サンスクリーン剤
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チューブ入りの日焼け止め (SPF15)背中に日焼け止めを塗っているところ

サンスクリーン剤(サンスクリーンざい、: Sunscreen)は、皮膚に当たる紫外線から防御することで、日焼けや皮膚の光老化を予防するための製品である。日本国内法においては日焼け止め化粧品に該当し、単に日焼け止め(また、日やけ止めとも表記)とも呼ばれる。形態としてはクリームローションジェルスプレーなどがある[1]。また飲む日焼け止めも増加してきたが2018年時点で従来の外用剤を置き換えるものではない[1]

日本では「日焼けによるシミそばかすをふせぐ」の効能表示が承認されている[2]酸化チタン酸化亜鉛(紫外線散乱剤)の安全性は確認されているが、主に他の成分(紫外線散乱剤)が体内に吸収されるとして、2019年に米国で安全性確認の強化の動きが起きている[3]。紫外線防御の指数として日本での表記では、紫外線B波を防ぐSPFでは最大値を50とそれ以上であれば50+とし、紫外線A波を防ぐPAでは「+」が4個まで増加していく。SPF15以上で皮膚がんのリスクや老化の兆候を減らす[1]。有害作用と環境汚染について議論がある。
日やけ止めの成分

日やけ止めに配合されている成分である紫外線防御剤は、大きく2種類に分類できる[4]:37。
紫外線散乱剤
紫外線拡散剤は紫外線を物理的に反射し、吸収剤は紫外線を化学的に吸収し、肌に紫外線が届くのを防ぐ。鉱物由来の成分が多く、塗った時に白く見え、これを好まない場合もある[5]酸化チタン酸化亜鉛の安全性は確認されている[3]。毒性は低く、ナノ粒子化によって皮膚を透過するのではという懸念については、ほとんど角質層にとどまっており吸収されないとされる[5]。主な懸念として、チタンと亜鉛では、量は限られているものの紫外線への暴露によってフリーラジカルを放出することである[5]酸化セリウムは、酸化チタンの代替として注目されている[6][7]
紫外線吸収剤
紫外線吸収剤は合成化合物が多い。紫外線吸収剤はその性質上、紫外線のエネルギーを吸収する際に分子構造が破壊されることがあり、防御性能が時間とともに低下する。破壊後の生成物がアレルギー反応炎症を起こすなどの可能性がある。日本国内では厚生労働省のポジティブリストに収載された物質以外は配合できない。米国で皮膚から吸収されるという研究結果から2019年11月までに体内への吸収データが提出されない場合、使用許可を取り消す方針を示している[3]。従来は吸収されないとみなされていたが[1]、1990年代後半から吸収されるという研究結果が発表されるようになっていた[3]

SPF30や50といった効果の高い日焼け止めには散乱剤および吸収剤の両方が多くの製品に使用されている。

特に合成の紫外線吸収剤による光への増感作用、接触性皮膚炎、免疫抑制、エストロゲン作用、甲状腺ホルモンのかく乱といった報告があり、植物由来でより安全な、そして環境にも優しい化粧品への関心を集めている[8]。オキシベンゾン(英語版)など欧州連合では既にほかの化合物に置き換えられているが、米国ではその置換先の物質は承認されていないので置き換えできないといった事情が2019年時点で存在している[5]
代替成分

オーガニック化粧品には薬草の成分のみを使ったものがある。5種類の天然の物質を使って、ヒトの被験者で実験したところ最も高いウスニン酸でUVPF4.1で、比較対象のSPF5の既存製品ではUVPF4.2であった[9]。植物由来でSPF10の製品も存在する[10]。だが、オーガニックだから安全とは限らない。

ビタミンAのパルミチン酸レチノールの日焼け止めはSPF20程度の効果がある[11]フェルラ酸は、ビタミンC、ビタミンEの化学的な安定性を向上させ、太陽光に対する防御性を数倍にする[12]。10名のランダム化比較試験で、ビタミンC(15%濃度)、フェルラ酸 (2%)、フロレチンを含有する外用薬を、紫外線による皮膚損傷に備えて事前に塗ることで防御作用があった[13]。12名の中国人女性を用いて、ビタミンC、ビタミンE、フェルラ酸からなる外用薬は、これを塗った部分は、塗っていない部分に比較して光から防御された[14]
飲む日焼け止め

飲む日焼け止めでは直接皮膚を防御することはできないが、使いやすさの利点がある[15]。通常の日焼け止めで防げない可視光に対する防御では有益な可能性がある[5]。紫外線によって皮膚に紅斑が生じることを減らすにはそれほど効果的ではない[15]。2018年にアメリカ食品医薬品局 (FDA) は、現時点では日焼け止めを置き換えるほどの適切な強さで紫外線防御ができる錠剤やカプセルはないとして、証明されていない主張を行っている栄養補助食品に警告書を送付した[1]。警告対象にはAdvanced Skin Brightening Formula(リコピン、など)、Solaricare(PLエキス)、Sunsafe Rx(アスタキサンチン、ルテイン、リコピン、緑茶、ビタミンCとE)が含まれる[1]

商品名がついた成分としてPLエキス(商品名フェーンブロック)や、ローズマリーとグレープフルーツ成分(商品名ニュートロックスサン)が流通している。

紫外線によって紅斑を生じさせる最小紅斑線量 (MED) について

ビタミンCビタミンEの併用 - それぞれ別の研究として1週間でMEDは21%増加(毎日Eを1000 IUとCを2 g)、7週間でMED77.6%増加(E 3 g/C 3 g)、12週間で41%増加(E 1000 IU/C 2 g[16])、別の研究でも12週間で41%増加(同)[15]。なお、ビタミンCやEの単体ではMEDの変化はなかったという研究がある[15]。12週間では、4週間時点で1週間までの試験よりも血中ビタミンC濃度が上昇して、それ以上増加せず飽和したと考えられ、1週間では飽和までは不十分だと考察された[16]

ココア抽出物 - フラボノイドの多いチョコレートを12週間摂取し、MEDは2倍以上に増加した[15]

ニュートロックスサン - 2か月後にMEDは約30%、34%増加したという2つの研究がある[15]。そのうち前者では100 mgか250 mgかを受け取ったがこの二つの間に差はなく、半月で15.2%、1か月で20.5%増加した[17]、後者では12週間後に56%増加した[18]

PLエキス - 20名の研究でPLエキスを毎日1000 mgを服用し、MEDは8日後に平均4.79%、15日後に14.57%、29日後に20.37%増加した[19]

2018年のレビューでヒトでの基礎的でない臨床試験があったものについて、β-カロテンで紅斑を減らしたヒトでの研究は複数あり、また1970年代には光線過敏症の治療法として1日当たり子供30 - 90 mg、60 - 180 mgで効果があることが判明している。副作用の面では肺がんリスクの高い人のリスクを増加させるおそれがある。リコピンの10週間の摂取によって紅斑の量が減少したといったヒトでの研究は複数あるが、服用量が一定しておらず、必要な量などについての追加の研究が必要である。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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