ザ・ブルード/怒りのメタファー
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ザ・ブルード/怒りのメタファー
The Brood
監督
デヴィッド・クローネンバーグ
脚本デヴィッド・クローネンバーグ
製作クロード・エロー
出演者

オリヴァー・リード

サマンサ・エッガー

アート・ヒンデル(英語版)

ナーラ・フィッツジェラルド

ヘンリー・ベックマン(英語版)

スーザン・ホーガン(英語版)

シンディー・ヒンズ

音楽ハワード・ショア
撮影マーク・アーウィン
編集アラン・コリンズ
製作会社カナダ映画開発公社(英語版)
配給

ニューワールド・ピクチャーズ

ケイブルホーグ

公開

1979年6月1日

1987年6月6日

上映時間92分
製作国 カナダ
言語英語
製作費140万?150万カナダドル[1][2]
興行収入500万ドル[3]
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『ザ・ブルード/怒りのメタファー』(ザブルードいかりのメタファー、The Brood、以降『ザ・ブルード』と表記)は1979年カナダサイコロジカルホラー映画。脚本・監督はデヴィッド・クローネンバーグ、出演はオリヴァー・リードサマンサ・エッガーなど。クローネンバーグ監督が妻と離婚した後に製作されており、崩壊した夫婦関係とその背後で進む怪物による殺人事件を描いている。

日本では『ザ・ブルード』のタイトルでソフト化されたことがある[4]
ストーリー

精神科医のハル・ラグランはソマフリー研究所 (英: Somafree Institute) という施設を経営し、その施設で精神障害の患者を治療している。その治療法は患者の肉体に生理学的な変化を催させることで抑圧された感情を解放するというもので、ラグランはこの療法を「サイコプラズミクス」(英: psychoplasmics) と呼んでいる。入院患者の一人であるノーラ・カーベスは重度の精神障害を抱えており、夫のフランクとは5歳の娘であるキャンディスの監護権を巡って争っている。フランクはノーラの元を訪れた後、キャンディスの体に打撲傷や引っ掻き傷が残っていることを発見する。フランクはノーラがキャンディスを虐待したことを疑い、ラグランにノーラのキャンディスへの面会権を停止させる意思を伝える。ラグランはノーラとの治療を集中的に行うようになり、問題を早期に解決させようとする。セラピーの最中、ラグランはノーラが母親から虐待を受けていたこと、父親はノーラを母親の虐待から守ろうとしなかったことを知る。

一方で、フランクはラグランの治療法をやめさせるため、ジャン・ハートグという人物の元を訪ねる。ハートグはかつてソマフリー研究所の患者だったが、サイコプラズミクスの影響でリンパ腫を患い、死の淵にあった。その際、フランクはキャンディスを義理の母であるジュリアナの元に預ける。ジュリアナは、ノーラは幼い頃に原因不明の瘤が出来て入院していたことをキャンディスに語る。その後、ジュリアナは小人のような子供に襲撃されて撲殺される。キャンディスは精神的なショックを受けたが、襲われることはなかった。

ジュリアナの元夫であるバートンはジュリアナの葬儀のためにフランクの元を訪ね、ソマフリー研究所にいるノーラとの接触を試みる。しかし、ラグランはバートンを追い返してしまう。フランクはキャンディスの先生であるルース・メイヤーを夕食に誘い、自宅に招いて、学校での娘の行状について話し合う。その最中、酒に酔ったバートンから電話がかかる。バートンはジュリアナの自宅におり、一緒にソマフリー研究所でノーラに会いにいこうと言い張る。フランクはバートンを宥めに出かけ、キャンディスをルースに預ける。フランクが不在の中、ルースはノーラがかけた電話に出る。ノーラはその声が自分の娘の教師のものであると悟り、フランクと不倫していると信じ込む。ノーラはルースを罵倒し、自分の家族の元から離れろと怒鳴りつける。その一方で、フランクはジュリアナの家に到着するが、バートンはジュリアナを殺した子供により殺害されていた。子供はフランクを殺そうとするも息絶える。

警察の検視により、その小人のような子供は解剖学的に奇妙な特徴を有していることが判明する。その子供には性器が無く、色盲であると見られ、生まれつき歯が無く、さらに、臍までもが存在しなかった。そのことから、普通の人間のような生まれではないと推定された。殺人の話が新聞に掲載されると、ラルガンは殺人事件とノーラへの治療との関係を不承不承認める。ラルガンはソマフリー研究所を閉鎖し、ノーラ以外の患者たちを追い出す。フランクはハートグを通じてソマフリー研究所の閉鎖について知らされる。

ソマフリー研究所を退去させられた患者の一人であるマイクは、ノーラがラグランの「女王蜂」であること、屋根裏部屋で異様な子供たちを世話していることをフランクに話す。キャンディスが学校へ向かうと、小人のような子供が2人現れて、ルースを襲撃して殺害する。2人の子供はキャンディスを連れてソマフリー研究所に戻る。フランクがキャンディスを追ってソマフリー研究所に到着したところ、ラグランはフランクに真実を伝える。小人のような子供たちはノーラへのサイコプラズミクス療法の過程で生まれた偶然の産物であり、ノーラの虐待を受けたことへの怒りがあまりにも強かったためにノーラが独りでに産み出した存在であるというのだ。その同腹の子供たちはノーラの怒りに反応して活動し、ノーラは子供たちの行動を全く把握していない。ラグランはこの怪物たちを管理するのはもはや危険すぎると判断し、思い切って子供たちの寝床に潜り込み、キャンディスの救出を試みる。フランクには子供たちを刺激しないためにノーラを平静に留めておくように指示する。

フランクはキャンディス救出のため、ノーラとよりを戻そうとしているふりをする。しかし、フランクはサイコプラズミクスによってノーラの体に生じた体外子宮から子供が産み出される様を目撃する。ノーラは自分が子供の体を舐めて綺麗にする様子を見たフランクの態度から嫌悪感を読み取る。それに呼応して、子供たちがラグランを殺害する。ノーラはキャンディスを失うくらいならば、いっそのこと殺してやると脅迫する。子供たちはキャンディスを追いかけ始め、キャンディスはクローゼットに身を隠す。子供たちはドアを押し破ってキャンディスに掴みかかろうとする。フランクは自暴自棄になってノーラを絞殺し、異形の子供たちも精神的繋がりのある母親の死によって全滅する。フランクは精神的なショックを受けたキャンディスを連れて、ソマフリー研究所から出発する。車に乗るキャンディスの腕には、ノーラの体にも現れたような、2つの小さな瘤が出来ていた。
キャスト

役名俳優
ハル・ラグラン
オリヴァー・リード
ノーラ・カーベスサマンサ・エッガー
フランク・カーベスアート・ヒンデル(英語版)
バートン・ケリーヘンリー・ベックマン(英語版)
ジュリアナ・ケリーナーラ・フィッツジェラルド
ルース・メイヤースーザン・ホーガン(英語版)
キャンディス・カーベスシンディー・ヒンズ
マイク・トレランゲイリー・マッキーハン
捜査官マイケル・マギー(英語版)
ジャン・ハートグロバート・A・シルバーマン(英語版)
弁護士ラリー・ソルウェイ(英語版)
クリスニコラス・キャンベル(英語版)

製作
脚本

クローネンバーグ監督は『ザ・ブルード』を振り返り、構造の点では自作の中で最も古典的なホラー映画だと思うと述べた[2]。クローネンバーグ監督が本映画の脚本を思い付いたのは妻との離婚の後のことだった。離婚協議は苛烈を極め、娘の監護権を巡って争うという苦々しい経験をした[2]。離婚の最中、クローネンバーグは『クレイマー、クレイマー』という映画 (こちらも1979年公開)[注釈 1]の存在を知り、その映画で離婚後の家庭崩壊が楽天的に描写されることに幻滅した[2]。それに呼応して、クローネンバーグ監督は『ザ・ブルード』の脚本を執筆し、離婚した夫婦が自分の子供を巡って争う様を描写しようと熱望した[2]
キャスティング

フランクとノーラのキャスティングの際、クローネンバーグ監督は自分と元妻に漠然に似た俳優を探した[2]。カナダ人の俳優であるアート・ヒンデルをフランク役に、イギリス人の女優であるサマンサ・エッガーをノーラ役に選んだ[7]。オリヴァー・リードが演じたハル・ラグランは精神科医であり、離婚後のノーラをフランクから隔離し続ける[2]。エッガーとリードが映画で共演したのは2度目のことだった。最初に共演した映画は1970年の『殺意の週末』である[7]。また、エッガーとリードは個人的に知り合っており、ともにイングランドのブレドロー(英語版)という村で育った[7]。エッガーはクローネンバーグの脚本を印象的に思い、ノーラという役がウィリアム・シェイクスピア風であると感じて映画への出演に同意した[7]


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