ザ・ルーム
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この項目では、2003年の映画について説明しています。2015年の映画については「ルーム (映画)」をご覧ください。

ザ・ルーム
The Room

監督トミー・ウィゾー
脚本トミー・ウィゾー
製作グレッグ・セステロ(英語版)
ジャスティン・シルヴァーマン
製作総指揮トミー・ウィゾー
クロエ・リエツケ
ドリュー・カフリー
出演者トミー・ウィゾー
ジュリエット・ダニエル(英語版)
グレッグ・セステロ
フィリップ・ハルディマン
音楽ムラデン・ミルセヴィッチ(英語版)
撮影トッド・バロン
編集エリック・チェイス
製作会社ウィゾー・フィルムズ
配給 クロエ・プロダクションズ/TPWフィルムズ
公開 2003年6月27日(限定公開)
2018年1月10日(拡大公開)
2020年3月
上映時間99分[1]
製作国 アメリカ合衆国
言語英語
製作費$6,000,000[2]
興行収入 $549,602[3]
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『ザ・ルーム』(原題:The Room)は2003年アメリカ合衆国恋愛映画。製作、監督および主演はトミー・ウィゾー(ワイゾーとも発音される)が務めた。公開された当初、単純なストーリーにもかかわらず理解に苦しむ演出や編集、脚本、演技の拙さなど、本作のほぼ全ての要素が酷評されたが、その酷さゆえの面白さを見い出す観衆が次第に増え、現在では「駄作界の市民ケーン」とも称されるカルト映画としての地位を確立している[4][5]。後述のように、本来この作品はもっと酷い出来映えのものになるはずだったが、映画製作が初めてだったウィゾーを差し置いて現場スタッフが尽力することで、根本的問題の幾つかを何とか回避した。しかし酷評を免れるまでには程遠く、その混乱した製作過程は2017年の映画『ディザスター・アーティスト』で描かれている。

ウィゾーは本作がカルト映画と呼ばれている事態に異を唱えており、「この映画は表現の自由を体現した作品であり、観客に自己表現を促す映画だ」と主張している[6]

ジョニーが「I did not hit her. It's not true. It's bullshit. I did not hit her. I did not. Oh, hi Mark. 」と呟くシーンと、ジョニーがリサに向かって「You are tearing me apart, Lisa!」と叫ぶシーンは本作の名場面として頻繁に言及されている[7]

ディザスター・アーティスト』(The Disaster Artist)の興行的成功を受けて、本作は2018年1月10日に全米600館で拡大公開されることとなった。公開から10年以上が経過した映画がこの規模で拡大公開されるのは異例のことである[6]

長らく、本作は日本国内で鑑賞が困難な状態にあったが、2020年3月に「未体験ゾーンの映画たち2020」のクロージング作品として初上映された[8]
ストーリー

サンフランシスコ。銀行員ジョニーは婚約者のリサと同棲し、毎日のように愛を交わし合っていた。デニーは自由にジョニーの家やベッドにも出入りする。ジョニーはリサのためにいつもバラを買い、彼女を心から愛していたが、リサはどういうわけかジョニーとの生活に満足できずにいた。ある日、リサはジョニーへの不満を親友のミシェルと母親のクローデットにぶつけ、「ジョニーはつまらない男よ」と言い放った。ミシェルはリサに「不自由のない生活が出来ることに感謝しなさい」とアドバイスし、クローデットも「ジョニーはみんなに好かれる誠実でいい人よ。経済的安定が大事なのですよ」と諭したが、不満が消えないリサはジョニーの親友であるマークをベッドへと誘惑した。マークは親友への遠慮から拒絶していたが、我慢できず一線を越えてしまう。しかし、買いたいものが山のようにあるリサは、金のためにジョニーとの同棲は続けることにする。結婚の日が近付く中、リサはジョニーが仕事で伸び悩んでいることを知る。苛立ちを覚えたリサは、酒を飲まないジョニーを無理に飲ませて酔いつぶれさせ、「酔ったジョニーが私に暴力を振るった」とでっち上げ、それを家族や友人の前で吹聴し始めた。濡れ衣に悩む中、何とか疑惑を晴らしたジョニーだったが、今度はリサが母親に不倫を告白するのを耳にしてしまう。不倫相手を特定するべく、ジョニーは家の電話にテープレコーダーを仕掛けた。

アパートの屋上で、デニーは銃を持つ麻薬の売人クリス・Rと揉める。ジョニーはマークと共にデニーを助ける。クローデットはデニーを厳しく叱る。リサに惹かれているデニーは、ジョニーに思いを告白する。ジョニーは笑って受け入れ、「リサは君を友人の一人として愛しているよ」と、自身の愛の哲学を開陳した。その後、ジョニーは「身元を明かせない」クライアントの担当になる。その頃、クローデットは不動産をめぐるトラブルに巻き込まれる一方で、リサとジョニーの関係が上手くいっていないことに心を痛め、リサに説教する。さらに自身が乳がんを患っていることも明かす。その後、ジョニーとリサの家にやって来たミシェルと恋人のマイクは唐突にセックスを始める。

一方、ジョニーの友人ピーターは、マークに対しリサを擁護する一方で、リサをサイコパスだと非難し、マークとリサの関係を疑い問いただす。マークは激怒してピーターに掴みかかり、屋上から突き落とそうとする。タキシードに着替えた男たちはアメフトのキャッチボールを始める。スポーツが苦手なピーターは嫌がるが無理やり参加させられ、案の定転んでタキシードを汚す。ジョニーの誕生日にサプライズ・パーティーが開催された。パーティーの他の参加者が外に出た隙に、リサはマークをまたも誘い濃厚なキスをし始めたが、それをスティーヴンが目撃し、2人を咎めた。リサが開き直る一方で、マークは「このことを誰にも言うな」と激昂した。外ではジョニーが参加者を前に「僕とリサは子供を1人授かりたいと思っています」と語る。リサは喜びを隠せないジョニーに「子供が欲しいと言ったのは嘘よ」と告げる。パーティーが終わった後、リサは皆の前でジョニーにマークと不倫していたことを半ば誇らしげに公言する。ジョニーはマークに殴りかかった。

浴室に閉じこもったジョニーはリサに「自分と別れてマークと付き合え」と叫んだ。ジョニーは浴室を出て、電話に備え付けてあったテープレコーダーをリサに見せつける。そのテープにはリサとマークの会話が記録されていた。「みんな僕を裏切ったんだ」と絶叫しながら、ジョニーはアパートの家具を壊し、拳銃自殺を果たす。マークとリサがジョニーの死体を見つける。リサは「これで自由になった。ようやく、あなたと一緒になれるわ」とマークに言ったが、彼は「俺はお前を愛していないし、顔なんか二度と見たくない」とリサに言い放った。後からやって来たデニーはその場に泣き崩れてしまった。パトカーのサイレンの音が鳴り響く中、3人はお互いを慰め合うのだった。
キャスト監督・製作・脚本・主演のトミー・ウィゾーマーク役のグレッグ・セステロ

ジョニー: トミー・ウィゾー - 銀行員。

リサ: ジュリエット・ダニエル(英語版) - ジョニーの婚約者。

マーク: グレッグ・セステロ(英語版) - ジョニーの親友。

デニー: フィリップ・ハルディマン - ジョニーが息子のように可愛がっている学生。

クローデット: キャロライン・ミノット - リサの母親。

ミシェル: ロビン・パリス - リサの親友。

マイク: スコット・ホームズ - ミシェルの恋人。

クリス-R: ダン・ジャンジギアン(英語版) - ドラッグの売人。デニーを脅迫。

ピーター: カイル・ヴォト - ジョニーの友人。心理学者。

スティーヴン: グレッグ・エリー - ジョニーとリサの友人。

タイトルの意味

本作のタイトルが何故『The Room』となっているのかという疑問が長らく存在していた。2011年のインタビューで、ウィゾーは「部屋とは関係のことです。部屋は貴方と私であり、アメリカにいる全ての人々です。それが部屋が意味するものです。私がいつも言っているように、人々は笑ったり泣いたりすることができますし、自分自身を表現することもできます。ただ、お互いに傷つけ合うようなことはしないでください。」と語っている[9]。また、本作のDVDの特典映像において、ウィゾーは「製作当時、私は特別な場所、私的な場所、安全な場所について考えていました。それは部屋ではないのですが、やはり部屋なのです。今も当時も、私は多くの人々が部屋と関係していると考えています。部屋は行くことができる場所であるので、心地よい時間を過ごすこともできますし、不快な時間を過ごすこともできるのです。そして、部屋は安全な場所なのです。」と語っている[10]
本作の問題点

上述のストーリーを読めば分かるように、本作の登場人物の姿勢・感情には一貫性がない上に、無意味なシーンが多い。『ポートランド・マーキュリー』は「数多くのストーリーラインが導入されているが、それらは導入されただけで、掘り下げられることがない」と評している[11]。その例として、ジョニーの誕生日パーティーの準備について話しているにも拘わらず、クローデットが唐突に「今日、私は病院で診察結果を受け取ったの。乳がんと診断されたわ。」と告げるシーンが挙げられる。このシーンの後、クローデットが乳がんを患っていることには全く言及されない。彼女が死を恐れる描写すらない[12]。また、本作を見ただけでは、デニーがなぜドラッグの売人と口論に至ったのかが判然としない上に、彼がドラッグに手を出した理由も分からない[13]

マークがどんな人間なのかも本作を見るだけでは把握できない。マークがとても忙しい毎日を送っていることしか分からないのである。どんな職業に就いているのかも、なぜ忙しいのかもよく分からないのである。グレッグ・セステロによると、マークには極秘任務に従事する警察官という設定があったという。マークがマリファナを吸っていること、マークの気分の揺れが激しいこと、ドラッグの売人を難なく組み伏せたことなどの一見不可解に思える諸要素も、マークが極秘任務に従事する警察官であるという設定を踏まえれば何らおかしいことではないのだという。しかし、トミー・ウィゾーは劇中でマークの過去に触れる案を却下した[14]


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