ザワークラウト
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ポーランドのザワークラウト(キショナ・カプースタ)

ザワークラウト (Sauerkraut, ドイツ語: [?za???k?a?t] ( 音声ファイル)) とは、ドイツにおけるキャベツ漬物(塩漬け)。また、それを使った料理も指す[1]。原義は「酸っぱいキャベツ」。日本では「キャベツの酢漬け」「酢キャベツ」と表記されることもあるが、酸味発酵により生じる乳酸によるものであり、酢酸によるものではない[2][3]。ザウアークラウト、ザオアークラオト、英語読みの[?sa?.?rkra?t]からサワークラウトとも表記されることがある。
広まった国

フランスアルザス地域ポーランドをはじめ北欧東欧ロシアでも食されているほか、ドイツ移民の多いアメリカ合衆国カナダなどでもよく食べられている。

1世紀には古代ローマで塩漬けのキャベツが食べられていた記録があるが、北欧でのザワークラウトの起源は正確にはわかっていない[4]。ザワークラウトの発明の功績は有史以前のドイツ人にあるとされているが、中国に現存する最古の総合的農書『斉民要術』のなかでは、6世紀の野菜の保存方法が広範囲に説明されていて、31種の野菜の発酵法について書かれている[5]。食物史家のジョイス・トゥームレによると、1237年にモンゴル軍がロシアと東ヨーロッパに侵攻した際に、おもにモンゴル系タタール人によってザワークラウトがもたらされたと述べている[5]チンギス・カンがキャベツ漬けを馬に乗せてヨーロッパに運び込んだという伝説もあるが、その信憑性は懐疑的に見られている[4]。現代のものは16世紀から18世紀にかけてヨーロッパに広く定着した。

ザワークラウトがキャベツの保存法の主流になった理由は定かではないが、他の保存法より多くのビタミンを保つことが可能であり、内陸部の農民にとって貴重な塩を大量に使用する塩漬けよりも、塩水に漬けるだけでよく安上がりだったことは事実である[6]。中世末期のルネッサンス期(14 - 16世紀)に安価な塩が手に入るようになると、キャベツやニシンの保存により痩せた土地でも農民が十分に栄養が摂れるようになり、バルト海諸国の人口が爆発的に増えたという[6]
製法

ザワークラウトの酸味は発酵の過程で乳酸菌が出す乳酸によるもので、酢などの酸味料は加えない[7]。最初のうちはキャベツが生に近く塩基性のときにロイコノストック・メセントロイデス菌がつくが、その後ラクトバチルス・ブレビI菌とラクトバチルス・プランタタルム菌が増殖して保存液の酸味が増す[8]

産地や各家庭において作り方はさまざまであるが、基本的にはキャベツや赤キャベツを繊切りにし、瓶や漬物樽に入れ、適量(キャベツの重量の2%程度)の香辛料を入れてよく混ぜたのち、覆いになるものを置いて漬物石など重しをのせて押しをかけ、常温で保管する[8]。一般に発酵しているザワークラウトの塩分濃度は、重量あたり1.5 - 4%である[8]。重しをかけるのは、キャベツが漬け汁から浮き上がらないようにするためで、キャベツが空気に直接触れるとキャベツの中の乳酸菌が死滅してしまい、他の雑菌に対して無防備になるとことを防ぐためである[8]。夏季なら3日、冬場でも1週間程度で酸味が出て食べごろになる。香辛料はディルシード、キャラウェイシード、ジュニパーベリーなどがよく使われる。また塩とともに白ワインを加えて漬け込まれることもある。

ザワークラウト工場の発酵タンクには、千切りにしたキャベツを100トン以上保存できるものがある[9]。キャベツの芯をくり抜き、塩だけを加え、出てきた水分と合わせて重量比2 - 3%の塩分濃度にする[10]。その後は巨大なタンクに移し、管理された細菌に消化させる[8]ヨーロッパの工場では、発酵開始から1週間ほどで商品を包装する工程に入る[10]。しかしアメリカでは、長ければ1年間タンクに入れて、酸っぱいザワークラウトをつくることもある[10]。工場で作られるザワークラウトは、一般に販売前に加熱殺菌されるため、有益な微生物がほとんど失われていることが多い[10]

似た漬物として、ルーマニアからブルガリアにかけての諸国には切らずに丸ごと漬け込み乳酸発酵させたキャベツがある。後述のサルマ・サルマーレに使われるのはこちらである。
食べ方シュラハトプラッテシュークルート・ガルニ

ソーセージなどの肉料理をはじめとした色々な料理の付合せとしてよく用いられ、ドイツ国内でも地方によって調理法や食べ方が異なる。ドイツではブルートヴルスト(Blutwurst, 血のソーセージの意)の付け合わせといえば、ザワークラウトが定番である[11]

代表的な料理に、ドイツ語でシュラハトプラッテ (Schlachtplatte)、フランス語でシュークルート・ガルニ(英語版)(Choucroute garnie)、アルザス風シュークルート (Choucroute d'Alsace) がある。これは数種類のソーセージおよび数種類の部位の豚肉、特に腿肉(ドイツ語でアイスバイン、フランス語でジャレ・ドゥ・ポール(フランス語版)をザワークラウトの上に乗せて蒸し焼きにしたものである。その他、油で炒めたり、スープやロシアのシチーなどの煮込み料理の材料としても用いられる。また、サンドイッチに挟むのもポピュラーな食べ方である。塩漬けした牛肉と共にパンにはさんだものはルーベンサンドといわれ、ニューヨークの名物料理の一つである。ホットドッグの付け合せとしても一般的である。ドイツからフランスなどへ移住したユダヤ人の料理としても用いられるが、ユダヤ教の定めるカシュルートでは豚肉を食べることが禁じられているため、乗せる具は子牛の肉や魚が用いられる。東欧ではロールキャベツ(サルマ、サルマーレ)にも使われる。

ベトナムにはザワークラウトと同じようなキャベツの漬け物がある。漬物甕にキャベツを入れ、水と塩と砂糖を加え、フタをしてそのまま2 - 3日おくと酸っぱい漬け物ができあがる。

1970年代から「チョコレート・ザ・ザワークラウト・ケーキ」あるいは「クラウト・ファッジ・ケーキ」などの名のスイーツが、アメリカのローカルな料理本に紹介されるようになってきた[12]。このレシピの由来は、1960年代風のエイプリルフールの冗談でつくられたもので、例えば「米国農務省の余剰食糧部がザワークラウト料理コンテストを開催したときに応募された」「ザワークラウトの販売会社がパンフレットにレシピを載せていた」などである[12]。パンプキンケーキのように、ザワークラウトは生地のかさ増しになり、しっとりさせるが、強烈な風味はないという[12]。このケーキについて寄せられた感想はさまざまで、夢中になった者もいるし、ケーキなのにキャベツの千切りが入っているじゃないかと文句を言う者もいたという[12]


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