空の城
作者松本清張
国 日本
言語日本語
ジャンル長編小説
発表形態雑誌連載
初出情報
初出『文藝春秋』 1978年1月号 - 8月号
出版元文藝春秋
刊本情報
刊行『空の城』
出版元文藝春秋
出版年月日1978年7月30日
装幀坂田政則
ウィキポータル 文学 ポータル 書物
テンプレートを表示
『空の城』(くうのしろ)は、松本清張の長編小説。1975年以降表面化した安宅産業破綻に至る過程を、関係者の肖像を軸として描く、ドキュメント・ノベル。『文藝春秋』に連載され(1978年1月号 - 8月号)、1978年7月に文藝春秋から刊行された。
1980年に「ザ・商社」のタイトルでテレビドラマ化されている。
あらすじ冒頭の舞台となるクイーン・エリザベス2
(写真はシドニー港)
1973年10月、世界一の豪華客船・クィーンエリザベス二世号の船上にて、多数の招待客が招かれ、アルバート・サッシン主催の超豪華パーティーが開かれていた。一行はカナダ・ニューファンドランド島にある新設の製油所・PRCを訪れる予定であり、その開所式が盛大に行われようとしていた。サッシンは、PRCの運営を全面的に任せられ、製油の販売を委ねられる管理運営会社・NRCに全額出資し、アメリカ東海岸の石油市場に殴りこみを狙っていた。
他方、総合商社の江坂産業は、中東からNRCへと運ばれる原油を一手に取り扱い、製油所に巨額の融資を行おうとしていた。江坂産業は、石油分野への進出により、十大商社の末尾から脱皮するため、大きな賭けに出ようとしていた。招待客の一人・江坂アメリカの上杉二郎は、サッシンと連携して、今回の一大事業をまとめた立役者であり、今夜のパーティでもサッシンと共に脚光を浴びていた。
江坂グループ内では格下のはずの上杉が主役となり、内心面白くない江坂産業社長・河井の前に、「美術課長」の岸田が顔を出す。岸田は江坂産業社主・江坂要三の要請を受け、古美術品を買い、日本に運ぶ役割を担っていた。実は、江坂産業は、普通の企業とは異なる、異様な二重構造を持っていた…。
サッシンにとっても、上杉にとっても、晴れがましい絢爛なパーティー。しかし、これを最後に、運命は暗転する。第四次中東戦争が勃発し、石油価格は暴騰した。さらに、製油所の石油精製装置に重大な不具合が生じ、サッシンの赤字は膨らんでいく。上杉は窮地に立った。上杉の弱点は、江坂本社常務会の承認を経ず、前社長・大橋の承認のみで、サッシンに4,200万ドルもの無担保融資をしていることにあった。上杉の大胆な決断は、PRCが州政府の保有するクラウン・カンパニーであることを背景としていたが、ニューヨーク・NRC本社近くのレストランで、サッシンは上杉に、「PRCは自分が買い取った」と告げる。
上杉には青天の霹靂の決定だった。その間にも、中東からPRCへの石油輸送はどんどん続けられ、江坂産業のサッシンへの債務保証額は膨張の一途を辿る…。
主な登場人物カナダ・ニューファンドランド島
以下は原作における設定を記述する。モデルとなった人物の詳細は安宅産業破綻も参照。
上杉二郎
江坂アメリカ米州総支配人。ハワイ生まれの日系二世。英語に堪能だが、英語屋と呼ばれ低く見られている。仕事はできるが、独りで行動し、チームワークを顧みない一匹狼型。私生活の噂も相まって、江坂社主には疎まれている。
アルバート・サッシン
サッシン・ナチュラル・リソーシズ社長。イリノイ州生まれのレバノン系アメリカ人。ユダヤ人と共にアメリカの一般社会では白眼視され、ケチ・狡猾・金に抜け目が無い、などと蔑視されてきた。モデルとなった人物については#外部リンク参照。
江坂要三
江坂産業社主。「経営のことはわからんが、人間の判断はわしがする」として、人事権を独占。人見知りが激しい。芦屋の広大な屋敷に住み、古美術の収集に情熱を傾注、また多くの音楽家のパトロンともなっている。
大橋恵治郎
江坂産業現会長。先代から仕える大番頭的存在だが、江坂産業を住倉商事と合併させようとして失敗。
河井武則
江坂産業現社長。社長としては中継ぎに過ぎないとされる。建前を重んじる。
安田茂
江坂産業常務。几帳面な事務屋。
梶井ムラ
江坂要三の身の回りの世話をしている。40代半ば。
エピソード
著者は本作の意図を「『空の城』は、昭和52年に起った安宅産業倒産がモデルだが、むろん倒産事件が主題ではなく、社内人事権は握るが業務には口出しをしないという「社主」の「芸術的」な孤独と、本社を長くはなれているアメリカの現地法人社長の突進(これも孤独なる勇猛)とを対極においた。さらにこれに加えてレバノン生れの詐欺師たる石油屋をからませた」と記している[1]。
作品の舞台ニューヨーク3番街
カナダ
カム・バイ・チャンス
ザ・商社
ジャンルテレビドラマ
原作松本清張『空の城』
脚本大野靖子
演出和田勉
出演者山ア努
夏目雅子ほか
製作
制作NHK
放送
放送国・地域 日本
放送期間1980年12月5日 - 12月13日
放送時間20:00 - 21:20
回数4
特記事項:
第18回ギャラクシー賞月間賞受賞作品
1980年テレビ大賞受賞作品
日本映画テレビプロデューサー協会・エランドール賞エランドール協会賞受賞作品(和田勉)
テンプレートを表示
ドラマタイトル『ザ・商社』[2]。NHK総合テレビジョンのドラマスペシャルとして、1980年12月5日と12月6日、12月12日と12月13日に放映された。全4回。第18回ギャラクシー賞月間賞、1980年テレビ大賞、日本映画テレビプロデューサー協会・エランドール賞エランドール協会賞(和田勉)受賞作品。2001年に、ジェネオン エンタテインメントからDVDが発売された。商社のビジネスや社内の人事という室内での会話が主体のストーリーながらも、当時としては画期的なアメリカ、カナダ、イギリスでの海外ロケが、空撮を含めて4回のオンエアのために行われた。
スタッフ
原作 - 松本清張
脚本 - 大野靖子
演出 - 和田勉
音楽 - 林光
制作 - 斉藤暁
技術 - 土島伸一、鳥居孝司
照明 - 中里要
カメラ - 上原康雄
音声 - 篠根正継
美術 - 鯛正之輔
効果 - 岩崎進
記録 - 那須正尚
制作 - NHK
登場人物・キャスト
アメリカ
上杉二郎(演 - 山ア努)[3]江坂アメリカ社長
ハワイ生まれの日系二世で、辣腕の商社マン。当時の安宅産業常務でNRCプロジェクトを推進した、元安宅アメリカ社長・高木重雄