「コールサイン」はこの項目へ転送されています。その他の用法については「コールサイン (曖昧さ回避)」をご覧ください。
放送や無線通信において、呼出符号(よびだしふごう)またはコールサインとは、無線局を一意に識別するために割り当てられた識別子である。コールサインは、一般には政府などの公的機関によって正式に割り当てられるものであるが、無線局の身元を隠すために、個人や組織が非公式なコールサインを名乗ったり、コールサインを暗号化することもある。
コールサインを一意な識別子として使用するのは、陸上の商用有線電信から始まったものである。全ての電信局をつなぐ電信線は1つしかなかったので、電報を送るときには、送信相手先を識別する方法が必要となった。送信時間の節約のために、2文字の識別子が採用された。この方式は無線電信においても採用された。電信会社は当初、海岸に設置した地上局と船に設置した海上局のそれぞれに2文字の識別子を割り当てた。これでは世界的に一意にならないため、後に1文字の企業識別子(例えばマルコーニ社は「M」)が追加された。複数の国の複数の企業が運営する無線局を迅速に識別する必要性から、1912年までに、国際基準が必要となった。これが今日ITUプレフィックスとして知られているもので、ITUプレフィックスが国ごとに割り当てられ、各国は割り当てられたITUプレフィックスの範囲で、国内で一意に割り当てる仕組みとなった[1]。
国際呼出符字列の分配詳細は「世界のコールサイン割り当て一覧」を参照
無線通信規則により、国際公衆通信を行う無線局やアマチュア局など一定の無線局は、呼出符号を持たなければ(指定されなければ)ならない。これは、世界でたったひとつの呼出符号であり、同一の呼出符号が被ることはない。
このため、国際電気通信連合(ITU)[注 1]は、世界無線通信会議(WRC)[注 2]の決定を経て加盟国(国際機関を含む)に3文字の英数字の国際呼出符字列を分配している。
各国は、この符字列の下で自国の無線局に呼出符号を指定する。これにより、呼出符号の最初の1文字ないし3文字により国を識別することができ、この部分はプリフィックス(接頭辞)と呼ばれる。
主な国の分配例
日本 - 「JA - JS」、「7J - 7N」、「8J - 8N」
アメリカ合衆国 - 「K」、「W」、「N」、並びに「AA - AL」
中華人民共和国 - 「B」、「XS」並びに「3H-3U」、「VR」(香港特別行政区)、「XX」(マカオ特別行政区)
大韓民国 - 「DS-DT」、「D7-D9」、「HL」並びに「6K-6NB」
朝鮮民主主義人民共和国 - 「HM」並びに「P5-P9」
オーストラリア - 「AX」、「VH - VN」、「VK」並びに「VZ」
カナダ - 「CF-CK」、「CY-CZ」、「VA-VG」、「VE」、「VO」、「VX-VY」並びに「XJ-XO」
ドイツ - 「DA-DR」
インド - 「AT-AW」、「VT-VW」並びに「8T - 8Y」
ロシア - 「R」並びに「UA-UI」
フランス - 「F」、「HW-HY」、「TH」、「TK」、「TM」、「TO-TQ」、「TV-TX」
イギリス - 「G」、「M」、「VS」、「ZB-ZJ」、「ZN-ZO」、「ZQ」並びに「2」
ドイツ帝国と大日本帝国は、第二次世界大戦以前は、1文字の国籍識別「D」と「J」とをそれぞれ有していた。しかし、1947年のアトランティックシティ会議で、敗北した枢軸国であったため、国籍符字列(および使用周波数)の一部(日本はT以後、ドイツはL以後)を召し上げられ、現在の2文字に変更させられた。 詳しくは#DとJの分配先を参照。 一方、イタリアは連合国と休戦の後、連合国に加わったため[注 3]、これら召し上げの対象とはならず、戦後も「I」の1文字を継続使用できている。 「D」「J」の分配先は以下のとおり。 多くの国で放送局にコールサインが割り当てられている。各国では、放送局のコールサインにいくつかの慣行がある。 北米の放送局は、一般に、国際シリーズのコールサインを使用する。米国では、最初の文字は、ミシシッピ川以西の放送局には「K」、以東の放送局には「W」が割り当てられる。ミシシッピ川以東の歴史的な例外として、フィラデルフィアのKYWとピッツバーグのKDKAがあり、以西の例外にはカンザスシティのWHBがある。新規開設の放送局に対しては4文字のコールサインが割り当てられるが、かつては3文字のコールサインが割り当てられていた。米国のラジオ局は、1時間ごとと放送開始・終了時にコールサインをアナウンスしている。 カナダでは、公的放送であるカナダ放送協会(CBC)がプレフィックス「CB」を使用している。民間放送局は、「CF」および「CH」から「CK」までのプレフィックスを使用している。ニューファンドランド州政府によってセントジョンズに免許された4つの放送局は、元の「VO」で始まるコールサインを保持している。メキシコでは、AMラジオ局は「XE」で始まるコールサインを使用し、FMラジオやテレビ局の大部分は「XH」で始まるコールサインを使用する。放送局のコールサインは通常、4文字から5文字のアルファベットと、該当する場合は「-FM」、「-TV」、「-TDT」のサフィックス(接尾辞)からなる。 南米では、かつてはラジオやテレビ局を識別するのにコールサインを使っていた。いくつかの放送局は、依然として1日に数回、自局のコールサインを放送しているが、この慣習は非常にまれである。アルゼンチンの放送局のコールサインは、2文字から3文字のアルファベット後に複数の数字が続き、2番目と3番目の文字が地域を示す。ブラジルでは、ラジオ局とテレビ局は、「ZY」に続く3文字目のアルファベットおよび3桁の数字で識別される。「ZYA」と「ZYB」はテレビ局に、「ZYI」、「ZYJ」、「ZYL」、「ZYK」はAM局に、「ZYG」は短波放送局に、「ZYC」、「ZYD」、「ZYM」、「ZYU」はFM局に割り当てられる。 オーストラリアでは、オーストラリア通信メディア局によって各放送局に固有のものが割り当てられるが、コールサインの取得は任意である。 ほとんどのヨーロッパやアジアの国では、放送局の識別にコールサインではなく社名が使われるが、日本、韓国、インドネシア、フィリピン、台湾には放送局のコールサインシステムがある。日本では、放送局には「JO」で始まるコールサインが割り当てられている。なお、戦前には朝鮮の放送局には「JB」、台湾の放送局には「JF」、関東州の放送局には「JQ」を割り当てていた。実際の割り当てについては日本の放送局所の呼出符号も参照。 英国は、米国の意味ではコールサインを持たないが、放送局は自分のトレードマークのコールサインを最大6ワードまで選択することができる。 アマチュア無線のコールサインは、国際シリーズに属し、通常、1文字または2文字のプレフィックス(所属国を表す)、数字(地域(コールエリア)を表すほか、免許のクラスや旅行者のための臨時免許を示すために使用される場合がある)、1-4文字のサフィックスからなる。
なお、台湾(中華民国)では、「B」のうちの「BM - BQ」及び「BU - BX」の呼出符字列が使用されているが、これはITUから正式に割り当てられたものではない。ITUの無線通信規則(RR) 付属文書42(Appendix 42)によると、これらの呼出符字列は、中華人民共和国に割り当てられている[2]。
戦前の呼出符号
DとJの分配先
D
1947年
DA - DM ドイツ
DN - DQ ベルギー領コンゴ
DR - DT 旧ソ連・ベラルーシ
DU - DZ フィリピン
1959年
DA - DT ドイツ
DU - DZ フィリピン
1979年以降、現在
DA - DR 西ドイツを経て、ドイツ
DS - DT 韓国、
DU - DZ フィリピン
J
1947年
JA - JS 日本
JT - JV モンゴル
JW - JX ノルウェー
JY - JZ 未割り当て
1959年以降、現在
JA - JS 日本
JT - JV モンゴル
JW - JX ノルウェー
JY ヨルダン
JZ オランダ領ニューギニア(西イリアン)を経て、インドネシア
放送1940年に発行されたWWVのQSLカード詳細は「en:Broadcast call signs
アマチュア無線詳細は「en:Amateur radio call signs」を参照米国の全ての州で、アマチュア無線家が所有する自動車に対してコールサインが入ったナンバープレートが発行されている。写真はカリフォルニア州のもの。