シアン酸
分子式CHNO
分子量43.02
CAS登録番号420-05-3
形状無色の液体または気体(室温に沸点が近いため)
融点-86.8 °C
沸点23.5 °C
SMILESN#CO
シアン酸(シアンさん、cyanic acid)とは、分子式 CNHO で表される化合物である。構造異性体として、イソシアン酸 (H-N=C=O) と雷酸 (HO-N=C:) が挙げられる。ただし、シアン酸はイソシアン酸とは互変異性であり、相互に変換し続けて平衡状態にある。 常圧においてシアン酸は、融点 -86.8 ℃、沸点 23.5 ℃である。液体の際は、酢酸に似た臭気を放つ、無色の液体として存在する。 水にわずかに溶解し、酢酸よりやや強い酸で、酸解離定数 Ka=2.2×10-4(25℃)、pKa=3.48である。ただし、水中では不安定で、低温では数時間溶液として存在し得るものの、次第に加水分解が進行して炭酸水素アンモニウムへ変わる。一方、非プロトン溶媒のエーテル、ベンゼン、アセトン中では、比較的安定な溶液であり、数週間程度は残存する。 種々の有機化合物(求核剤)と反応し、アルコールと反応させるとウレタン、アミンと反応させるとウレイン、酸アミドと反応させるとウレイドを生成する。また、アンモニアと反応させると、一旦、アンモニウム塩(シアン酸アンモニウム)を形成した後に、尿素へと変化する。 ただし、シアン酸はイソシアン酸との互変異性を示し、気体もしくは非プロトン溶媒中では、イソシアン酸の形で存在する分子の方が多い。一方で、水素結合が形成し易い液体状態やプロトン溶媒中では、シアン酸の形で存在する分子の方が多い。 このような互変異性が、発生するため、例えばウレタンの合成であれば、普通はシアン酸は原料として用いない。一般にウレタンは、イソシアナートとアルコールとを反応させて作る[1]。 なお、ポリウレタンを合成する場合には、2つのイソシアナート基を有した化合物と、ジオールを反応させる[1]。 シアン酸は、あまり安定な化合物ではなく、単離した状態などでは徐々に重合して、ほとんどはシアメリド シアヌル酸を不活性ガスの雰囲気 フリードリヒ・ヴェーラーがシアン酸とアンモニアから尿素を合成したことは、初めての無機化合物から有機化合物の合成として広く知られている。また、異性体の存在が初めて発見された化合物である。 フリードリヒ・ヴェーラーはシアン酸塩の性質を研究しており、ユストゥス・フォン・リービッヒは雷酸塩の研究を行なっていた。シアン酸塩と雷酸塩は同じ化学的組成を示すにもかかわらず、雷酸銀は爆発性を持つがシアン酸銀は持たないという違いがあった。これは激しい論争を起こしたが、結論として、異性体という物が存在する事を認める形で決着がついた。すなわちシアン酸もイソシアン酸も、雷酸とは構造異性体の関係にある。
性質
互変異性
安定性構造式 シアヌル酸
合成
異性体の発見
関連項目
シアネート
雷酸
シアン化水素
フリードリヒ・ヴェーラー(シアン酸アンモニウムの研究)
化学史上無機化合物から有機化合物を合成した最初の例
ユストゥス・フォン・リービッヒ(雷酸の研究)
出典^ a b Harold Hart(著)、秋葉 欣哉・奥 彬(訳)『ハート基礎有機化学(改訂版)』 p.387 培風館 1994年3月20日発行 ISBN 4-563-04532-2
参考文献
『理化学辞典』第五版、CD-ROM版、岩波書店。
『世界大百科事典』Ver1.2、CD-ROM版、平凡社。
表
話
編
歴
水素の化合物
二元化合物
CH4
SiH4
GeH4
SnH4
PbH4
HAt
HBr
HCl
HF
HI
HN3
H2O
H2O2
H2O3
H2S
H2S2
H2Se
H2Te
NH3
PH3
AsH3
SbH3
BiH3
多元化合物
H[AuCl4]
HBF4
HCN
H2CS3
H[CuCl2]
H2[CuCl4]
オキソ酸
H3AsO4
H5As3O10
HBiO3
HBO2
H3BO3
HBrO
HBrO2
HBrO3
HBrO4
HClO
HClO2
HClO3
HClO4
HClO5
H2CrO4
H2Cr2O7
H2CO3
H2CO4
HFO
HIO
HIO3
HIO4
H5IO6