ゴンドール
美しきニムロス、白の木の紋章[T 1]
J・R・R・トールキンの伝説体系の舞台
別名南方王国
種類亡命したヌーメノーレアンの南方王国
支配者ゴンドールの王、ゴンドールの執政
主な場所中つ国北西部
首都オスギリアス、のちミナス・ティリス
建国者イシルドゥルとアナーリオン
ゴンドール(Gondor)は、J・R・R・トールキンが創作した中つ国を舞台とする伝説体系に登場する架空の王国であり、第三紀末の中つ国における西方人のもっとも偉大な国家とされる。『指輪物語』の第三部「王の帰還」では、ゴンドールにおける指輪戦争での出来事と戦後の王国の復古が大きく関わってくる。王国の歴史は、同「追補編」で概説されている。
ゴンドールは、ヌーメノールの島の崩壊を逃れたイシルドゥルとアナーリオンの兄弟によって建国され、北方のアルノールとならぶ南方王国、西方人の最後の本拠地として機能した。初期の拡大の時代を過ぎると、ゴンドールは第三紀を下るにつれて衰退の時代に入り、内戦や冥王サウロンの同盟者との戦いを通してしだいに弱体化してゆく。やがて指輪戦争の頃にはゴンドールの玉座は空位となっていたが、諸侯は王権を代行する執政に従うことで不在の王を尊重し続けていた。ゴンドールの覇権と繁栄は、サウロンの最終的な敗北とアラゴルンの戴冠によって取り戻されることとなる。
ゴンドールの歴史と地理は、トールキンが初期のコンセプトをベースとして『指輪物語』を執筆しその伝説体系を拡張してゆくなかで生み出されていったものである。評論家は、教養があるが生気に乏しいゴンドールの執政と、トールキンが好んだアングロ・サクソン人をモデルとした簡素ながら活発なローハンの指導者たちとの対比を特筆する。また、研究者はノルマン人、古代ローマ、ヴァイキング、ゴート族、ランゴバルド人、そしてビザンツ帝国といった現実の歴史上の存在とゴンドールとの相似に注目している。 トールキンは、「ゴンドール」という国名をシンダール語で「石の国」を意味するように意図した[T 2][T 3]。これは『指輪物語』作中で、ロヒルリムのなかでゴンドールが「ストニングランド」と呼ばれる点に反映されている[T 4]。 トールキンの初期の執筆では、これはゴンドール人の高度に発達した石造建築に対する、素朴な隣人たちとの対比を示すものとされていた[T 5]。この見方は、ドルーエダイン
作中の設定
語源
ゴンドールは「南方王国(South-kingdom、Southern Realm)」とも呼ばれ、アルノールとともにヌーメノーレアン(ヌーメノール人、ドゥーネダイン)の亡国の民の王国として並び称される。研究者ウェイン・G・ハモンド
とクリスティナ・スカルは、ゴンドール(Gondor)をクウェンヤに翻訳すればオンドノーレ(Ondonore)になるであろうと推測している[1]。モルドールのオークは、ゴンドールの国人を「タルク(Tark)」(クウェンヤで「上の人」すなわちヌーメノーレアンを意味する「タルキル(tarkil)」に由来する[T 8])と呼んだ[T 9]。ゴンドールの地理は、J・R・R・トールキンのスケッチに基づく息子クリストファ・トールキンによる『指輪物語』収録の地図に示されているほか、遺稿The Rivers and Beacon-Hills of Gondorや、「キリオンとエオル」(『終わらざりし物語』収録)、そして『指輪物語』作中で解説されている。ゴンドールは中つ国の西方、アンファラスと[T 10][T 11]ベルファラス湾の北岸[T 12]に位置し、肥沃[T 13]で人口の多い[T 11]レベンニンには大河アンドゥインの三角州に近いペラルギルの大港がおかれ[T 14]、北方では白の山脈(シンダリンではエレド・ニムライス、「白い角の山脈」)までを国土としている。アンドゥインの河口近くには、トルファラスの島がある[T 15]。
ゴンドールの北西方にはアルノールがある。ゴンドールは北方で荒れ地の国とローハン、北東はリューン、東方は大河アンドゥインを越えたイシリエンの先にモルドール、南方は砂漠の先にハラドの北辺と境を接する。西方は大海である[T 16]。