サアロア族
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サアロア族(沙阿魯阿族)
ラアロア族(拉阿魯哇族)Hla'alua
[?a?alua]
聖貝祭
総人口
約422人(2020年9月時点)[1]
居住地域
台湾高雄市
言語
ブヌン語サアロア語台湾語北京語日本語
宗教
キリスト教アニミズムシャーマニズム
関連する民族
カナカナブ族ツォウ族ブヌン族

サアロア族(サアロアぞく、Saaroa)は、台湾原住民の一つ。ラアロア族(Hla'alua)とも呼ばれる。サアロア族という名称は沙阿魯阿族、ラアロア族という名称は拉阿魯哇族と漢字で表記される。現在、台湾(中華民国)政府の原住民族委員会は公式的で公的な民族名として、拉阿魯哇族(Hla'alua)と定めている。

サアロア族は主に高雄市桃源区にある高中里と桃源里、及び那瑪夏区にある瑪雅里に分布し、独自の言語のサアロア語や文化や慣習など有す。以前はツォウ族と見做されて、北ツォウ族のツォウ族(鄒族)と南ツォウ族のサアロア族とカナカナブ族(?那?那富族)、二分され、このうちの南ツォウ族と呼ばれていたのが、サアロア族もカナカナブ族も、それぞれに2014年に独立した台湾原住民族として台湾(中華民国)政府に認定された。

サアロア族の男性

サアロア族の男性

サアロア族の婦女子たち

日本統治時代の学童の制服姿のサアロア族の子供たち

4つの集落と近隣民族との関係

昔、サアロア族は排剪社(Paiciana)、美?社(Vilangan?)、塔?社(Tararahluvu またはTalicia)、雁爾社(HlihlalaまたはKal?v?nga)の、大きく4つの集落に分かれていた。それに隣にある大武?社、霄里社、芒仔芒社と茄拔社、この四つの集落に居住していた平埔族・タイボアン族(大武?族)の「四社熟番」に対し、「四社生番」という呼ばれ方をしていた。また、山の下にあるルカイ族(魯凱族)の茂林(Teldrika)、万山('Oponoho)、多納(Kongadavane)、この三つ集落の「下三社番」に対し、「頂四社」と「上四社番」という呼称もあった。

塔?社のサアロア族は、交通が不便なため、排剪社に移住して合併した。

現在のサアロア族の4集落の分布:
排剪社(Paiciana):高雄市桃源区高中里の草水部落、高中部落である。

美?社(Vilangan?):高雄市桃源区高中里の美蘭部落である。

雁爾社(Hlihlala):高雄市桃源区桃源里の四社部落である。

那爾瓦社(Na'?vuana):高雄市那瑪夏区里の瑪雅部落である。近代、美?社のサアロア族が移住してきたケースである。

日本統治時代の1930年代より、台湾総督府ブヌン族の集団移住政策を推し進め、この地域にも断続的にブヌン族(布農族)の移入が続いた。ブヌン族と婚姻関係を結び、言葉も人口の多いブヌン語になり、サアロア族は一度ブヌン族化の危機に晒されるようになった。
聖貝祭2021年美蘭部落の聖貝祭。祭司はお酒で聖なる貝を洗っている。

聖貝祭(Miatungusu)はサアロア族特有の祭儀であり、第2次世界大戦後は1951年に一回しか行わなかった。1993年にまた復活したが、時代に合わせて式次第は変化した。本来は2年或いは3年に一度、農産物を収穫後に行われる祭りだった。現在では伝統や精神を忘れないよう、毎年2月下旬または3月上旬に行われるようになった。昔、祭りの期間は各部落は6日間連続して行ったが、現在はほぼ1日だけになり、「濃縮」されている。祭場と日程は2つある。1日目は桃源里四社部落祭場で雁爾社の聖貝祭を先に行ってから、2日目は高中里美蘭部落祭場で美?社と排剪社の聖貝祭を続いて行う。サアロア族にとって最大の宗教儀式である。

昔々、サアロア族の祖先は東方にある「Hlas?nga」と呼ばれる土地に、「kavurua」と呼ばれる小人族と一緒に暮らしていた。小人族kavuruaは、サアロア族に色々な知識を伝授してくれる存在であり、両者は仲良く暮らしていた。だがサアロア族の人口が増加するにつれ、「小人族の生活の妨げになってはいけない」との考えから、サアロア族はやむを得ず、東方の地を離れることにした。小人族は別れを惜しみ、自らが大切にしていた「聖なる貝」(takiar?)をサアロア族に授けた。12個ある「聖なる貝」には、それぞれ別々の神様が宿るとされ、サアロア族を守る貝に感謝の気持ちを込め、開催する祭りは聖貝祭(Miatungusu)である。

12名聖なる貝の神様
勇猛の神様 Pava’asu勇敢な戦士になれるように
狩猟の神様 Paumala Papa’a捕獲が上手くいくように
健康の神様 Pamahlat?ra無病息災
食べ物の神様 Paumala A’an?豊かな食べ物が食べられるように
魔除けの神様 Hlalang? Ihlicu悪霊が来なく、憑依できないように
勤勉の神様 Patama’iiar?勤勉に働けるように
無事の神様 Pamavahla?va?無事になれるように
怠け癖を直す神様 Kupamasava?やる気満々になれるように
状元の神様 Paumala Ngahla必勝祈願
守りの神様 Pamaia Tuhluhlu部族の人を守っている
早く賢い神様 Papac?c? P?ng?聡明になれるように
風雨の神様Sipakini Varat? Hlauhlahl?五風十雨になれるように

通常は頭目(rahli)が保管し、 小さな水甕(kapua)の中に安置し、家の後ろの土中に埋めている。不思議なことに、聖なる貝は魔術を使い、甕の中から「外出」し、故地である東方の地に里帰りするという。しかし、聖貝祭の10日前、 祭典の準備が始まる時に頭目が水甕を調べれば、聖なる貝はちゃんと戻ってきているという。

サアロア族のうち、美?社の先祖が最後に東方の地から離れた。そのため、小人族に聖なる貝を授けられたのは彼らのみであり、聖なる貝は美?社のみに伝えられ、祀られていた。排剪社と雁爾社の者はそれを羨ましがり、こっそり数個の貝を盗み、美?社を真似て聖貝祭を開催した。そのため排剪社と雁爾社の聖貝祭では、公開的に聖なる貝を見せない、聖なる貝を投げ、拾う儀式もない。

かつてある老人は聖貝祭を面倒くさがり、布切れで聖なる貝を包んで川に捨てた。だが聖なる貝は流されないばかりか、川の流をも変えてしまった。老人は驚き、聖なる貝への不敬を恥じたということである。

伝統的な聖貝祭(Miatungusu)6日間の日程:
1日目
mariara’uhla 神様を迎える祭儀:夜明け前、男性陣は集会所(tapuhlaihlia)に集合する。祭司と助手祭司の2人は集会所の外で祖霊に酒を捧げ、神迎え(makuakuaihlicu)を執り行ってから、集会所の中に戻る。miavavutau 甕開け:初祭(malalalang?)がここから始まる。助手祭司は酒の甕の蓋を開け、一方、祭司は獣肉を1枚ずつ切る。男性陣は初祭の歌(lualikihli)を唱える。pitatamu 灌祭:祭司は人差し指を酒に浸し、酒の滴を振り撒いて「tamu'u!」(ご先祖様!)と呼ばわる。mailiili 祭司肉嘗祭:祭司は肉を持ち、助手祭司に食べさせるふりをして、自分が肉を食べる。そして、祭司は肉を持ち、自分が肉を食べるふりをして、助手祭司に食べさせる。これを4回繰り返す。paruacuru 男衆肉嘗:肉を配り、男性陣が肉を頂く。pialakngahlu 衆人礼酒飲み:男性陣は順番に共用のコップで酒を飲む。tumahliasasangaru 慰労:歌い踊る。司祭はリーダーとして皆を率い。男性陣は団結を表すため、黄藤の茎で作った輪を持って円陣を組み、躍りながら、palitavatavali(人数を数える歌)やmiatungusu(聖貝祭)の歌を唄う。祭司は若い世代に、サアロア族生活圏の地名を教えあげる。先祖代々受け継がれてくれた土地を忘れないようにするためである。puasipi 火付け:囲炉裏に炭火を熾す。makinikuli’i 豊猟祈願:木の摩擦熱による発火法で火種を作り、豊猟を祈願する。
2日目
祭司と助手祭司は、一世帯ごとに、薪や油や米など祭りの開催に必要な物を徴収する。papaci taruram?al?isa(papaci taruram?)猪を刺し殺す祭:頭目(rahli)家族出身の男の子は、集会所の屋根の上に座り(putaliri)。男性は黄藤の茎で作った輪を持って円陣を組み、躍りながら歌っている時、頭目が男の子を屋根から背負って下げ、男の子は弓で矢を射って、側にある男性2人は槍で猪を刺し殺す。続いてtaruramu Hlas?ngaという神様に捧げる歌を唄う。猪の頭部を切断し、集会所の中にある大黒柱に吊り、神様に捧げる(ungu'umaungu/maunguvungu'u tapuhlaihlia)。papaci taruram?al?isaが終了する。女性はそれぞれ持参した竹切れを刺殺された猪の血に浸した上で、竹筒に挿す。これは出席を表すもので、ここで女性陣は祭場に入り、祭りへの参加を許される。
3日目
maasuhlin takiar? 聖なる貝を酒に浸す:祭司は聖なる貝を小さな水甕から取り出す(ruapuhlu takiar?)。そして、聖なる貝を酒に浸して洗い、その色の変化を観察し、赤色に変化したら貝の神様が酔い、満足しているという。祭司は未婚の少女と共に、赤い生地に包まれた12個の聖なる貝を投げ出し、男性は一斉に押しかけ、聖なる貝を奪い合う。拾えたら幸運が授かるという。未婚の少女は一つ一つの輪を男性に配り、男性は人と人の間に、輪を持って繋がり、踊り唄う。続いて女性も加わり皆で踊り唄う。祭司はアカザ(kuar?)の実を持ち、祈ってから一人ずつに配り、頭の上に載せ、アカザで無病息災を願う(maakuar?)。
4日目
助手祭司は糯米の飯と酒を祭司に差し出し、祭司に食べさせる。kavuvuru 戦の祭:男性は首狩り(maruvuungu)をする。首を持ち帰り、cak?ar?という茅で建てた低い祠に安置し、首の持ち主だった者の魂が不運を持ち来ないように祭司は祈る。男性は一人ずつ、首に指で酒を付け、掛け、「tamu'u!」と呼び、首に敬意を表す。男性陣は囲んで弓を持ち、踊りながら、musuahlaという戦果を報告する歌を唄う。?現代はもちろん首狩りの慣習は無い。代わりにプラスチック製の首を使う。
5日目
paria’i ’ihlicu 悪霊を追い払う:火矢を四方に射る。女性は集会所の囲炉裏から取り出した炭火の粉を撒く。男性は弓で一軒ずつの家の入り口の柱や壁を叩いて魔除けをする。
6日目
takuahluahlupu 団体狩猟:男性は皆で山に行き、猟をする。獲物の有り無しを問わず早めに帰り、女性が用意した餅や酒など頂く。狩った動物の頭は全て慰謝料として祭司に贈り、肝臓は聖なる貝の神様に捧げる。?現代のMiatungusuは過疎化と近代化のため、かなり簡略化されている。

聖貝祭で守るべき忌みと規則:
サアロア族の集会所(tapuhlaihlia)は男性限定、女性禁制。前にある祭場で聖貝祭を行う。茅葺の高床式建築で、邪気払いとして屋根にセッコク(石斛、着生植物、ラン科、ラアロア語:vahlituru)を飾る、最も神聖的な空間である。カラムシ(?rang?)は御守り(hlalang?)として屋内に掛けられる。教育や会議や祖霊迎えなどはここの中で行なう。

儀式中、大騒ぎや無駄話、くしゃみ放屁の禁止。

サアロア族は全員参加すべきである。欠席は禁じる。

男性集会所の囲炉裏にある火を消してはいけない。

飼っている動物は、祭場に入れない。

身に着けている帽子や衣装や飾り物などが地に落ちると命を失う。

子供は勝手に祭場に入れない。

聖貝祭の期間、魚を食用するのは禁止。仮に魚を食せば、蓄えた食料は川の流れのように流れて消えてしまう。

魚獲祭

サアロア族の伝統で、居住しているエリアにある川は、氏族集団によって管理されている。例えば、?濃渓という川は、Tumamalikisas?(漢語苗字:余)、Hlaiputana(漢語苗字:余)、Iiang?ana(漢語苗字:ケ)、Tumahlahlas?nga(漢語苗字:廖)この4つの氏族集団に管理され、一方、炳才渓はSalapuana(漢語苗字:石)、Savang?ana(漢語苗字:游)、Mu’uana(漢語苗字:尤)この3つの氏族集団に管理される。


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