サルビノリンA
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サルビノリンA

IUPAC命名法による物質名
IUPAC名

methyl (2S,4aR,6aR,7R,9S,10aS,10bR)-9-(acetyloxy)-2-(furan-3-yl)-6a,10b-dimethyl-4,10-dioxododecahydro-2H-benzo[f]isochromene-7-carboxylate

臨床データ
法的規制

AU: Prohibited (S9)

Uncontrolled (though Salvia divinorum is controlled in some parts of the world, such as in certain states in the US)

投与経路Buccal/Sublingual, Smoking
識別
CAS番号
83729-01-5 
ATCコードnone
PubChemCID: 128563
IUPHAR/BPS1666
ChemSpider113947 
ChEMBLCHEMBL445332 
化学的データ
化学式C23H28O8
分子量432.46362 g/mol
SMILES

O=C(OC)[C@H]2[C@@]3(CC[C@H]4C(=O)O[C@H](c1ccoc1)C[C@@]4([C@H]3C(=O)[C@@H](OC(=O)C)C2)C)C

InChI

InChI=1S/C23H28O8/c1-12(24)30-16-9-15(20(26)28-4)22(2)7-5-14-21(27)31-17(13-6-8-29-11-13)10-23(14,3)19(22)18(16)25/h6,8,11,14-17,19H,5,7,9-10H2,1-4H3/t14-,15-,16-,17-,19-,22-,23-/m0/s1 

Key:OBSYBRPAKCASQB-AGQYDFLVSA-N 

物理的データ
融点238 - 240 °C (460 - 464 °F) (also reported 242-244 °C)[1]
沸点760.2 °C (1,400.4 °F)
水への溶解量25.07 mg/L at 25 °C (water, est) mg/mL (20 °C)
比旋光度-45.3 °C at 22 deg C/D (c = 8.530 CHCl3); -41 °C at 25°C/D (c = 1 in CHCl3)
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サルビノリンA(Salvinorin A)は、原住民であるマサテコ族のシャーマンが歴史的に幻覚剤として用いてきたサルビア・ディビノラムの主要な活性向精神性分子である[2]

ジメチルトリプタミンシロシビンメスカリン等の他の天然に生じる幻覚剤分子とは、窒素原子を含まない点で構造的に異なる。そのため、アルカロイドではなく、テルペノイドに分類される[3]。また、他の幻覚剤とは主観的体験も異なり、解離性とされている[2]

サルビノリンAの向精神性の活性は、摂取法によって、効果が数分から1時間程度続く[4]

サルビノリンAは、構造的に類似した他のサルビノリン類とともに見られる。サルビノリンは、trans-ネオクレロダンジテルペンである。κ-オピオイド受容体のアゴニストであり、アルカロイド以外でこの受容体に作用する物質として初めて発見された。薬理機構は、ブライアン・L・ロスの研究室で解明された。
歴史

サルビノリンAは、1982年にメキシコでアルフレド・オルテガらにより発見され命名された。彼らは、分光法X線回折を合わせて用い、この化合物が二環式ジテルペンを持つ構造であることを明らかにした[5]。ほぼ同じ時期、Leander Julian Valdes IIIは、博士課程研究の一環としてこの分子を単離し、1983年に発表した[6]。Valdesはこの物質をディビノラム(divinorum)と名付け、またそのアナログを単離してディビノラムBと名付けた。その後、この研究が1984年に発表された後、それぞれサルビノリンA、サルビノリンBという名前に訂正された[7]。Valdesは、後にサルビノリンCも単離した。
薬理学

サルビノリンAは、化学式C23H28O8のtrans-ネオクレロダンジテルペンである[8]。他の既知のオピオイド受容体リガンドとは異なり、塩基性窒素原子を含まずアルカロイドではない[9]。サルビノリンAは、LSD、メスカリン等の「古典的な」 幻覚剤の主な作用の原因となる、分子標的の5-HT2Aセロトニン受容体には作用しない[9]
力価と選択性

サルビノリンAは、一番少なくて200μgの用量で効果を示す[8][10][11]。ただし、20-30μgで作用するLSDのような合成化合物は、もっと力価が高い[12]。研究により、サルビノリンAは、強いκ-オピオイド受容体アゴニストであることが明らかになった[8]解離定数が1.0 nM(ナノモル/L)と低いことが示すとおり、この受容体に高い親和性がある[13]。マウスにおけるサルビノリンAの作用がκ-オピオイド受容体のアンタゴニストによって阻害されたことが報告されている[14]。さらに、最近になって、サルビノリンAはドーパミンD2受容体のさらに強いパーシャルアゴニストとしても作用することが示された。親和性は5-10 nMで、内活性は40-60%であった。EC50は48 nMで、κ-オピオイド受容体の235 nMより約5倍も高かった[15]。これは、ドーパミンD2受容体も、その効果において重要な役割を果たしていることを示している[15]

サルビノリンAは、この作用機序を介して幻視の状態を誘発することが知られている、唯一の天然に生じる物質である。エナドリン、ケタゾシン、ペンタゾシンやその関連化合物等の合成κ-オピオイドアゴニストは、同様の幻覚および解離作用を示す。

サルビノリンAの力価は、毒性とは異なる。ヒトが曝露されている何倍もの量を慢性的に投与されたマウスに、臓器障害は見られなかった。しかし、血圧に対しては、サルビノリンAの投与後、20-40分後に、対照群と比べて1.5-2倍の上昇が見られたという報告があるが、統計的な結論は出せていない[16]
腸運動に対する効果

サルビノリンAには、強いκ-オピオイド活性化作用によって、過剰な腸運動を妨げる能力がある。回腸の組織に対するサルビノリンAの作用機構は、「シナプス前作用」と呼ばれる。これは、電流に誘導される収縮を変化できるが、外生のアセチルコリンに対しては影響を与えない[17]。サルビノリンAによる腸組織の収縮抑制作用の薬理学的に重要な点は、これが炎症を起こした組織でのみ働き、通常の組織では働かないため。副作用が少ないという点である[18]
溶解性

サルビノリンAは、エタノールアセトンのような有機溶媒に溶解するが、水にはほとんど溶けない[19]カンナビノイドやクルクミノイド(英語版)等の関連するテルペノイドと同様に、脂質にも溶解させることができる。
尿中の検出

580 μgの純粋な薬物を吸ったヒトは、最初の1時間での尿中のサルビノリンA量は、2.4-10.9 μg/Lとなるが、1.5時間後には、ガスクロマトグラフィー液体クロマトグラフィーでの検出限界以外まで落ちる[20]
関連化合物

サルビア・ディビノラムからは、他のサルビノリンやジビナトリン、サルビニシン等、他のテルペノイドが多く単離されている。しかし、これらの物質の中には、κ-オピオイド受容体とμM以下のレベルの高い親和性を持つものはなく、これらがこの植物による精神活性に寄与しているという証拠はない[21][22]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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