サブプライムローン問題
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サブプライム住宅ローン危機(サブプライムじゅうたくローンきき、: subprime mortgage crisis)とは、2007年末から2009年頃を中心としてアメリカ合衆国で起きた、住宅購入用途向けサブプライムローン不良債権化である。

サブプライムローンへの投資を証券化し金融商品として取引可能にした「サブプライム・モーゲージ[1]」は、金融市場で価格が下落するなどして、リーマン・ショック世界金融危機)を代表例とする経済問題に発展した。年表については、サブプライム住宅ローン危機の年表を参照。
概要.mw-parser-output .ambox{border:1px solid #a2a9b1;border-left:10px solid #36c;background-color:#fbfbfb;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .ambox+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+link+.ambox{margin-top:-1px}html body.mediawiki .mw-parser-output .ambox.mbox-small-left{margin:4px 1em 4px 0;overflow:hidden;width:238px;border-collapse:collapse;font-size:88%;line-height:1.25em}.mw-parser-output .ambox-speedy{border-left:10px solid #b32424;background-color:#fee7e6}.mw-parser-output .ambox-delete{border-left:10px solid #b32424}.mw-parser-output .ambox-content{border-left:10px solid #f28500}.mw-parser-output .ambox-style{border-left:10px solid #fc3}.mw-parser-output .ambox-move{border-left:10px solid #9932cc}.mw-parser-output .ambox-protection{border-left:10px solid #a2a9b1}.mw-parser-output .ambox .mbox-text{border:none;padding:0.25em 0.5em;width:100%;font-size:90%}.mw-parser-output .ambox .mbox-image{border:none;padding:2px 0 2px 0.5em;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-imageright{border:none;padding:2px 0.5em 2px 0;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-empty-cell{border:none;padding:0;width:1px}.mw-parser-output .ambox .mbox-image-div{width:52px}html.client-js body.skin-minerva .mw-parser-output .mbox-text-span{margin-left:23px!important}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .ambox{margin:0 10%}}

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出典検索?: "サブプライム住宅ローン危機" ? ニュース ・ 書籍 ・ スカラー ・ CiNii ・ J-STAGE ・ NDL ・ dlib.jp ・ ジャパンサーチ ・ TWL(2015年10月)

サブプライム住宅ローン危機のおおもとの原因であるサブプライムローンとは、米国のサブプライム層を対象として、彼らの住宅購入用途向けに、ローンへの返済が滞った場合への担保として購入する住宅に抵当権を設定し、抵当貸付(詳細は譲渡抵当を参照)とした住宅ローン、即ちモーゲージ・ローンである。

米国では住宅ローンの証券化が広く普及しており、その債権を組み込んだ金融商品を所有していた金融機関は種類も数も多数に上る。米国の住宅の安定供給を目的として設立された、連邦住宅抵当公庫(ファニー・メイ[2])や、連邦住宅金融抵当公庫(フレディ・マック[3])などが、モーゲージ・バンクからサブプライムローンの債権をまとめて購入して証券化し、MBS[4]という担保証券の中で比較的リスクの高いサブプライム・モーゲージとして市場に供給した。こうした制度によって発行されたサブプライム・モーゲージのうち、およそ80%が変動金利型のアジャスタブル・レート・モーゲージ(英語版)であったとされる[5]。「住宅の値段が上昇し続ける」という考えのもと、サブプライムローンは過剰に供給されていた。

モーゲージ・バンクが貸し付けたサブプライムローンの返済が滞った場合、貸主のモーゲージ・バンクは、借主すなわち債務者であるサブプライム層の購入した住宅をその返済の一部として譲渡されるが、米国内での住宅価格が2006年中盤にピークを迎えた後に下落したため、サブプライム・ローンの多くが購入した住宅の譲渡をもってしてもローンの全額を返済し切れない不良債権となった。こうした事情を含む諸処の理由でリスクが増加すると、サブプライム・モーゲージの利回りは切り上げられた。更に住宅ローンの返済の滞納が増加したため、市場でのサブプライム・モーゲージの購入者は減り、サブプライム・モーゲージの価格は下落した。そしてサブプライム・モーゲージを保有していた金融機関や投資ファンド、政府系企業等は多額の損失をこうむり、世界的な信用収縮が起こった。

@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}このため、市場原理主義新自由主義の失敗例として、批判される事が多々ある[要出典]。
用語に関する注意

サブプライムローンが住宅ローンを指すのに対し、サブプライム・モーゲージはサブプライムローンに紐付く抵当や抵当権である。だが報道機関などで双方を明確に区別して使われる場合は少なく、抵当権を証券化した金融商品であるサブプライム・モーゲージ証券の事を、あたかもローンであるかの如くサブプライムローンと呼んでいるケースも多々見られる。なお、本項の記事名である「サブプライム住宅ローン危機」という日本語名の原語の表現は実際には「サブプライム・モーゲージの危機」を意味するものである。
語義

リーマン・ショックは、2008年9月15日に米国の大手投資銀行であるリーマン・ブラザーズ倒産した事を引き金に発生した。

関与を疑われた銀行は、後に次々と和解金を支払い、関与の違法性を含む事件の真相をうやむやにしている[6]

2015年2月4日現在、主な原告であり、ファニーメイフレディマックを監督する米連邦住宅金融局(英語版)は、一部の住宅ローンについて元本削減を引き続き検討しているという[7]

このような経緯から、サブプライム住宅ローン危機あるいはサブプライム問題の語は、広義として、リーマン・ショックを契機として発生した世界金融危機を含めて指す場合がある。詳細は「リーマン・ショック」を参照
背景と事件の経緯住宅バブルを招いた原因住宅価格の下落によるドミノ倒し

危機の直接原因もしくは引き金は、おおむね2005年から2006年頃にピークを迎えた米国の住宅バブルが弾けたことだった[8][9]。以後サブプライムローンと変動金利型住宅ローンの債務不履行が急速に増加した。ローンの初期弁済額を低く抑えるといった借り手刺激策や長期的な住宅価格上昇トレンドから、借り手は多少無理のあるローンでもすぐにより良い条件で借り換えられると信じて手を出した。ところが、2006年から2007年にかけて金利が上昇し、住宅価格が緩やかな下落を始めると、米国の多くの地域ではローンの借り換えが前より難しくなった。月々の返済額が安い初期優遇期間の満了、思うように上昇しない住宅価格、および変動金利型住宅ローンの金利が切り上がったことなどから、債務不履行や抵当物件の差し押さえが劇的に増加した。住宅価格の下落によって、ローン金額よりも住宅価値の方が低いという状況が生まれてしまい、これも借り手側が差し押さえを選ぶ金銭的な動機になった。米国で2006年終盤から顕在化したこの差し押さえの蔓延は、世界的な経済危機の主な原因の一つであり続けている。何故ならこれは消費者の富を吸い上げると共に金融機関の体力を着実に破壊するからである。

危機に至るまでの何年かに渡り、急成長しつつあるアジア諸国や産油国から巨額の外資が米国に流入してきた。この資金流入は2002年から2004年頃の米国の低金利と相まって融資条件を大いに緩和し、住宅バブルと信用バブルの両方に油を注いだ。様々な種類のローン(例えば住宅、クレジットカード自動車など)が簡単に組めるようになり、消費者は空前の債務を負うこととなった[10][11]。住宅バブルや信用バブルの一部として、不動産担保証券(MBS)と呼ばれる金融商品の契約高が非常に増えた。これは住宅ローンの弁済金と住宅価格を価値の裏づけとする証券である。こうした金融革新(en)によって、世界中の企業や投資家が米国の住宅市場に投資できるようになった。住宅価格が下落すると、大量の資金を借りてサブプライムMBSに大きく投資していた世界的な大手金融機関が巨額の損失を計上した。住宅市場の危機が他の経済分野に波及するにつれて、他種のローンでも債務不履行や損失が目立って増加した。全世界の損失額は何兆ドルもの規模と推計されている[12]

住宅バブルと信用バブルが形成されつつあった傍らで、様々な要因から金融システムは脆弱さを増していった。政策立案者は投資銀行ヘッジファンドといった金融機関(いわゆるシャドーバンキングシステム(en))が果たすようになった役割の重要さを認識していなかった。一部の専門家はこれらの機関は米国経済への信用供与という点から見て商業(貯蓄)銀行にも匹敵する重要さを持つに至ったと信じているが、商業銀行のような法規制下にはない[13]。これらの投資銀行やヘッジファンド等、および一部の正規の銀行は、上述したようなローンの原資とするために自らも莫大な資金を借り入れており、発生した大量の債務不履行や不動産担保証券による損失を吸収できるほどの財務的な余力が無かった[14]。これらの損失は金融機関の融資能力を直撃し、経済活動を鈍化させた。中核的な金融機関の安定性が疑われたことから中央銀行も対応を迫られ、融資の促進と企業の重要な資金調達源であるコマーシャルペーパー市場の信頼回復のために資金を供与した。各国政府はまた更なる財政的な介入として中核的な金融機関に公的資金注入をも行った。

住宅市場の落ち込みとそれに続いた金融市場の危機によって経済全般がリスクに晒され、これは世界中の中央銀行による政策金利の引き下げや政府による景気刺激策の発動を呼んだ主たる要因となった。この危機が世界の証券市場に及ぼした影響は劇的である。2008年1月1日から10月11日にかけて、米国企業の株主は8兆ドルの損失を蒙り、時価総額は20兆ドルから12兆ドルに減少した。他国での損失は平均約40%である[15]。証券市場における損失と住宅価格の下落は、経済の牽引役である消費を一層押し下げる圧力となる[16]先進国発展途上国の指導者は、この危機への対抗戦略を見出すために2008年11月と2009年3月に会合を持った[17]。危機を生んだ根本原因の多くは未だ解決されていない。様々な解決策(en)が政府、中央銀行経済学者、および実業家から提案されてきた[18][19][20]
住宅ローン市場米国で差し押さえ対象となった住宅の四半期当り件数(2007年?2009年)

サブプライム層の借り手は典型的には信用履歴と弁済能力に問題がある。サブプライムローンはプライム層顧客へのローンに比べて債務不履行に陥るリスクが高い[21]。もし借り手が期限までに弁済を履行できなければ、貸し手(銀行その他の金融企業)は物件の所有権を得ることができ、この手続きを差し押さえと呼ぶ。

米国におけるサブプライム住宅ローンの残高は、2007年3月現在、1兆3千億ドルだったと推計されており[22]、抵当物件数で750万件を超えるサブプライム住宅ローンが組まれていた[23]。2004年から2006年ではサブプライム住宅ローンが全体に占めるシェアは18%?21%であり、対して2001年から2003年と2007年では10%未満だった[24][25]。2007年の第3四半期では、サブプライム層向け変動金利型住宅ローンは米国の住宅ローン中で6.8%を占めるに過ぎなかったが、この四半期中に生じた差し押さえ件数では43%を占めた[26]。2007年10月において、サブプライム層向け変動金利型住宅ローンのおおよそ16%は弁済が90日以上滞納されているかまたは差し押さえ手続きが始まっており、これは2005年における同比率のおおむね3倍に相当した[27]。2008年1月には、この滞納比率は21%に上昇しており[28]、2008年5月には25%だった[29]

米国の世帯が負った4人家族向けまでの住宅購入用ローンの総額は、2006年末には9兆9千億ドルであり、2008年半ばでは10兆6千億ドルだった[30]。2007年において、貸し手は130万件近い物件について差し押さえ手続きを開始したが、これは2006年に比べて79%増だった[31]。これは2008年には230万件すなわち対2007年比で77%増に及び[32]、更に2009年には280万件、対2008年比で21%増になった[33]

2008年8月現在、米国の住宅ローン全てのうち9.2%が滞納または差し押さえ状態にあった[34]。2009年9月現在、この比率は14.4%に上昇していた[35]。2007年8月から2008年10月の間に、米国全体で936,439件の住宅が差し押さえ手続きを完了した[36]。差し押さえは件数と申請比率の両方で一部の州に集中している[37]。2008年に発生した差し押さえ申請件数の74%が10州に集中しており、上位2州(カリフォルニアフロリダ)だけで41%を構成した。9つの州は全米世帯の平均差し押さえ比率1.84%を上回った[38]
原因

危機の原因は住宅市場と金融市場の両方に浸透していた様々な要因に帰せられる。これらの要因は長い年月の間に形成されてきたものである。原因として挙げられている中には次のようなものがある。


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