サイコロ
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この項目では、小道具のサイコロについて説明しています。投資指標のサイコロについては「サイコロジカルライン」をご覧ください。
サイコロ(ピップ)サイコロ(算用数字)

サイコロ(骰子、賽子)、または賽(さい)、ダイス (単:die、複:dice[1]) は主として卓上遊戯賭博等に用いる小道具で、乱数を発生させるために使うものである。

多くは正六面体で、転がりやすいように角が少し丸くなっている。各面にその面の数を示す1個から6個の小さな点が記されていて、対面の点の数のは必ず7となる。この点は“目”、または“ピップ” (pip)、“スポット” (spot)、まれに“ドット” (dot) とも呼ばれる。日本製の場合、1の面の目は赤く着色されていることが多々ある。ピップではなく算用数字が記されているものもある。

各面に表示される数も“目”と呼ばれ、サイコロを振った結果表示される数を“出目”と呼ぶ。複数のダイスを同時に振ってすべて揃った出目を“ゾロ目”と表現し、特にすべてが1の目が揃った場合のことを“ピンゾロ”と表現する。
歴史距骨アジアの古いサイコロ『シャガイ』四面サイコロで各面ラクダ、ウマ、ヒツジ、ヤギと呼ばれるサイコロゴマ(英語版)(ティートータム)。このような形式のサイコロは古代ギリシアなどから見られる。

最も原始的な形態の“サイコロ”は、宝貝や表裏を塗り分けた木の実などを投げ、それが表か裏かを見るというものである。このような投げ棒型のサイコロは古代インドで良く用いられ、近・現代においてもアメリカ・インディアンの文化などで使われている。しかしながら「サイコロ型」、つまり正六面体のサイコロも古代より出土しており、その成立は大変古いものであることが分かっている。

アジアでは、古いものではインダス文明ハラッパー遺跡などからも出土しており、中国やインドでも古くから存在していたことが知られる。これらの出土品は必ずしも立方体ではなかった。投げ棒型の他に、棒状四角柱で転がして使うもの、三角錐のものなどがあった。

こういった正六面体でないサイコロの中でも独特なのが、牛や羊などの距骨(後ろ足の踝の骨)を用いるものである。距骨は一見すると六面体にも見えるが、どちらかといえばいびつな四角柱に近い形状であり、4種の出目を無作為に得ることができる(ただし、各面の確率は明らかに不均等である)。サイコロとして遊戯に用いる様子は古代ギリシア・ローマの彫刻や絵画にも描かれている。また、距骨は古代エジプト副葬品にも見られ、他の形態と比べても古くから用いられていたことが分かる。紀元前のモンゴルの遺跡からも発見されており、地理的にも広く使われていた。このタイプのサイコロは、現在でもモンゴル語で「家畜のくるぶしの骨」を意味するシャガイ(en:shagai)という名前で使用されている。

距骨を使ったサイコロこそが現在のサイコロの起源であるとする説も唱えられている。少なくとも、以下のように複数の言語でサイコロは骨と関連付けられている。

英語では、古くは「動物の距骨」の意味の複数形「astragali」をサイコロの意でも用いていた。また現代英語でも「骨」の複数形「bones」をサイコロを指すスラングとして用いている。

中国語および日本語では「骰子」と表記するが、この「骰」は「投げる骨」の意の会意形声文字である。

正六面体のサイコロの発祥地は古代インドとも古代エジプトとも言われる。現在と同じように1の裏が6であり、反対面を足すと7になるサイコロの最古のものは、紀元前8世紀頃のアッシリア遺跡から発掘されたものである。

この他、古代ローマ時代には正二十面体のサイコロも作られており、現在イギリス大英博物館に収蔵されている。ただし、これは各面に記号を刻んだものであり遊具ではなく占い専用の道具であった可能性が高い。

古代メソポタミアの遺跡からは、4面のサイコロが出土したが、当初はゲームのコマと考えられた。

古代ギリシアでは、3個、時に2個のサイコロを使った賭博が非常に盛んに行われており、特に上流階級の酒宴(シュンポシオン、ギリシア語:συμποσιον)の席では、欠かせないものとなっていた。またギリシア神話には、パラメーデースがサイコロを発明したとの記述がある。

日本へは、奈良時代に中国から伝来した。当初は、棒状のものと正六面体のものの両方が用いられていたようである。

サイコロの目の確率は人智では予想ができないものと考えられていたため、サイコロの動きを、の意志と捉えて宗教儀式などに用いられる事があった。特にサイコロ発祥の地の一つとされているインドの神話を集録した『マハーバーラタ』にはサイコロ賭博の場面が多く登場する。これは、サイコロ賭博そのものが元々、物事の吉凶についてサイコロに託して占った結果を他者と比較した事に由来するからだとも言われている。日本でも平安時代藤原師輔親王誕生を祈願してサイコロを振った故事(『大鏡』)があり、院政全盛期に絶大な権力を誇った白河法皇が「賀茂河の水、双六の賽、山法師、是ぞわが心にかなわぬもの」(鴨川の水の流れ方、双六のサイコロの目、比叡山延暦寺僧兵、私の思い通りにならぬものはこれ)と述べたという記載が平家物語にある。また江戸時代には航海の安全を祈ってサイコロを船に祀るということが広く行われていた(船霊参照)。

中世以前のヨーロッパで使われていたサイコロは重心や形が不揃いで、理論として確率を予測することは困難だった。13世紀にヨーロッパ各地で均質なサイコロの生産が始まり、サイコロのデザインが標準化されることで、出目のパターンを予測する事が可能となった。サイコロの出目の確率を数学によって解き明かしたのは、1564年に数学者ジェロラモ・カルダーノの著した『運のゲームの本』というギャンブル指南書が最初と言われる[2]
目と重心

サイコロの目は、もとの六面体を凹ませることで作るため、目の分だけ各面から質量が取り除かれることになり、重心に偏りを生ませる。特に、最も数の差が大きい1の面と6の面が向かい合っているため、目の大きさが全て同一のサイコロは1の面側に重心が偏り、転がした際に6の面がもっとも上になりやすく、乱数発生に不都合が生じる。そのため、このことを考慮したサイコロでは、各面に刻む目の容積をその数に反比例させ、1の目が最も大きく、2はその半分、3は3分の1、…6は6分の1、という具合に徐々に小さくなるようにし、各面が失う質量を等しくすることにより、重心の偏りを避ける工夫がなされている。ただし、市販のサイコロの大部分はそこまで行わず、1の面の目だけが大きく他は同じ大きさといった程度である。@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}この場合、最も上になりやすいのは5の面である。[要出典]

また、各々の面において目の配置が点対称あるいは左右対称なのも、配置による重心の偏りをなくすための工夫である。

さらに、カジノゲームのクラップスや競技バックギャモンで使われるダイスでは、少しでも重心の偏りをなくすため、目を凹ませた後に素材と同比重の塗料(もしくは本体と同材質異色の材料)で埋めてある。また角も丸められてはいない。これらをプレシジョン・ダイス(precision dice、精密ダイス)という。

また、各目に穴を空けずに塗装するだけのサイコロもある。もちろん、このようなサイコロには重心の偏りが少ない。

逆に、わざと重心を偏らせて特定の目が出やすいようにしたものをグラサイと呼ぶ。
各国のサイコロ
中国のサイコロ上から西洋式・中国式・カジノ用のダイス

中国には紀元前よりダイスゲームに相当するものがあったが、秦始皇帝陵から出土したサイコロは14面であった。代になると18面のサイコロが使われるようになった。南北朝時代にはこのようなサイコロを「(けい)」と呼んだ[3]。ほかに棒や木板を複数投げることもあった。その後、西域から双六が伝来・流行するとともに、正六面体のサイコロが使われるようになった。漢代中国の18面ダイス(煢)

中国のサイコロの特徴として、1と4の目が赤いことがあげられる。また2の目のつき方が西洋のものと異なる。全体的に目と目の間隔が狭い。4の目が赤い理由について、もとは1だけが赤かったのを、玄宗皇帝楊貴妃とダイスゲームをしていて、4の目で勝てたのを喜んで、4を赤く塗らせたという伝説がある[4]が、真偽不明である。同様の話が平治物語(13世紀)にも見えるが、こちらでは3と4の目を赤くしたとある。
朝鮮のサイコロ新羅時代の14面ダイス(酒令具・複製品)

朝鮮のサイコロは中国の影響が強く、伝統的なサイコロはやはり1と4の目が赤い。中国の煢と同様の、新羅時代の14面(切頂八面体を変形して各面の面積をほぼ同じにした形状で、正方形6面、六角形8面から成る)のサイコロが慶州市の雁鴨池から出土している。酒令用なので酒令具と呼ばれ、各目にはその目が出たときにする行為(罰ゲーム)が記されている。この酒令具の出土品(本物)は水分を取り除く保存処理のためオーブンに入れていたところ、温度が高すぎて燃えてしまったため現存しておらず、複製品だけが現存している[5]


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