この項目では、日本の音楽用語について説明しています。その他の用法については「さび」をご覧ください。
寂(さび)とは、謡曲・語りものなどで声帯を強く震わせて発する調子の低いもの、低く渋みのある声の質、太くてすごみのあることを指す[1]。
サビとは、日本風の歌謡曲、ポップ・ミュージック(J-POP)などの大衆音楽における楽曲の聞かせどころのこと[2]。
定義
冒頭及びサビ以前との対比
「冒頭のフレーズとは異なる楽節」(ヤマハのサイト『楽器解体全書PLUS』[3])
「楽曲の中ほどから曲想の変化する部分」(河合楽器製作所のサイト『意美音』[4])
「旋律・和声共に最初の動機とは違ったものによって構成される」(平凡社『音楽大事典』[5])
「楽曲の中間部分における、冒頭のテーマとは対照的な楽節部分を指す俗称」(リットーミュージック『最新音楽用語事典』[6])
最も…
「しばしば曲中で最も印象的な部分になる」(音楽之友社『新編音楽中辞典』[7])
「特に曲の最も盛り上がる部分を指すことが多い」(河合楽器製作所のサイト『意美音』[4])
サビ区間の自動推定に関する研究を行う産業技術総合研究所情報技術研究部門首席研究員の後藤真孝
[8]によると、楽曲全体の構成において一番代表的な盛り上がる主題の部分であるとし、最も多く繰り返され印象に残り、訓練されていない者が楽曲を聴いた場合でもサビは容易に判断できるものであるとしている[9]。そのためフックとも呼ばれる。なお、リットーミュージック『最新音楽用語事典』によれば、サビの概念はスタンダード・ジャズの時代から存在したが、当時は曲の盛り上がりを指す言葉ではなかったとされ、「サビという言葉の意味は時代と共に変わりつつある」としている[6]。
楽式を用いた定義
Bをサビとするケース
「A+B+A'」のB部分(ヤマハのサイト『楽器解体全書PLUS』[3])
「A+A+B+A」で32小節の1コーラスを形成した上でのB部分をサビと定義(平凡社『音楽大事典』[5])
「A+A+B+A」あるいは「A+A'+B+A''」という楽曲の構成におけるB部分(音楽之友社『新編音楽中辞典』[7])
「A+A+B+A」という構成をアメリカ合衆国のポピュラー音楽で最も一般的なリフレイン・パートとした上で、その中のB部分にあたる8小節をサビと定義し、A部分に対してB部分は異なった調で書かれるとしている。(音楽之友社『新音楽辞典(楽語)』[10])
「A+A'+B+A''」の構成におけるB部分を典型的なサビとし、この場合A''部分を「サビあと」と呼称するとしている。(リットーミュージック『最新音楽用語事典』[6])
Cをサビとするケース
「A+B+C」という構成におけるC部分を指すと定義(音楽之友社『新編音楽中辞典』[7])
新しい用法として「A+B+C」のC部分をサビと呼ぶこともあるとし、この場合は「楽曲の後半部での盛り上がりが期待される」としている。(リットーミュージック『最新音楽用語事典』[6])
なお、リットーミュージック『最新音楽用語事典』によれば、「A+B+A'+C」のようにサビが存在しない場合もあるとしている[6]。 デジタル大辞泉によると語源は不詳とされており、寂のある声などと語源を同じくしている可能性を指摘している[2]。また、音楽業界ではかなり早くから使われていたともされている[2]。 講談社「暮らしのことば 新・語源事典」によれば、「聞かせどころ、見どころ」などを意味する語「さわり」[11]の別な言い回しであると定義した上で、香辛料のワサビが語源であるとしており、「ワサビは『サビ抜き』という表現などに見られるように縮めて『サビ』とも言う。
語源