワインド映写機を設置していない劇場も多い。
上映スケジュール
レイトショーは従来、週末や特別興行のみに行われていたが、シネマコンプレックスでは年間を通して行っている場合が多い。従来館の場合、駐車場が設けられていないこともしばしばあった上に、繁華街に建設されることが多かった。そのため、終電による公共交通機関の運行時間帯を超える深夜上映スケジュールは、編成しづらい環境であった。しかし、シネマコンプレックスはショッピングセンターとしての駐車場が併設されており、また、郊外にあり利用客の住居に近い立地でもある。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:197 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef