シェアード・ワールド
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シェアード・ユニバース(共有宇宙、: shared universe)またはシェアード・ワールド(共有世界、: shared world)とは、複数の作家(または他のアーティスト)が独立して作品を提供し、その作品は単独でも成立するが、プロジェクト全体のストーリー、キャラクター、または世界設定を共有しつつ発展させるという、一連の創作物からなる架空の世界のことである。SFなどのジャンルでよく見られる。複数のアーティストが同じ作品に共同で取り組む共同執筆や、一度の出会いを除いて作品やキャラクターが独立しているクロスオーバーとは異なるものである。

シェアード・ユニバースという言葉は、コミックの出版社が、ある作品のキャラクターやイベント、前提条件が、メディア・フランチャイズの中で他の作品に登場するような、全体的な環境を反映させるためにも使われる。様々なメディア(小説映画など)にまたがって出版され、それぞれが設定の成長、歴史、ステータスに貢献している特定の種類のシェアード・ユニバースは、「想像上のエンターテインメント環境」と呼ばれている。

また、この言葉はより広い、文学以外の意味で、学際的あるいは社会的な共通性を伝えるためにも使われており、しばしば「言説の共有された宇宙」という文脈で使われている。
概要

ファンタジーサイエンス・フィクションにおいてしばしば見られる形態。シェアード・ワールドを用いて書かれた小説は、特にシェアード・ワールド・ノベルズとも呼ばれる。

設定やキャラクターは同じでも各作品間の歴史の流れが異なっていくパラレルワールド(並行世界)物とは違い、シェアード・ワールドにおける各作品は原則として完全に同じ世界上の出来事とされ、歴史の流れもまた相互に尊重される。つまり、各作品での出来事や事件は1枚の歴史年表に矛盾なく書き込むことができる、ということである。ただし、著者数や作品数の増加の結果、矛盾を生んでしまう(整合しきれなくなる)ケースも見られる。著作権上の問題は、各作品の著者間における同意や、元になる作品の著作権者の許諾といった形で解決されるのが一般的である。

また、世界を複数の人間で構築していくという方法が共通するテーブルトークRPGとの関連性は強く、下記一覧のシェアード・ワールドの多くが、小説とテーブルトークRPGの両方で展開している。
インターネット上のシェアード・ワールド

インターネットの発達により、Web上で共有されたオンライン小説のシェアード・ワールドも作られ、それを管理するウェブサイトがいくつか存在する。

これらインターネット上のシェアード・ワールドにおいて、誰でも創作・発表に参加できるものはオープンシェアワールド、その中で特に「フリー」なものはフリーシェアワールドと呼ばれている。ただし、これらの用語や「フリー」の範囲については、定義づけが曖昧な場合や「コンピュータソフトウェアにおけるフリーウェアシェアウェア」との混同と見られる用例も見受けられる。
定義

コミックの歴史家であるドン・マークシュタインが1970年にCAPA-alphaに掲載した記事で初めて定義した言葉である[1]
マークシュタインの基準
キャラクターAとBが出会っていれば、彼らは同じ宇宙にいることになり、キャラクターBとCが出会っていれば、
推移的にAとCは同じ宇宙にいることになる。

キャラクターは実在の人物でつなぐことはできない。そうでなければ、スーパーマンジョン・F・ケネディと出会い、(実在の)ケネディはニール・アームストロングと出会い、アームストロングはファンタスティック・フォーと出会っているので、スーパーマンとファンタスティック・フォーは同じ宇宙にいると主張することができる。

キャラクターは、「出版社に由来しない」キャラクターによってつなぐことはできない。そうでなければ、スーパーマンとファンタスティック・フォーは、どちらもヘラクレスと出会っているので、同じ宇宙にいると主張することができる。

実在の人物を(出版社独自の)特定のフィクションを加えて表現したもの(例えば、DCコミックスの「ジェリー・ルイスの冒険」に登場するジェリー・ルイスは、魔法の力を持つ家政婦がいるという点で、実在のジェリー・ルイスとは異なっている)をつなぐことができる。これは、マーベル・コミック版のヘラクレスやDCコミックス版のロビン・フッドなど、パブリックドメインのフィクションキャラクターの特定のバージョンにも当てはまる。

キャラクターは、物語の中でコマの中に一緒に登場した場合のみ、出会ったとみなされる。コミックの表紙で一緒に登場した場合は、出会ったとはみなさない。

ほとんどのテレビ番組や多くのコミックブックのタイトルなど、いくつかのメディアにおけるフィクションは、視聴者や読者が複数の作者の貢献を必要とすると理解しており、それだけでは共有された世界を作り上げることはできず、共同制作の芸術形態と考えられている。『シラノ・ド・ベルジュラック』のダルタニャンのような偶発的な登場は、文学的なカメオ出演とみなされる。異なるソースのキャラクター間のより実質的な相互作用は、しばしばクロスオーバーとして販売される。クロスオーバーは共通の世界の中で行われるが、すべてのクロスオーバーがそれぞれの設定のバックストーリーを統合することを意図しているわけではなく、マーケティングやパロディ、あるいは「もしも」のシナリオを探求するために使用され、一回限りのものであることが多い[2][3]

シェアード・ユニバースに参加している作家は、特にシェアード・ユニバースが非常に大きくなると、一貫性を保ち、以前の作品の詳細と矛盾しないようにすることが難しくなり、しばしば相互矛盾が発生する。設定を管理している作者や会社が「公式」とみなしているバージョンは「カノン」と呼ばれている。すべてのシェアード・ユニバースに、正統性を決定する能力や関心を持つ支配者がいるわけではなく、すべてのファンがこれらの決定に同意するわけでもない。ファノンはその設定のファンダムの中である程度のコンセンサスを得ることができる[4]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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