サルコイドーシス
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サルコイドーシス

に認められるサルコイドーシスをX線撮影した写真。
概要
診療科血液学, 皮膚科学, 呼吸器学, 眼科学
分類および外部参照情報
ICD-10D86
ICD-9-CM135
OMIM181000
MedlinePlus000076
eMedicinemed/2063
Patient UKサルコイドーシス
MeSHD012507
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サルコイドーシス (sarcoidosis) とは、非乾酪性の類上皮細胞肉芽腫が臓器に認められる疾患である。日本では厚生労働省が認定する特定疾患の1つである。
概念

サルコイドーシスは、リンパ節皮膚を侵す場合が比較的多いものの[1]、心臓、骨格筋、肝臓、脾臓、唾液腺などが侵される場合もあるように、全身諸臓器に乾酪壊死を認めない類上皮細胞による肉芽腫の結節が形成される、全身性の肉芽腫性疾患である。典型的には若年女性に好発し、肺門部リンパ節腫脹および肺野病変、皮膚、関節および眼症状にて初発する場合が多く、約90%が肺病変を形成すると言われている。

サルコイドーシスには、Th1が関与した過敏性の免疫反応が、背景に存在していると考えられている。サルコイドーシスの免疫病態は、活性化したマクロファージT細胞の集積であり、その結果が、肉芽腫の形成である。マクロファージが放出するTNF-αは、肉芽腫の形成において重要な役割を担っていると考えられている。また、サルコイドーシスでは、マクロファージ活性化作用を有する、CD4陽性T細胞が放出するIFN-γも、重要な役割を発揮していると考えられている。

しかしながら、1869年にサルコイドーシスの皮膚病変が、イギリスの内科医のジョナサン・ユッチンソン(英語版)らによって報告されて以来、その原因は、なお不明である。

本症の病因として疑われている要因として、サルコイドーシスを引き起こし易い素因を有する宿主が、環境中の何らかの抗原物質(起因体)に暴露された結果として誘導される、Th1タイプの過敏性免疫反応に起因すると考えられている。その起因体の候補としては、例えば、グラム陽性嫌気性細菌であるアクネ桿菌(英語版)だという説も有る。このような常在菌による感染を起因体だと考える根拠の1つとして、抗菌薬の1種であるミノサイクリンの長期投与によって、皮膚サルコイドーシスが寛解したという報告が有る事が挙げられる。しかし、それこそ、どこにでも見られるような、種々の環境刺激に対して、サルコイドーシスの際で見られるような免疫反応が起きたとする報告も有る。さらには、ストレス等が遠因だとも言われるものの、その真偽は不明である。
疫学

日本での有病率は人口10万人当たり7.5?9.3で、罹患率は平均0.7である。女性に好発する傾向が見られる。アメリカ合衆国での人口10万人当たりの有病率は、男性5.9、女性で6.3である。好発年齢は40歳以下の成人に好発し、20歳代から30歳代に発症のピークが有る。ただし、スカンジナビア諸国と日本では、発症のピークが2峰性を示し、20歳代から30歳代だけでなく、50歳代から60歳代の女性が第2の発症のピークとして見られる。

また、地域別に見ると、北欧や北米、日本では北海道や東北地方など、寒冷地に多く見られる[2]
病態

サルコイドーシスの肉芽腫形成や進展機序にはTh1細胞による免疫応答の関与が考えられている[3]。有機粒子や無機抗原、病原体などの抗原がマクロファージなどの抗原提示細胞で処理され、MHC class2分子を介してT細胞に提示され、CD4陽性のTh1細胞の活性化と増殖が起こる。T細胞やマクロファージからIL-2やIFN-γTNF-α、IL-12、IL-18などのサイトカインケモカインが産出され肉芽腫形成に関与する。肉芽腫は成熟とともにTh2細胞を介して消退し、TGF-βなどにより線維化をきたす[4][5][3]。さらにTh17細胞がサルコイドーシスの肉芽腫形成や線維化の進展に寄与することが示唆されている[6]
病理サルコイドーシスによる非乾酪性の肉芽腫病変。ラングハンス型巨細胞を認める。

サルコイドーシスの病理は多彩だが、リンパ組織や肺に多い肉芽腫性病変、全身性の微小な血管炎(マイクロアンギオパチー)が多いとされている。肉芽腫性病変が肺で発生した場合は、リンパ管に沿うように間質に分布する場合が多いものの、その癒合性、局在部位、臓器特異性によって様々な形態像を見せる。

なお、非乾酪性肉芽腫を形成する異物型巨細胞の細胞質には、星状(: asteroid)小体やシャウマン(: Schaumann)小体が見られる場合があるものの、これは本症に特異的ではなく、例えば、結核ベリリウム症などでも認められる。肉芽腫性の病変の大部分は自然退縮するが、硝子化として残存したり、少数例では繊維化へと進展する。ミクロアンギオパチーは肉芽腫が血管壁を侵襲し、血管壁の構造破壊によって発生すると考えられている。病理学的な検討によると、血管壁での肉芽腫の分布は分節的であり、外膜から中膜にかけての分布が多いとされている。
肉芽腫性血管炎
肉芽腫による血管壁の構成成分の破壊が見られるという病理像を以って定義される。本症では肺、眼、脳、神経などで認められる。病理解剖を行った肺では、弾性型肺動脈から小葉間静脈まで様々な血管で、肉芽腫が認められる。ただし、病理学的には静脈侵襲が目立つ傾向にある。血管での肉芽腫の分布は分節的で、血管外膜から中膜にかけて多く分布する。巨細胞は星状(asteroid)小体やシャウマン(Schaumann)小体など、細胞内封入体を有する場合がある。肉芽腫の中心部は、主にCD4陽性のリンパ球で構成され、辺縁部はCD8陽性細胞で構成される。なお、好中球浸潤やフィブリノイド壊死は認められない。また、ミクロアンギオパチーが共存している場合もある。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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