サイエンスコミュニケーション
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ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンにおけるアウトリーチ活動。

サイエンス・コミュニケーション(: science communication)とは、パブリック・コミュニケーションの一種で、非専門家に対して科学的なトピックを伝えることを指す。科学コミュニケーション、科学技術コミュニケーションとも呼ばれる。多くは職業的な科学者が主体となる(アウトリーチ活動や科学普及活動と呼ばれる)が、現在ではそれ自体が一つの職業分野となっている。サイエンス・コミュニケーションの形としては、科学博覧会、科学ジャーナリズム、科学政策(英語版)、メディア制作などがある。また学術雑誌などを通した科学者同士のコミュニケーションや、科学者と非専門家の間のコミュニケーションを指すこともある。後者は特に、科学を巡る公の討論や市民科学活動の中で見られる。日本のサイエンス・コミュニケーションについては、さまざまな団体が活動を行っている。

科学研究科学教育への支援を呼び込むために行われる場合もあれば、政治的・倫理的な問題に関する意思決定のための情報を周知させるのが目的の場合もある。近年では、単純に科学的な研究成果を伝えるより、科学の方法や過程を伝えることを重視する傾向が強くなってきている。これが特に重要となるのは、科学的方法の制約を受けないことから容易に流布する科学的俗説に対処するときである[1][2][3][4]

サイエンス・コミュニケーションについての考え方は時代とともに変遷を経てきた。科学者同士が研究について公に交流することをサイエンス・コミュニケーションに含めるならば、その源流は17世紀のイギリスで最初の科学学会王立協会)が成立したことに求められる[5]。科学者コミュニティが公衆に科学を伝える動きの先鞭をつけたのは、1831年に創設された英国科学振興協会である[6]。社会や経済における科学技術の役割が拡大するとともに、一般市民を対象とした理解増進活動の重要性は不動のものとなった。しかし、20世紀の後半から、核技術やBSE問題遺伝子組み換え食品問題などをきっかけに一般市民の科学に対する不信が顕在化され始め、トップダウン的な知識の伝達の有効性に疑問が寄せられるようになった。現在では、多様なステークホルダーによる科学への関与や双方向的な対話を基本理念として、コンセンサス会議サイエンスカフェのような新たな形式のサイエンス・コミュニケーションが実施されている[7]
動機

職業訓練の需要が存在することもあって、サイエンス・コミュニケーションは一つの学問分野となっている。専門学術誌には Public Understanding of Science や Science Communication がある。研究者の多くは科学技術社会論に依拠しているが、科学史や一般的なメディア研究心理学社会学が入り口となることも多い。学問分野としての成長を受けて、応用的・理論的なサイエンス・コミュニケーション研究を専門に行う学部を設立した大学もある。その一例はウィスコンシン大学マディソン校ライフサイエンス・コミュニケーション学部である。サイエンス・コミュニケーションの分野には、農業従事者とそれ以外が学問的・職業的な観点から農業について交流する農業コミュニケーション(英語版)や、ヘルス・コミュニケーション(英語版)などがある。

ジェフリー・トーマスとジョン・デュラントは1987年の著書で科学の公衆理解(英語版)[8]、すなわち科学リテラシーを向上させるよう訴え、様々な根拠を提示した。公衆が今以上に科学を享受するようになれば、科学研究費の水準が向上し、法規制がより進歩的になり、訓練された科学者の人材が増加するとされた。また、訓練された技術者や科学者が増えることで経済的な国家競争力が強められる可能性があるという[1]。科学は個人にとっても有益となりうる。科学そのものが魅力を持つこともあり、たとえばポピュラーサイエンスサイエンスフィクションではその側面が利用される。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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