「サー」のその他の用法については「サー (曖昧さ回避)」をご覧ください。
サー(英語: Sir)は、元来は、イギリスの叙勲制度における栄誉称号のひとつで、ナイト(騎士に由来する勲位で、「勲爵士」などと訳される)に与えられる称号である。より一般的に、英語圏では、男性に対する敬称としても用いられる。正式な書簡においても、しばしば用いられる(例:「Dear Sir」「Right Reverend Sir」)。
この敬称が用いられるのは、対等な者の間や、組織内の階級や社会的地位において目上にあたる教育者や指揮官、年長者(特に若者から)に対して、あるいは、商人が顧客へ呼びかける場合などである。
サーに相当する、女性に用いる表現は、ほとんどの場合は、「マーム (ma'am)」やそのもともとの形である「マダム (madam)」となるが、若い女性、少女、あるいは未婚女性の場合には、例えば「ミス (miss)」などと呼びかける方が好まれることもある。ナイトの称号を授与された女性に用いるサーに相当する表現は、「デイム (Dame)」であるが、(当人ではなく)夫がナイトの称号をもつ女性には「レディ (Lady)」を敬称に用いる。 Sir の語源は、中世フランス語の尊称 sire(messire で「私のご主人様」の意)に由来し、それはさらに古フランス語の sieur(「主人」を意味する Seigneur から変化したもの)、さらに、多くのヨーロッパ諸語における尊称の語源であるラテン語の形容詞 senior(「年長の」の意)に遡る。 英語の文献に初めてsirという形が記録されたのは1297年で、ナイトないし準男爵(バロネット)の尊称として、それまで既に使われていた sire の変形としてであった。sire は、遅くとも1205年以降には名の前に付けてナイト位を有していることを示す尊称として、1225年ころからは男性の君主への呼びかけとして、さらに1250年ころからは一般的に「父親」の意味で、また1362年からは「重要な年長の男性」の意味でも使われていた。 正式な儀礼において、Sir はナイトないし準男爵(バロネット)の勲位をもつ男性(イギリスの貴族制度において、爵位をもつ貴族のすぐ下に位置づけられる階級)の人物の名(あるいは名の一部)、ないしは氏名全体に付けられるが、姓だけに付けられることはない。ポール・マッカートニーを例にとれば「Sir James Paul McCartney」「Sir Paul McCartney」「Sir Paul」は正しい用法であるが「Sir McCartney」とはしない。また、ナイトに叙されたものを呼ぶ際に「ミスター(Mr.)」は用いないので、ミスター・マッカートニー(Mr. McCartney)にはならない。 女性の場合には、Sir に相当する表現としてデイム(Dame)があり、自身がナイトの栄を受けている女性は、男性の場合の Sir と同様に用い、やはり姓のみの前には付けない。 (自らはナイト等の栄を受けていない)ナイトの妻について用いる尊称については、17世紀以来の実際の用法を追認する形で、また、法廷での手続きに準じて、1917年に修正が加えられており、今日では、ナイトや準男爵の妻は、姓の前に「レディ」Lady を付けて尊称とする。すなわち、再びポール・マッカートニーに例をとれば、その妻は「Lady McCartney」であり、「Lady Linda McCartney」とはしない。 姓名のフルネームに Lady を付けるのは、公爵、侯爵、伯爵など貴族の令嬢や、近年においてガーター勲章やシッスル勲章を受けた女性が、それ以上の爵位などをもっていない場合に限られている。 イギリスや、イギリスの君主が国家元首となっているイギリス連邦の一部の国々を始め、尊称として Sir を用いることを認められているのは、以下の栄誉を受けている男性である。
起源
尊称としての正式な使い方
現行の栄誉
イギリスおよびイギリス連邦
准男爵 - Baronet
ガーター勲章を授与されたナイト - Knight of the Order of the Garter
シッスル勲章を授与されたナイト - Knight of the Order of the Thistle
バス勲章を授与されたナイト・コマンダー、デイム・コマンダー、またはナイト・グランド・クロス - Knight Commander or Knight Grand Cross of the Order of the Bath