サラリーキャップ
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サラリーキャップ(Salary cap)とは、各プロスポーツチームが、所属する選手に支払う年俸総額、あるいはチームの総予算を、毎年リーグ全体の収入に基づいて上限金額を調整し、規定する制度である。スポーツの分野、またはリーグの違いによって詳細は様々である。
概要

サラリーキャップの効果として、各チームの経営の健全化ということ以外に、一部の豊富な財力をもつチームが金を使い選手を集めることを防ぎ、リーグの戦力を均衡化させるということがある。

実際、サラリーキャップを導入しているNFLの場合、連覇は難しいと言われ、スーパーボウルを3連覇しているチームは未だ出ていない。同じく、NBAも近年は王朝と呼ばれるチームでも3連覇が精一杯で、その次の年はNBAファイナルにすら進出できていない。

MLBNPB欧州プロサッカーなどでも契約金・年俸の高騰が問題視され、これを導入しようとする動きも見られているが具体的な方針がまだ固まっていない(ただし、日本ではbjリーグや独立リーグの四国アイランドリーグplusBCリーグでは導入されている)。なお、MLBでは代替策として贅沢税(ラグジュアリー・タックス)が導入されている。また、欧州サッカーではクラブごとでサラリーキャップを設けているケースがある。

2020年代に入り、自動車レースのフォーミュラ1(F1)のように、チーム全体の予算に制限を設ける例も出てきている。

尚、スポーツリーグによっては下限金額を設けている場合もある。
アメリカンフットボール
NFL

北米プロフットボールリーグのNFLでは、フリーエージェント(FA)で移籍した特定選手に対する年俸の極端な高騰を抑制し、均等な戦力で試合をすることを目的に1994年から導入された。結果として、多くの高給与ベテランプレーヤーが放出される傾向がある。また、年俸を下げる代わりに契約年数を増やすなどして、当面の年俸支出を下げる契約の再構築もしばしば行われる。

毎年リーグ主催者の総収入の一定の割合をNFL参加チームの数で割った金額が各チームのサラリーキャップとなる。各チームはそのサラリーキャップの上限(制限)金額までの範囲内で契約更改を交わすこととなる(一般にはチーム内の最高年俸の選手から数えて51人がその対象で、52人目からロースター限度の80人目までの給料は計算されない。契約金の上限をオーバーすると罰金や選手契約の取り消しやドラフト指名権が剥奪される罰則がある[1])。主催者総収入とは、均等に分配される全国放映権料(テレビ・ラジオ)、同じく均等なグッズなどのマーチャンダイジング、並びにホームゲームにおける有料試合(プレシーズンマッチ、公式戦)の入場料収入などを全て合算したものである[2]。また、上限を超過してはならない厳格なこれらの形式はハードキャップと呼ばれる。

NFLにおいてはサラリーキャップがその他の制度も含めて戦力均衡という目的に機能しており、サラリーキャップ導入以来スーパーボウル連覇を達成したチームはわずか4チーム(5回)しかなく、3連覇を達成したチームはスーパーボウル史上1チームも出ていない。

限度額は年々上昇しており、当初は3556万8000ドル(当時約41億5200円)であったが[3]、2021年シーズンは1億8250万ドル(約200億円)であった[4]

なお、サラリーキャップには下限も存在する。これは、年俸上昇を願う選手会との交渉の結果導入されたものであり、チーム総年俸を圧縮して利益を最大化する試みを制限する。2013-2016年および2017-2020年のそれぞれの期間では、4年間の総額が上限の89%となるように、下限が定義されている[5]。下限を下回った場合、罰金は科せられないが、差額が4年間の間にそのチームに属した選手に分配される。2011年および2012年にはチームごとの下限は存在せず、リーグ全体での下限が存在していた。なお、レベニュー・シェアリングにより、入場料収入の40%や放映権などリーグ総収入の一定割合が各チームに同額で分配されることで、下限を守るための財政基盤が保証されている。
バスケットボール
NBA詳細は「NBAサラリーキャップ」を参照

北米プロバスケットボールリーグのNBAでは1980年代前半には3分の2のチームが財政能力を超える高年俸を支払ったために経営不振に陥っており、NBAコミッショナーのデビッド・スターンが考案し、1984年から導入された。定義された総収入(チケット収入と全国放映権料収入)の53%をリーグのチーム数で割って算出し、これが年俸総額の推定最大値となった(基準となる総収入に占める割合はその後に何度も変更されている)。年俸総額が既にサラリーキャップを超過していたチームは時間をかけて段階的に導入することが許されるなど、緩やかなソフトキャップを採用した[6]

1995年の協議では穴だらけだった部分の修正が行われた。新協約で一定期間を同じチームでプレイした選手も再契約が結びやすいようにサラリーキャップの上限を超えることが認められるのは3年以上となったが、例外が認められないNFLやNHLのサラリーキャップと違い、多くの例外が認められている。下限も存在しており、こちらは例外は認められず、サラリーキャップの75%以上の年俸の支払いが義務付けられている[6]

チームがロースター枠15人の選手に支払う年俸総額が一定の基準を超えると罰金が課される贅沢税も採用しており、徴収金は罰金を支払っていないチームに平等に配分される。2013年は総収入をチーム数で割った61.1%が基準額となっている。サラリーキャップや贅沢税の基準額は年々増加しており、2013-2014シーズンではサラリーキャップの限度額は5867万9000ドル(約61億262万円)となり、贅沢税の限度額は7174万8000ドル(約74億6179万円)にまで達した[7]
bjリーグ

日本では2005年より開幕したbjリーグで初めて採用された。球団及び球団職員などのから選手及び家族などへ支給される金銭その他報酬が対象となる。これに加え以下の各金額相当額をサラリーキャップに加算することができる。
日本国外在住の選手の(別途理事会で定める)住居費。

トレードの対価として受けた金額。

選手の負傷時点から契約期限までの未払い報酬額。(医師の診断書を要する)

なお、トレードの対価としてトレード先に支払った金額、及びFA宣言選手に対して支払われる一時金についてはチームサラリーの対象外となる。

シーズン途中に契約解除となった選手については、年俸を均等日割りした上で、契約解除後の日数分はチームサラリーの対象から除外される。


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