サーキットブレーカー制度
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サーキットブレーカー制度(サーキットブレーカーせいど、: circuit breaker)とは、株式市場先物取引において価格が一定以上の変動を起こした場合に、強制的に取引を停止させるなどの措置を行う制度である。アメリカでは、S&P500構成銘柄にもサーキットブレーカーが設けられている。
概説

競争市場では、例えば売りが売りを呼んで下落が止まらなくなるようなことがある。サーキットブレーカー制度が設けられた市場では、基準値よりも一定の幅以上の取引値が付くことなどの予め定められた基準が満たされると、サーキットブレーカーが「発動」となり、取引所は当該市場で取引(約定)の成立を一定期間発生させない状態となる。当制度は、投資家に冷静になってもらう目的で設けられた制度である[1][2]。電流が流れ過ぎた時に、発熱などを食い止める電源を落とす電気回路の遮断器(サーキットブレーカー)と似ている制度であるため、このように呼ばれる[1]

1987年10月19日に、米国市場最大規模の暴落となった「ブラックマンデー」をきっかけに、ニューヨーク証券取引所で始まった[1]。このときは1日で株価が22パーセントも値下がりしたため、行き過ぎた下落を防ごうと考え出された[1]。日米欧や米国などの先進国の株式市場は一般的に導入している[1][2]

日本におけるサーキットブレーカー制度は、一部の先物・オプション市場にのみ存在し、現物株式は対象外であるとする見解がある[2]が、現物株式においても定義上サーキットブレーカーに当てはまる制度は存在する(後述)。

また全ての取引の成立を止めるのではなく、プログラム取引など特定形態の取引に限って成立を止めるものもあり、それらは特にサイドカーと呼ばれる[3]
各国の株式市場における制度
日本
現物有価証券市場

同名制度は株式債券上場投資信託(ETF) 等の現物市場についてはいずれの取引所・市場でも未導入。

ただし、サーキットブレーカーに近い、もしくは定義上含まれうる制度として、全証券取引所[注 1]の株式・ETF等の立会内売買市場で導入されている「特別気配」ならびに「連続約定気配」の制度がある。いずれも銘柄ごとに独立に約定成立が保留される制度である。
特別気配制度
ある一つの注文が到来した際、当該注文の即時約定処理中に本来発生すべき約定価格群[注 2]のうちすべてが、更新値幅[注 3]を(上または下に)超える場合には、最大3分間(※状況により更に長引くことがある)、約定成立の保留が行われる。
連続約定気配制度
下記の2つのパターンのいずれかに当てはまるときに、直前の約定値段から気配の更新値幅の2倍の値段まで売買を成立させた後、最大1分間、約定成立の保留が行われる。
ある一つの注文が到来した際、当該注文の即時約定処理中に本来発生すべき約定価格群[注 2]のうち一つ以上が、更新値幅[注 3]を(上または下に)超えず、かつ同約定価格群のうち一つ以上が更新値幅の2倍[注 3]を(上または下に)超える場合

複数注文の到来により、ある時点tから60秒以内に、(時点tにおける)更新値幅の2倍を上または下に超えるような約定が、本制度がなければ発生すべき場合

金融先物市場・金融オプション市場

大阪取引所に上場される指数先物取引・債権先物取引およびそれらのオプション取引については、「サーキット・ブレーカー制度」ならびに「即時約定可能値幅制度」という制度が存在する。
サーキット・ブレーカー制度[4]
Static Circuit Breaker とも[4]1994年2月14日 導入(大阪取引所の先物取引のかつての上場取引所である東京証券取引所大阪証券取引所として)。先物価格が基準値に応じた一定の変動幅を超えて上昇または下落した場合、取引を10分間中断する。台湾加権指数先物取引は対象外。一つの限月で条件が満たされると、それと同じ先物取引の全ての限月において発動される。
即時約定可能値幅制度[5]
2011年2月に大阪証券取引所として導入[6]。ある一つの注文が到来した際、当該注文の即時約定処理中に本来発生すべき約定価格群[注 2]のうち一つ以上が、即時約定可能値幅(DCB値幅)[注 4]を(上または下に)超える場合に、30秒間(※状況により更に長引くことがある)、売買が中断される[注 5][7][8]。先物取引・限月の組み合わせごとに独立して条件判断・発動される。

主なサーキット・ブレーカー(Static Circuit Breaker)の発動事例(以下で東証は東京証券取引所、大証は大阪証券取引所を指す)。

2001年

9月12日 - アメリカ同時多発テロ事件翌日。アメリカ合衆国の国内取引が全て中止になった煽りを受け、株価が大きく値を下げ、日経平均先物(大証)の取引が中断。


2008年

9月16日 - 国債先物の取引が中断。リーマン・ブラザーズの経営破綻を受けて、アメリカ合衆国の金融システムの不安が増幅しリーマン・ショックが起こり、先物を中心に大きく買われる展開となったため。

10月10日 - 世界的な金融不安とアメリカ合衆国議会での金融安定化法案の否決で、9日のニューヨーク証券取引所ダウ平均株価が9,000ドルを割ったこと(8,579.19ドル)などを受け、株の売り注文が殺到したため、TOPIX先物(東証)・日経平均先物(大証)の取引を中断。

10月14日 - 世界各国の政府と中央銀行が発表した、金融不安の回避策が好感され、世界的に株価が反騰した影響を受け、株の買い注文が殺到。取引開始直後に前週末比1,310円高の9,330円をつけた直後に、日経平均先物(大証)の取引を中断。

10月16日 - 前日のニューヨーク証券取引所のダウ平均株価が史上2番目の下げ幅(733.08ドル安)をつけ、9,000ドルを再び割ったこと(終値8,577.91ドル)などを受け、株の売り注文が殺到。取引開始直後に日経平均先物(大証)の取引を中断。


2011年

3月14日 - 前週末に発生した東日本大震災を受け、寄り付きから現物は売り優勢に。その結果、ヘッジファンドの動きが強まったTOPIX先物(東証)が取引を中断[9]

3月15日 - 東日本大震災と福島第一原子力発電所事故についての菅直人首相の国民へのメッセージを受け、売り注文が殺到。日経平均先物(大証)、TOPIX先物(東証)が、それぞれ初めて2回取引を中断[10]


2013年

5月23日 - 日経平均先物(大証)でレギュラー・セッション(ザラバ)14時28分?14時43分(通常時制限値幅)の中断及びクロージング・オークション(第一次拡大時制限値幅)の板寄せ不成立の合計2回発動。「アベノミクス」への期待による、5月からの過熱気味な急ピッチな上昇の反動などにより、売りが殺到した。


2016年

2月9日 - 日経平均VI先物取引(大阪取引所)について。日本銀行のマイナス金利を受けて、日本国債の長期金利がマイナスになり売り注文が殺到。


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