サキュバス
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この項目では、夢魔について説明しています。その他の用法については「サキュバス (曖昧さ回避)」をご覧ください。
サキュバスを表す16世紀の彫刻

サキュバスまたはサッキュバス(: Succubus、英語: [?s?kj?b?s][1][注 1])は、性行為を通じて男性を誘惑するために、女性の形で夢の中に現れる(中世の伝説にまで遡る)民間伝承における超自然的存在。邦訳は女夢魔(おんなむま)または女淫魔(おんないんま)。男性型はインキュバスである。
概要

キリスト教の教義ではサキュバスは悪魔扱いで、天使や悪魔は実体を持たない霊的存在であるとされるため夢魔とされたのだが、後にサキュバスは夢の中に出現せずに肉体を持った状態で登場することが多くなった[注 2]。その肉体的な正体に関しては、悪魔であるので「死体を利用して憑依している」「魔的な方法でセックス用の肉体を構築している」「やはり霊体であり、性交時の肉体だと思っているのは幻覚である」との説[2]。また、17世紀イタリアの神学者ルドヴィコ・マリア・シニストラリ(1622年 ? 1701年)は著書[3]にて、「インキュバス・サキュバスは悪魔ではなく、人間とは別の種類の理性的な動物」としている[4]

宗教的な伝承においては、サキュバスとの繰り返しの性行為は健康や精神状態の悪化、あるいは死をももたらすと考えられている。現代の表現ではしばしば非常に魅力的な誘惑者または魅惑的女性として描写される。一方、過去にはサキュバスは一般的に恐ろしいもの、悪魔的なものとして描かれていた。

サキュバスの容姿に関しては魅力的で美しい女性であると言われるが、これは「幻影や魅了でそう思わせているだけで、実体は醜い」との説もある[5][6]。また、男性形のインキュバスとは表裏一体で、サキュバスの姿で男性から精液を採取し、それをインキュバスに変身後に女性へと注いで望まぬ妊娠をさせる存在とトマス・アクィナスは『神学大全』で記述しており[7]両性具有の同一者であるとも言われている[8]
語源サキュバスオーギュスト・ロダンの彫像

この名前は、後期ラテン語で「(不倫の相手としての)愛人、恋人」を指す「succuba」に由来している[9]。美女の姿をした魔物が狙った男を甘美な夢で誘惑し、相手がそれに屈すると人体の限界を超えた快楽を与え、絶命させるという。[10]また、ラテン語の「succubare」から来ているとの説もあり、これは性交時の体位で「下に寝る者」との意味[11]。「サキュバス」という名前は、14世紀後半に成立したものである[12]。英語のsuccubusは後期ラテン語succubaをincubusに倣って変形したものである[12]
民間伝承バーニーの浮彫ヘンリ・フランクフォート[13]などによって、モンタギュー・サマーズが「サキュバスの女王」と表現したリリスと解釈されることもある[14]バビロン第1王朝時代の有翼の彫像。ラシはリリスは人間の顔と翼を持っていると述べている[15]

ゾーハルベン・シラのアルファベットによれば、リリスアダムの最初の妻であり、後にサキュバスとなった[16][17][18]モンタギュー・サマーズによると、ヨーハン・ヴァイヤーはリリスはサキュバスを率いる王女だと考えていた[19]。リリスはアダムのもとを去り、大天使サマエルと一緒になるとエデンの園に戻ることを拒否した[17][20]

カバラによると、大天使サマエルとつがったサキュバスは4人いた。リリス、エイシェト・ゼヌニムアグラット・バット・マハラトナアマの元は悪魔の女王だった4人である[21]

サキュバスは美しく若い少女の形を取るかもしれないが、より綿密な検証では、彼女の体に鳥のような爪や蛇の尾のような異形を発見するかもしれない[22]

民間伝承はまた、サキュバスに性的挿入する行為は氷の洞窟に入るのと同じようだと記述しており、またサキュバスは、外陰部から尿やその他の体液が垂れ下がる不快感を軽減するために、男性にクンニリングスを行うように強要するとの報告がある[23]。後の民話ではサキュバスはセイレーンの形を取った。パラケルススは、メリュジーヌはサキュバスであるという見解を持っていた[24]

サキュバスに襲われた男性は、いわゆる夢精をした状態となり、夢精はサキュバスの仕業と信じられていた。

また、一部の地方では「枕元に牛乳があると、サキュバスはそれを精液と間違えて持ってゆく」と言われ、悪魔よけに小皿一杯の牛乳を枕元に置いて眠るという風習があった[25]
歴史・研究史ロヴィス・コリント聖アントワーヌの誘惑』悪魔たちはサキュバスを使って聖アントワーヌを誘惑しようとした[26]

歴史において、ハニナ・ベン・ドーサアバイエを含む司祭ラビは、人間に対するサキュバスの力を抑止しようとした[27]。しかし、全てのサキュバスが悪意を持っていたわけではない。

ウォルター・マップの『宮廷人の閑話』によると、教皇シルウェステル2世(999年 - 1003年)は、メリディアナと呼ばれるサキュバスと関係したことが彼がカトリック教会で昇進することの助けになったと言われている。死ぬ前に彼は罪を告白し、悔い改めて死んだ[28]13世紀アルベルトゥス・マグヌスは「夜間サキュバスに襲われることなく、男が眠ることはほとんどできない場所があった」と記述している[29]

シチリアルッジェーロ2世の治世下、月明りの下で水浴びをしていた若い男性は、溺れている美しい女性を救出した。


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