シアノコバラミン
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シアノコバラミン

識別情報
CAS登録番号68-19-9
PubChem16212801
EC番号200-680-0
KEGGD00166
C02823
特性
化学式C63H88CoN14O14P
モル質量1355.38 g/mol
外観暗赤色固体
融点

> 300 ℃
沸点

> 300 ℃
への溶解度Soluble
危険性
安全データシート(外部リンク)External MSDS from Fisher Scientific
EU分類無し
NFPA 70411 
SフレーズS24/25
引火点N/A
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

シアノコバラミン(cyanocobalamin)は、ヒドロキソコバラミンなどと共にビタミンB12とも呼ばれる代表的なコバラミンの一種であり、ビタミンの中で水溶性ビタミンに分類される生理活性物質である。コバルトを含むため赤色又はピンク色を呈する[1]
名称

B群ビタミンのひとつだが、12は発見された順番を表す数字ではない。
生合成

シアノコバラミンは化合物を単離する際に得られる人工産物で、喫煙者などの特殊な場合(煙中のシアン化水素代謝産物が活性型ビタミンB12と結合しシアノコバラミンを生ずる。ただし活性型ビタミンB12の不足を招き有害[2]。)を除き、人間の体内ではシアノコバラミンは合成できない。草食動物腸内細菌としてプロピオン酸生産菌(プロピオニバクテリウム属[3])等を保有し、これがビタミンB12を生産するので、これらの菌からビタミンB12を摂取している[4]

アミノ酸脂肪酸の代謝および葉酸の生合成に用いられる。これ自体に補酵素活性はなく、生体内で補酵素型であるメチルコバラミンおよびアデノシルコバラミンに変換される。
構造

ポルフィリン類似のコリン環とヌクレオチドの構造をもつ、コバルト錯体である。

シアノコバラミンは合成が極めて困難であるため、現在は放線菌プロピオニバクテリウム属[3])などの細菌の培養液から生産されている[5]。「ビタミンB12全合成」も参照
機能テトラヒドロ葉酸(THFA)による代謝とビタミンB12によるTHFAの再生産、Folsaure=葉酸、DHF=ジヒドロ葉酸、THF=テトラヒドロ葉酸、Vit.B12=ビタミンB12、Methyl-Vit.B12=メチルコバラミン、Methionin=メチオニン、Methionin Syntase=5-メチルテトラヒドロ葉酸-ホモシステインメチルトランスフェラーゼ、Homocystein=ホモシステイン、N5-Methyl-THF=5-メチルテトラヒドロ葉酸、N5,N10-Methylene-THF=5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸、N10-Formyl-THF=10-ホルミルテトラヒドロ葉酸、dUMP=デオキシウリジン一リン酸NADPHDNA

ビタミンB12は代謝に関与しており、特にDNA合成と調整に加え脂肪酸の合成とエネルギー産生に関与している。しかしながら、体内でビタミンB12が葉酸ビタミンB9)の再生産に利用されているため、全てではないが多くのビタミンB12の機能は十分な量の葉酸によって代替される。チミンプリン体の合成のための十分な量の葉酸が体内に存在しない場合にはDNA合成障害を引き起こし、その葉酸欠乏症状は悪性貧血症状や巨赤芽球性貧血を引き起こすため、ほとんどのビタミンB12欠乏症状は実際には葉酸欠乏症状である[6]。十分な量の葉酸が利用できる場合には、メチルマロン酸(MMA)を代謝するビタミンB12依存酵素であるメチルマロニルCoAムターゼ(MUT)やホモシステインを基質としてメチオニンを合成する酵素として知られている5-メチルテトラヒドロ葉酸-ホモシステインメチルトランスフェラーゼ(MTR)を助けることになり、ビタミンB12欠乏症として知られるほとんどの症状は正常化される。

ビタミンB12補酵素の反応性の高いC-Co結合が3つの主な酵素反応に関連している。

1番目は異性化酵素反応である。1番目の置換基である水素原子と酸素原子、アルコール基、アミノ基などと、1番目の置換基と隣り合った2番目の置換基である炭素原子(X基)を直接移動させる再配置である。例として、メチルマロニルCoAスクシニルCoAに変換する反応である。

2番目はメチル基転移反応である。メチル基が2つの分子間を移動する。例として5-メチルテトラヒドロ葉酸を脱メチル化してテトラヒドロ葉酸に変化させると同時に、ホモシステインをメチル化してメチオニンへ変換させる。

3番目は脱ハロゲン反応である。有機化合物からハロゲン原子が離脱される反応である。この種の酵素はヒトからは発見されていない。

ヒトにおいては、上記最初の2つの反応に対応した2つの主要なビタミンB12依存酵素が知られている。それらは次に示す2種類の酵素である。
第1の酵素

MUT(メチルマロニルCoAムターゼ)は、アデノシルコバラミン型と炭素骨格の再配置(X基は-COSCoA)を触媒する反応型1の異性化酵素である。MUTの反応は、メチルマロニルCoAスクシニルCoAに変換し、タンパク質脂肪からエネルギーを抽出する重要なステップを担っている。この機能はビタミンB12欠乏症により失われてしまい、その機能はメチルマロン酸血中濃度で医学的に測定することができる。ビタミンB12欠乏症患者の90-98%は、メチルマロン酸の濃度が増加する。このようにメチルマロン酸の濃度上昇はビタミンB12欠乏症に鋭敏に反応するが、メチルマロン酸の濃度上昇の原因がビタミンB12欠乏症のみに限らないことに注意が必要である。70歳を超える被験者の20-25%はメチルマロン酸の濃度が増加するが、それらの25-33%はビタミンB12欠乏症ではない。したがって高齢者にはメチルマロン酸濃度での判定は勧められない。しかし、メチルマロン酸値の上昇は、マロン酸値の上昇を伴う場合、見落とされがちな[7]代謝異常、マロン酸およびメチルマロン酸尿合併症(CMAMMA)を示すこともある[8]。ビタミンB12の欠乏が起こると体内組織は備蓄したビタミンB12を取り崩して血中濃度を維持するため、ビタミンB12欠乏症の黄金律試験は存在しないのである[9]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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