サービア教徒
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サービア教徒(サービアきょうと、アラビア語: ?????‎、英語:Sabians)とは、イスラームの聖典クルアーン(コーラン)のなかで啓典の民として言及されるもののひとつ。または本来のサービア教徒ではないが、諸事情によってサービア教徒を自称したマイノリティー集団。あるいは現在慣習的にサービア教と呼ばれるローカルな宗教に属する人々。
目次

1 クルアーンにおけるサービア教徒

2 イラクの「サービア教徒」

2.1 マンダ教徒

2.2 スッバ


3 ハッラーンの「偽サービア教徒」

3.1 歴史

3.2 信仰形態

3.3 「偽サービア教徒」に連なる著名人


4 ニューエイジ思想における「サービア教徒」

5 脚注

6 外部リンク

クルアーンにおけるサービア教徒

サービア教徒はクルアーン中の三箇所で、以下のように啓典の民のひとつとして名を挙げられているが、クルアーンのいうところの「サービア教徒」が、いかなる宗教に属する人々を指した(意図していた)のかは謎とされる。なお、引用文中ではサービア教徒は「サバ人」と表記されている。

まことに、信仰ある人々、ユダヤ教を奉ずる人々、キリスト教徒、それにサバ人など、誰であれアッラーを信仰し、最後の日を信じ、正しいことを行なう者、そのような者はやがて主から御褒美を頂戴するであろう。彼らには何も恐ろしいことは起りはせぬ。決して悲しい目にも逢うことはない。 ? 『クルアーン』カイロ版2章62節、フリューゲル版2章59節、井筒俊彦訳『コーラン』(上)、岩波書店、1957年、p.21。

まことに、信仰ある人々、ユダヤ教を奉ずる人々、サバ人、キリスト教徒、すべてアッラーと最後の日を信じて義しい行いをなす者、すべてこの人々は何の怖ろしい目にも遇いはせぬ、悲しい目にも遇いはせぬ。 ? 『クルアーン』カイロ版5章69節、フリューゲル版5章73節、井筒俊彦訳『コーラン』(上)、岩波書店、1957年、p.159。

信仰する人々、ユダヤ教を奉ずる人々、サバ人、キリスト教徒、拝火教徒、多神教徒――復活の日が来れば、アッラーが必ずこれらの間にはっきりした区別をつけ給う。アッラーはあらゆることに立ち会って一切をみそなわし給う。 ? 『クルアーン』カイロ版22章17節、フリューゲル版22章17節、井筒俊彦訳『コーラン』(中)、岩波書店、1958年、p.169。

古代南アラビアのサバア王国(Sheba)に関連づける説もあるが、より有力視されるのは、イスラーム成立当時のイラク南部に存在したと見られるグノーシス的なキリスト教の一分派、あるいはマンダ教徒をサービア教徒にあてる見解である。

いずれにせよ、アラビア語で「サービア教徒」(?????)という名詞を構成する?、?、? ( s - b - ' )という三つの語根の組み合わせが「水に漬ける」、「水に浸す」などの意味を持つため、クルアーンの指す「サービア教徒」は何らかの洗礼儀礼を持っていたと考えられる。古い文献にはサービア教徒を星辰崇拝者とする記述もあるが、これは後述するハッラーンの「偽サービア教徒」との混同によると思われる。
イラクの「サービア教徒」
マンダ教徒「マンダ教」も参照

ヨルダン川流域に興り、3世紀頃にイラク南部に移住したマンダ教徒(マンダヤ教徒、マンデ人)をサービア教徒と呼ぶことがある。そもそもクルアーンがサービア教徒という名によって示していたのがマンダ教徒であり、この呼称は正当であるとする見解もあるが、確実な証拠はない。実際にはイスラームによるイラク征服以降に、後述するハッラーンの星辰崇拝者たちと同じく安全保障のためにサービア教徒を称したか、もしくはイスラーム側の誤解によっていつしかサービア教徒と見なされるにいたったものと考えられる。

マンダ教徒は洗礼儀礼を重視し、その教義はユダヤ教ミトラ教とも密接な関係を持つが、グノーシス的な世界観を持つ。地上や人間を創造したプタヒルは下等神であり、モーセイエス・キリストムハンマドは偽預言者であるとされる。洗礼者ヨハネを崇敬するが、これはイスラーム支配下で啓典の民として信仰を認めてもらうために、ヨルダン川と洗礼との縁から付加されたものとされる。マンダ教徒は今日もイラク南部の大湿地帯からアラブ系住民の多いイランフーゼスターン地方にかけて分布する。現在のイラク情勢に関する文脈で登場するサービア教徒は、おおむねマンダ教徒のことである。
スッバ

イラク南部からイランにかけてスッバという少数派宗教集団が分布する。


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