サブリミナル
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「サブリミナル」はこの項目へ転送されています。1992年にフジテレビの『世にも奇妙な物語』で放送されたテレビドラマについては「サブリミナル (世にも奇妙な物語)」を、2008年製作のイギリスの映画作品については「サブリミナル (2008年の映画)」をご覧ください。

サブリミナル効果(サブリミナルこうか)とは、意識潜在意識の境界領域より下に刺激を与えることで表れるとされている効果のことを言い、視覚聴覚触覚の3つのサブリミナルがあるとされる[1]。閾下知覚とも呼ばれる[2]

サブリミナルとは「潜在意識の」という意味の言葉である。境界領域下の刺激はサブリミナル刺激(Subliminal stimuli)もしくはサブリミナル・メッセージ(subliminal messages)と呼ばれている。
概説

研究は19世紀半ばから始まった。1897年にはイエール大学のE.W. Scriptureが著書の中でその原理について解説した。1900年米国の心理学教授Dunlapは「瞬間的に見せるshadowがMuller-Lyer illusionの線の長さの判断に影響する」と述べた。

視覚に対するサブリミナルは20世紀半ばにはマーケティング業者が広告にその技術を用い始めたが、うまくいかなかった事例も見られる。1973年には、ゲーム「H?sker D??」の宣伝にサブリミナル刺激が用いられ、それが使われたという事実がウィルソン・ブライアン・キイの著書で指摘されたことで、米国連邦通信委員会公聴会が開かれ、サブリミナル広告が禁止されることになった。日本では1995年日本放送協会(NHK)が、1999年日本民間放送連盟が、それぞれの番組放送基準でサブリミナル的表現方法を禁止することを明文化した。(→研究史

その後、映画テレビ放送などではほとんどの場合、使用を禁止された。

当初は心理学知覚心理学の領域であったが、広告研究、感情研究、社会心理学臨床心理学など幅広く様々な関心から研究された。

サブリミナルによる説得は、自覚的に知覚できないコミュニケーションであるために経験的な調査が難しく[3]、サブリミナル刺激による効果の測定には困難がつきものであるが、各サブリミナル手法ごとの効果の度合いについての研究が徐々に蓄積した[4]
定義

多くの論文において利用される定義によれば、サブリミナル効果とは、閾値以下の刺激によって生体に何らかの影響があることである[要出典]。十分に知覚できる長さの刺激によって引き起こされる効果は、スプラリミナル知覚の影響と考える。

一方で、閾値以上の刺激でもサブリミナルを考えることができ、注意が向いておらず「見えた」という自覚がなければよし という定義も可能だと主張する研究者もいる[5]。そのような議論の中では、埋込み広告の中にあるパッと見て理解できるメッセージ以外もサブリミナルだとされる。
研究史

19世紀半ばから研究が始まった。

イエール大学の心理学ラボのE.W. Scripture(博士)は著書The New Psychology(1897)[6]において、サブリミナル・メッセージについての基本的な原理を解説した[7]

1900年、米国の心理学教授Dunlapは、被験者らにMuller-Lyer illusion(二本の線の端に矢印状のものがつくことで長さが異なるとの錯覚が生じるもの)を見せている時に、瞬間的に "imperceptible shadow"を見せてみた。Dunlapは、この瞬間的なshadowによって被験者による線の長さの判断に影響が生じた、とした。

第二次世界大戦中には、タシストスコープ(tachistoscope、非常に短い時間だけ写真を投影する装置)を用いて兵士たちに敵機を認識させる訓練がほどこされた[7]。今日では、この装置は読書速度の向上や視力検査のために用いられている[8]

20世紀半ばには、マーケティング業者などによる宣伝的な言及もあった。宣伝資料に、米国の心理学者ハリー・レヴィー・ホリングワースHarry Levi Hollingworthによる、サブリミナル・メッセージは広告宣伝に使える、とする文章が掲載された[9]

1957年9月から6週間にわたり、市場調査業者のジェームズ・ヴィカリー(James M. Vicary)は、ニュージャージー州フォートリーの映画館で映画「ピクニック」の上映中に実験を行なったとされている。ヴィカリーによると、映画が映写されているスクリーンの上に、「コカコーラを飲め」「ポップコーンを食べろ」というメッセージが書かれたスライドを1/3000秒ずつ5分ごとに繰り返し二重映写[注 1]したところ、コカコーラについては18.1%、ポップコーンについては57.5%の売上の増加がみられたとのことであった[10]。しかし、ヴィカリーは、アメリカ広告調査機構の要請にも関らず、この実験の内容と結果についての論文を発表しなかった。1958年2月には、カナダCBCが「クローズアップ」という番組の中で、ヴィカリーの会社に再"実験"をさせた。番組の時間を通して352回にわたり「telephone now(今すぐお電話を)」というメッセージを投影させてみたが、誰も電話をかけてこなかった。また、放送中に何か感じたことがあったら手紙を出すよう視聴者に呼びかけたが、500通以上届いた手紙の中に、電話をかけたくなったというものはひとつも無かった。 さらに、1962年には、Advertising Ageが、ヴィカリー自身の「マスコミに情報が漏れた時にはまだ実験はしていなかった、データは十分にはなかった」という談話を掲載した。新潟大学の鈴木光太郎教授は、この実験そのものがなかったと指摘している[11]

1973年には、ゲームH?sker D??について、米国とカナダで行われたコマーシャルにおいて、瞬間的なメッセージが利用され、「Get it」と表示された[12]。同年、 ウィルソン・ブライアン・キイの著書 『潜在意識の誘惑(原題:Subliminal Seduction)』で、サブリミナル技術が広告で広く用いられている、とした[13]。人々はサブリミナル技術に対して注意しはじめ、これにより1974年連邦通信委員会(FCC)で公聴会が開かれることになった。その結果、FCC policy statementが作成され、サブリミナル広告は、”公の利益に反する”とされ、”人を欺こうとしている”とされた[13]。カナダでもサブリミナル広告は禁止された[7]

1995年には日本放送協会(NHK)が、1999年には日本民間放送連盟が、それぞれの番組放送基準でサブリミナル的表現方法を禁止することを明文化した。

1998年刊行の「プロパガンダ―広告・政治宣伝のからくりを見抜く」では29章にサブリミナル効果が取り上げられ、「ポップコーンとコーラの研究は作り話だと判明している」「多くの記事や論文はあるが効果を実証するものがひとつもない」「1970年の調査では68%の人がサブリミナルが効果的だと信じていると回答した」「メディアで無効だと報道されず、自分の非合理的な行動に説明をつけるのに都合が良いのが信じられている原因」ということが記述されている[14]

1990年代に視覚サブリミナル効果は怪しげな研究分野と見られていたが、2000年代に入ると興味深い実験が行われ、限定的な状況下では実験による効果が確認された[1][15][16]。例えば、ヴィカリーの実験のように瞬間的にコーラという単語を見せても効果はないが、アイスティーの銘柄であるLipton Ice(リプトンアイス)という単語ではサブリミナルの影響が確認された[15]。瞬間的に単語を見せることによって、飲み物の中からリプトンアイスを選択させることができたのである(購入させたわけではない)。より精密な実験によると、リプトンアイスという単語でサブリミナルの誘導効果が機能するのは、被験者がリプトンアイスが好きだが頻繁には飲んでいない人物で、が渇いている状況であった[15]。別の実験では、被験者が疲れているほどサブリミナルの暗示を受けやすいという結果が出ている[15]


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