「シミュレーション」のその他の用法については「シミュレーション (曖昧さ回避)」をご覧ください。
シミュレーション(英: simulation)は、何らかのシステムの挙動を、それとほぼ同じ法則に支配される他のシステムや計算によって模擬すること[1][2]。simulationには「模擬実験」や「模擬訓練」という意味もある[3]。
なお、「シュミレーション」は「シミュレーション」の語頭の2音を音位転換させたことによって生じた語形であり、誤りである[注 1]。また、同化によって「シミレーション」と発音されることがある。「シミュレイション」と表記することもまれにある。コンピュータを用いたエンジンの燃焼室内のガスの流れのシミュレーション
概要モデルを立てるプロセス。実験、シミュレーション、理論の相互作用の説明。
ラテン語の 「similis シミリス(似ている)」「simulare シミュラーレ(模倣する)」「simulat(真似た、コピーした)」といった用語から生まれた概念である。
シミュレーションは、対象となるシステムで働いている法則を推定・抽出し、それを真似るようにして組み込んだモデル、模型、コンピュータプログラムなどを用いて行われる。[2][5]
現実のシステムを動かしてその挙動や結果を確かめることが困難、不可能、または危険である場合にシミュレーションが用いられる。[2][5]
例えば、社会現象などにおける問題の解決方法を探る時など、(悪影響があるので実社会ではとりあえず試せないので)実際の社会と似た状況を数式などで作りだし、コンピュータ等を用いて模擬的に動かし、その特性などを把握するのに用いる[6]。例えば風洞実験、水槽実験で働いている法則を数学的なモデルに置き換えて行う[6][2][5][7][8]。また例えば経営に関する様々な事象を数学的なモデルに置き換えてみて、様々な数値を入力したり変化させることで、結果を推定する[6][9]。
シミュレーションのための装置やプログラムをシミュレータ (英: simulator) と言う[10]。ただし、きわめて単純なシステムを模倣するためのシミュレーション、特に単純化されたモデルを用いる場合などは(とりあえず)紙と鉛筆(やホワイトボードとペン)だけを用いて手作業で行われるものもある。
対象となるシステムにおいて働いている法則をどれほど忠実に模倣するかによって、シミュレーションの精度は異なる。シミュレーションの質は、シミューレーションを設計する者の技量や、どの程度まで法則を見抜き、どこまでそれらの法則を模倣させたか、ということによって異なるのである。現実の法則を十分に模倣していないシミュレーションは、現実とは異なった挙動を示す。
また、コンピュータを用いて連続現象を離散化した積算によるシミュレーションは必ず誤差が生じ、その誤差は蓄積する[11][12]。従ってコンピュータによるシミュレーションによって良好な結果を得る為には、モデル化による誤差見積もりが重要となる。モデル化によるシミュレーションは、現象についてどの程度正確に真似るかによって計算量を調整することが可能であり、現象についての完全な知識は必要とされないなどのメリットがある。
システムのモデル化を行わず、完全な模倣を目的とする場合は、シミュレーションと言わずエミュレーションということもある[13]。エミュレーションは、模倣したいシステムにおいて、予測できる現象より予測できない現象が支配的である場合などに使われる。
目的・用途模型を用いた、地震時の建物の挙動のシミュレーション
建築物や自動車などの製品の機構に内在する欠陥(負荷や強度など)を模型やコンピュータによって探して取り除く。
ビジネスにおいて客層や商品、時間帯、店舗等の調査結果をシミュレーションに取り入れることで、効率的な販売をする。
災害の発生や規模の予知。地震、[14]津波、[15][16]火災などの自然災害や、原子力発電所のメルトダウンや航空機事故などの人災などの防災。
自動車におけるドライブシミュレータや航空機におけるフライトシミュレータ等、各種の操縦、操作を学ぶ手立てとしての利用。いろいろな状況、特に実機では危険を伴うような場面を体験することが可能となる。[17][18][19][20][21][22]
シミュレーションゲームではシミュレーションを娯楽として行う。ボードやコマやカードを使い事象を再現するようなルールに基づいてプレイするものと、コンピュータを使って事象の再現を行わせるものとがある。ウォーゲーム、戦略ゲーム、経営ゲームなど[23][24][25]。前項のドライブ、フライトシミュレータはレース、戦闘などの形でゲームとしても存在する。
その他、天気予報や人口の推移、予測、分析、医療の分野でも広く使われている。[26][27][28][29][30]