サルモネラ
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サルモネラ属
Salmonella enterica
分類

ドメイン:細菌 Bacteria
:プロテオバクテリア門
Proteobacteria
:ガンマプロテオバクテリア綱
Gammaproteobacteria
:エンテロバクター目
Enterobacterales
:腸内細菌科
Enterobacteriaceae
:サルモネラ属
Salmonella

学名
Salmonella
Lignieres 1900



S. enterica(タイプ種)

S. bongori

サルモネラ (Salmonella) は、グラム陰性 通性嫌気性桿菌腸内細菌科の一属(サルモネラ属)に属する細菌。主に動物の消化管に生息する腸内細菌の一種であり、その一部はヒトや動物に感染して病原性を示す。ヒトに対して病原性を持つサルモネラ属の細菌は、三類感染症に指定されている腸チフスパラチフスを起こすもの(チフス菌 S. enterica serovar Typhiとパラチフス菌 S. enterica serovar Paratyphi A)と、感染型食中毒を起こすもの(食中毒性サルモネラ:ネズミチフス菌 S. enterica serovar Typhimuriumや腸炎菌 S. enterica serovar Enteritidisなど)とに大別される。食品衛生の分野では、後者にあたる食中毒の原因となるサルモネラを特にサルモネラ属菌と呼ぶが、一般には、これらを指して狭義にサルモネラあるいはサルモネラ菌と呼ぶこともある。細胞内寄生性細菌であり、チフス菌やパラチフス菌は主にマクロファージに感染して菌血症を、それ以外の食中毒性サルモネラは腸管上皮細胞に感染して胃腸炎を起こす性質を持ち、この細胞内感染がサルモネラの病原性に関与している。

Salmonellaという属名は、1885年アメリカでサルモネラ属の基準株であるブタコレラ菌 S. enterica serovar Choleraesuis を発見した細菌学者、ダニエル・サルモン(英語版)にちなんで名付けられた。ただし、サルモネラ属に属する細菌の分離はそれ以前から行われており、ヒトに対する病原性サルモネラとして最初に分離されたのはチフス菌 S. enterica serovar Typhi である。チフス菌は1880年カール・エーベルトにより命名され、1884年ゲオルク・ガフキーがその純培養に成功した。
細菌学的特徴サルモネラ(右、2と4)と大腸菌(左、1と3)の鑑別。(上段)乳糖分解指示薬を含む培地(BTB培地)で培養すると、乳糖を分解する大腸菌 (1) は培地が黄変し、分解しないサルモネラ (2) は培地は青色になる。(下段)胆汁酸と硫化水素指示薬を含む培地(SSB培地)で培養すると、胆汁酸感受性の大腸菌は発育阻害されてコロニー数が減少するが(3、黒矢印)、胆汁酸耐性のサルモネラは通常どおり発育し、また硫化水素産生によりコロニーに黒変がみられる(4、白矢印)

サルモネラ属は、腸内細菌科ブドウ糖を嫌気的に発酵する、芽胞を持たない、通性嫌気性のグラム陰性桿菌)に属する細菌であり、大きさは0.5 × 2 μmぐらいの棒状で周毛性鞭毛を持ち運動性がある。サルモネラ属の細菌は乳糖を分解せず、またほとんどの菌株は硫化水素を産生し、リジンを脱炭酸し、クエン酸を炭素源として利用できる。これらの生化学的特性は、同じ腸内細菌科の腸管病原性細菌(大腸菌赤痢菌など)と鑑別する上で重要である。また、サルモネラ菌はマラカイトグリーン胆汁酸亜セレン酸に抵抗性があるため、培地にこれらの物質を加えたものを選択培地として用いることで、サルモネラを優先的に検出することが可能である。熱や酸には弱いが乾燥や低温には強く、冷凍しても不活化しない。この性質は冷凍食品からもサルモネラ食中毒が発生するということに関連している。
分類と学名表記

2005年現在、サルモネラ属は生物学的性状からS. entericaとS. bongoriに分類され、さらにS. entericaは6亜種に分類される。また、血清学的には、細胞壁リポ多糖体であるO抗原と、鞭毛タンパク質であるH抗原の組み合わせで2,500種類以上に分類される。

サルモネラ属の分類は細菌の中でも最も混乱の大きいものの一つであり、分類学名表記を統一するための裁定が頻繁に行われている。古典的なサルモネラ属の分類は、O抗原とH抗原の組み合わせに基づいたもので、1926年にWhiteが提唱し後にKaffmannが拡充した、Kaffmann-Whiteの抗原表に従って行われてきた。この旧分類では、例えばサルモネラ属のうちO9:Hdという抗原型の組み合わせを持つものをS. typhi(旧和名:腸チフス菌)という一つの生物学的種として扱っていた。しかしこのKaffmannらの分類は、抗原型が異なる細菌は別の生物種として命名できるという考えに従っていたため、その後、細菌学分野全体として生化学的、遺伝子学的分類が行われるようになると齟齬を生じる結果になった。そこで1985年には生物学的分類と整合させることを目的にS. choleraesuisの1属1種とすることが提案され、2002年にはS. entericaの1属1種とすることが正式菌名として承認された。さらにその後、2005年にはS. entericaとS. bongoriの1属2種とし、entericaの下に6亜種を設ける分類法が裁定された。

この分類法によると、チフス菌やパラチフス菌、食中毒性サルモネラなどの病原性サルモネラは、ほとんどS. enterica subsp. entericaに属する。この亜種の中で、さらにKaffmann-Whiteの分類に準じた抗原性の違いに基づく、血清型 (serovar) による分類がなされており、例えばチフス菌の正式な学名は「Salmonella enterica subspecies enterica serovar Typhi」となるが、subspecies entericaを省略して、S. enterica serovar Typhiと略記してもかまわないことにされている。なお正式に認められたものではないが、これをS. Typhiと略記することもしばしば行われており、本項目でも以下この略記法に従って表記する。また研究者によっては旧分類名である“S. typhi”や“S. choleraesuis”を用いる人も未だに存在している[誰?]。

2005年1月に裁定された分類ではサルモネラは以下のように分類されている[1]血清型 (serovar) については特に代表的なものだけを記載した。

Salmonella enterica

subsp. enterica

serovar Choleraesuis ブタコレラ菌

serovar Typhi チフス菌

serovar Paratyphi A パラチフス菌

serovar Paratyphi B

serovar Paratyphi C

serovar Typhimurium ネズミチフス菌

serovar Enteritidis 腸炎菌


supsp. salamae

supsp. arizonae

supsp. diarizonae

supsp. houtenae

supsp. indica


Salmonella bongori

これらとは別に、2005年にS. subterraneaが記載されたが、2010年にサルモネラ属よりもむしろEscherichia hermanniiに近いことが報告され、2016年には非合法ながらAtlantibacter subterraneaという名称が提案されている[2]

Salmonella subterranea

サルモネラの細胞内寄生

サルモネラは、感染した宿主の細胞内と細胞外の両方で増殖を行うことが可能な、細胞内寄生体(通性細胞内寄生性細菌、細胞内寄生菌)の一種である。細胞内寄生菌には、サルモネラ以外に結核菌レジオネラリステリア・モノサイトゲネスなどが存在し、これら細胞内寄生菌の多くは、生体内で異物の排除を担当しているマクロファージに貪食されることで細胞内に取り込まれ、その後、その殺菌機構を逃れてマクロファージ内で増殖するものが大半である。これに対して、サルモネラは積極的に細胞に働きかけて、細胞のエンドサイトーシスを活性化させる機能を有しているため、マクロファージ以外の、通常ならば貪食活性を持たない腸管上皮細胞などにも侵入できる性質を持つ。
上皮細胞への侵入サルモネラの腸管上皮細胞への侵入メカニズム

サルモネラの上皮細胞への細胞内侵入には、III型分泌装置(さんがたぶんぴつそうち)と呼ばれる、細菌の細胞質タンパク質を菌体外に分泌するための機構が関与している[3]。III型分泌装置は細菌の鞭毛に類似の構造体であり、鞭毛の毛に相当するタンパク質を宿主の細胞に突き刺して、その細胞内部に直接、エフェクター分子と呼ばれるタンパク質を送り込む[4]サルモネラの1つであるネズミチフス菌 (S. Typhimurium) のIII型分泌装置の電子顕微鏡写真。

サルモネラは大腸上皮細胞の表面に付着し、そこで上皮細胞にIII型分泌装置を突き刺し、その内部にエフェクター分子を送り込む。このとき送り込まれるエフェクター分子(サルモネラ染色体上のSPI-1領域の遺伝子にコードされた、SopE、SipAなどのタンパク質)は、細胞骨格を構成するアクチンを再構成する作用を持っており[5][6]、この作用によってサルモネラが付着した周辺で細胞の形態が変化(ラフリングと呼ばれる構造変化)して、付着した菌体周辺で偽足のような構造が発達する。この偽足様構造の発達は上皮細胞のエンドサイトーシスを促進し、このエンドサイトーシスによってサルモネラは上皮細胞内に取り込まれる(引き金機構)[7]。上皮細胞に取り込まれたサルモネラの一部はオートファジーによって分解されるが、残りはそのままエンドソームの内部で増殖する。このような機構の細胞内感染を行うものには、サルモネラの他に赤痢菌や一部の病原性大腸菌(腸管侵入性大腸菌、EIEC)がある。
マクロファージでの増殖マクロファージによるサルモネラの貪食。(上段)非チフス性サルモネラの場合:マクロファージにより殺菌される。(下段)チフス菌の場合:殺菌を回避してマクロファージ内で増殖する。

サルモネラ属の細菌のうち、チフス菌とパラチフス菌はマクロファージに感染してその内部で増殖する性質を持ち、これがチフス性疾患の発症に関与している。サルモネラは、上記した機構によって上皮細胞に侵入する以外にも、異物として認識されることでマクロファージによって貪食される。

マクロファージは食菌に特化した細胞で強い殺菌機構を有しており、貪食した異物をファゴソーム(食胞)という小胞に取り込み、これと細胞内のリソソームが融合してファゴリソソームを形成することで、リソソーム内部のさまざまな分解酵素群や活性酸素などの働きで分解する。非チフス性サルモネラを含めて、多くの細菌はこの機構によって殺菌され分解される。

これに対してチフス菌は、ファゴソームの内部からその小胞膜を介してIII型分泌装置を細胞質側に突き刺し、SPI-2と呼ばれる遺伝子領域にコードされた、チフス菌特異的なエフェクター分子群を宿主細胞質に注入する。このエフェクター分子群は、ファゴソームとリソソームの融合を阻害する作用を持ち、これによってファゴリソソームの形成が抑制される結果、チフス菌は食菌を回避することが可能になる。リソソームとの融合が阻害されたファゴソームは、やがてSCV (salmonella-containing vacuole) と呼ばれる特殊な形態の小胞になり、チフス菌はこの内部で増殖を行う。この感染マクロファージがリンパ管から血液に移行することによって、チフス菌もまた血液に入り込み、菌血症の発生につながる。サルモネラと同じような機構でマクロファージによる殺菌を逃れる細菌にはレジオネラやブルセラがある。また結核菌もファゴソームとリソソームの融合を阻害する性質を持つ点で、サルモネラに類似の殺菌回避機構を持つと言える。
病原性

サルモネラ属の細菌は自然界において、さまざまな動物の消化管内に一種の常在菌として存在している。しかしヒトにおいては、健康な人の消化管における菌数は極めて少なく、その糞便からは分離されることはほとんどない。

一般に、サルモネラ症は、動物に由来(主に卵、肉、家禽、生乳)し、細菌の含まれた食べ物を経口摂取することで感染する[8]。一部のサルモネラはヒトに対する病原性を示し、腸チフスあるいはパラチフスと呼ばれる重篤な感染症を起こすものと、胃腸炎(食中毒)を起こすものの二つに大別される。前者はそれぞれチフス菌 (S. Typhi)、パラチフス菌 (S. Paratyphi A) による疾患であり、これらをチフス性サルモネラ、後者の食中毒性サルモネラを非チフス性サルモネラと呼んで区別することがある。

チフス性サルモネラはヒトのみに感染する細菌で、患者の糞便から別のヒトに感染するほか、糞便によって汚染された土壌や水の中に残存しているもの(これらの自然環境中ではほとんど増殖しない)が感染源になる。これに対して食中毒性サルモネラ菌はペットや、家畜の腸管に常在菌として存在する人獣共通感染症であり、そこから汚染された食品などが食中毒の原因となる。食品衛生の分野では、この食中毒性サルモネラを問題にして扱うことが多く、以前はサルモネラ菌、サルモネラ菌属という名称で呼んでいたが、1998年にはサルモネラ属菌という名前に変更され、食品衛生上はこれが正式な名称として扱われている。日本の家畜伝染病予防法ではS. Gallinarum pullolum、S. Gallinarum Gallinarumによる家禽サルモネラ感染症は法定伝染病に、S. Abortuequiによる馬パラチフス、S. Enteritidis、S. Typhimurium、S. Choleraesuis、S. Dublinによるサルモネラ症は届出伝染病に指定されている。
食中毒

サルモネラ感染症
概要
診療科感染症消化器科
症状発熱腹痛下痢嘔吐
原因サルモネラ属菌
合併症敗血症髄膜炎骨髄炎関節炎など
治療輸液による全身状態の改善
抗生物質の投与
予後早期に適切な治療を行えば致死率は1%以下
分類および外部参照情報
[ウィキデータで編集]
サルモネラによる胃腸炎(食中毒)の発症メカニズム。(1) サルモネラが消化管に到達。(2) III型分泌装置によって腸管上皮細胞に細胞内感染。(3) 感染細胞の機能不全により腸管内に液体が貯留(下痢の発症)。(4) 好中球が浸潤して炎症を増悪(腸炎症状)

サルモネラ食中毒は、本菌が腸管上皮細胞に感染した結果生じる、腸管内への液体貯留と好中球浸潤による炎症によって起きると考えられている。典型的な感染型食中毒であり、その主な症状は、強い腹痛嘔吐、激しい下痢などの消化器症状、発熱などである。下痢便は緑色の粘液が混じった水様便であり、ときに海苔佃煮のような粘血便となることがある。また、他の細菌性食中毒に比べて高熱が出ることが多いのが特徴である。通常は数日?1週間程度で回復するが、抵抗力のない者は菌血症を起こし重症化することがある。まれに内毒素による敗血症を合併し、死亡することがある。潜伏期間は平均12時間ほどといわれているが、S. Enteritidisの場合3-4日となることもある。一般的なサルモネラ属菌では、発症するのに10万個以上の菌数が必要といわれているが、S. Enteritidisは100個以下の菌数でも発症することがあり、食品を介さない人から人への感染も報告されている[9]


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