サルカケミカン(Toddalia asiatica)はミカン科の蔓になる樹木。棘がとても鋭いもので、薬用などに用いられる。 常緑性の蔓になる樹木[1]。茎には一面に鋭い棘がある。棘は下面が平らで上下に伸びていて、先端は鋭く鉤状に下向きに曲がっており、長さは約2mm。若枝は無毛。葉は互生でそれぞれ3枚の小葉からなる。全体の長さは3-5cmあり、葉柄は05-1cmmの長さ。小葉は長楕円形で長さ1.5-5cm、幅0.7-1.5cm。小葉は先が尖らず、先端には腺体があってややへこんでいる。縁には細かな鋸歯があり、表裏共に無毛だが裏面には油点が目立つ。また小葉の基部はくさび形で長さ0.5-1mmの小葉柄に流れる。 花期は冬から春で枝先や葉腋から円錐花序を出し、多くの小さな花をつける。雌雄異株であり、雄花序では各節に3-4個、雌花序では各節に1個の花をつける。萼は5裂、花弁は5個で長楕円形、雄蘂は5個[2]。花弁は緑白色で雄花では2mm、雌花では3mm。果実は球形で径6-8mmになり、橙黄色に熟す。 本種の呼称は沖縄では広くサルカチミカンであり、サルカチやサルカチャーも広く知られる[3]。これらは「サルを引っかけるもの」の意と取れる。和名はこれに由来し、「サルでもその棘に引っかかる」の意である[4]。 日本では琉球列島に産し、海岸近くの森林に出現する。特に石灰岩地に多い[4]。国外では台湾、中国大陸、インドシナ、マレーシア、インドネシアからインドに分布する[5]。アフリカでも見られるが新しく移入されたものと思われ、雌花はまれにしか見られない傾向がある[6]。ほかにコモロ、セーシェル、マスカリン諸島でも見られる[6]。棘によって他の木などによじ登る蔓植物である[2]。 本属は本種のみを含む。 沖縄では民間薬として用いられ、果実と根皮は酒で煎じて飲んで風邪に効果があり、咳を止める[7]。また葉や茎、根を煎じたものは健胃、喘息に効果があるとされる。果実は調味料や防腐剤に使われた。根から黄色の染料を取った。他に幹でパイプを作ったとも[8]。また、果樹園で石垣や木の根本にこの植物の茎を何本か束ねて置き、これはその鋭い棘で子供の悪戯を防ぐために用いられた。 ちなみに果実は脂臭いが生食が可能[2]、とされているが、実際には舌がしびれるほど刺激が強い味がするという[9]。 ケニアのキクユ人も本種の葉や根を風邪の際の薬としており[10]、近年はニエリ県で葉の煎じ汁を風邪や喘息、胸の痛み、歯痛に対して処方するとの報告がある[11]。
特徴
葉の様子
若い茎の棘
古い茎の棘
若い果実
分布と生育環境
分類
利用
出典^ 以下、主として佐竹他(1989), p.280-281
^ a b c 初島(1975), p.353
^ 天野(1967), p.67
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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