コンデンサ
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この項目では、電気素子について説明しています。熱交換のための機器については「復水器」を、実験器具については「冷却器」をご覧ください。

コンデンサ
種類受動素子
動作原理誘電分極
発明エヴァルト・ゲオルク・フォン・クライスト
電気用図記号

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典型的なリード形電解コンデンサ

コンデンサ(: Kondensator、: capacitor)は、電気電荷)を蓄えたり、放出したりする電子部品である。蓄電器[1]、キャパシタとも呼ばれる。
概要

コンデンサの特性を表す基本的な数値は、静電容量(キャパシタンス/英: capacitance)である。静電容量の値は、一般に国際単位系(SI)のファラド(記号: F)を用いて表される。コンデンサの機能はバッテリーと似ているが、コンデンサの静電容量はマイクロファラド(μF = 10−6F)やピコファラド(pF = 10−12F)のオーダーのものが多く、ごくわずかな量の電荷しか蓄えることしかできない。代わりに、応答速度が早いため、瞬間的な電流の変化(例えば、雷サージなど)に対する応答を制御する場合や、交流電流を変化させたい場合などに用いられる。ただし、電気二重層コンデンサのような、従来のコンデンサと比較すると桁違いに大きな静電容量をもつものも存在し、それらは二次電池として利用することが可能である。逆に即応度や耐久性が飛躍的に向上した次世代型二次電池全固体電池はコンデンサとしても優秀な働きを示す。

その他の特性としては印加できる電圧(耐圧)が挙げられる。耐圧は用途に応じ、微小電力機器用の2.5ボルト程度のものから、高電圧発生用などに使われる10キロボルト程度のものなど、様々である。また、理想的な特性からどの程度外れているかを示す、等価回路における、直列の誘導性を示す値[注釈 1]と直列並列それぞれの抵抗値[注釈 2]などがある。
歴史

1745年10月に後ポメラニア(英語版)出身のエヴァルト・ゲオルク・フォン・クライストは、で持ったガラスの中に満たされた水に高圧静電発電機導線でつなぐと電荷が蓄えられる事を発見した[2]。クライストの手と瓶の中の水が導電体として働き、かつガラス瓶が誘電体として働いたのである。クライストは、発電機を外したあとに、導線に触ると激痛を伴う火花が起きることを見出した。彼はこのことを「フランス王国の二撃目は受けたくない」と手紙で述懐している[3]。3ヶ月後、オランダの物理学者ピーテル・ファン・ミュッセンブルークにより同様なコンデンサが発明され、クライストの物より早く発表されたことで、彼が勤務していたライデン大学に因んでライデン瓶と名付けられた。グダニスクのダニエル・グラートは電荷容量を増やすため、初めていくつかの瓶を並列に結合し"砲兵中隊"を作った。

ベンジャミン・フランクリンはライデン瓶の電荷を蓄える効果を増しているのが想定されていた手と水ではなく、ガラスである事を追試し証明した。彼はまた化学電池の組に対してバッテリーの言葉を当てはめた[4][5][6]

このようなライデン瓶を板ガラスに対向させたより強力なコンデンサは、無線電気通信の発明により規格化された容量が要求され、また高周波への移行によりインダクタンスの低いコンデンサが必要になるまで、1900年頃まで専ら使われ続けた。コンデンサの小型化は金属箔の間に油を浸した紙のような柔軟な誘電体膜を挟み、それを巻いたり折りたたんだりして小さな外周器に入れたもの、すなわち油浸紙コンデンサの製造から始まった[要出典]。コンデンサの名は通常の容量球と比べ、より高い密度の電荷を蓄えられるという装置の性能から1782年アレッサンドロ・ボルタが初めて凝集器の言葉を当てはめた論文を発表した事に由来する[7]
物理学的説明模式図

まずは電磁気学に基づく理論的な観点から説明を行い、工学的(電気・電子工学)な観点からの解説や応用は後述する。
静電容量

周囲と電気的に絶縁された導体に電圧を印加すると内部に電荷の偏りが生じる。この現象は静電誘導と呼ばれる。理想的な状況では重ね合わせの原理から印加する電圧と偏る電荷には比例関係がある。印加する電圧を V、偏る電荷を Q としたとき、この関係は Q = C V {\displaystyle Q=CV}

と表される。このときの比例係数 C は静電容量と呼ばれる。静電容量は導体の幾何学的な形状と導体の周囲の絶縁体により決まる。
平行板コンデンサ電極板間に符号の異なる電荷が充電されると電極板間に電界が生じる。 この電界は単純な平行板コンデンサにおいて電位差V = E dを生み出す。

電気的に絶縁された導体が近接していると、一方に正の電荷が、他方に負の電荷が生じて互いに引き合うので電荷が充電されやすくなり、静電容量が大きくなる。この性質を利用したものがコンデンサであり、コンデンサは誘電体によって電気的に絶縁された複数の電極や電極板の組み合わせによって構成される。

コンデンサのモデルとして、平行に近接した2つの平面を電極板とする平行板コンデンサがある。電極板の面積を A、電極板の間隔を d とすれば、静電容量が C ≃ ϵ A d {\displaystyle C\simeq {\frac {\epsilon A}{d}}}

で近似される[8]。このときの比例係数 ε は電極板間を絶縁する誘電体誘電率である。この近似が成り立つには電極板の間隔 d が充分に小さい( d ≪ A {\displaystyle d\ll {\sqrt {A}}} )という条件が必要である。あるいは電極板の面積 A が充分に大きい( A ≫ d 2 {\displaystyle A\gg d^{2}} )と言い換えることもできる。
静電エネルギー

充電されたコンデンサが蓄える静電エネルギーは U = Q 2 2 C = C 2 V 2 {\displaystyle U={\frac {Q^{2}}{2C}}={\frac {C}{2}}\,V^{2}}

で表される。つまり、容量1ファラドのコンデンサに10ボルトの電圧がかかっている場合、電力量は50ジュール(ワット秒)となる。したがって、この場合における定格出力50ワットの電気製品が1秒間動作することになる。(これは理論値であり、実際には電圧を安定させるための回路などが必要となるため、その分電力量が減ることとなる。

以下、工学的解説や応用を述べる。
用途

キャパシタの電気記号(図記号)キャパシタ電解コンデンサ可変コンデンサ
Polarized capacitor symbolPolarized capacitor symbol 2Polarized capacitor symbol 3Polarized capacitor symbol 4

アナログ電子回路での用途

直流電流を通さないことからカップリングコンデンサに利用されたり、デカップリング用のコンデンサに利用される。その他、平滑回路や、共振回路、フィルタなどにも利用される。実際の電子回路では、同じく受動素子の一つである抵抗器コイルとともに用いられることが多く、前者はR、後者はLと表現されることが多い。要求される周波数帯域、容量や精度、温度に対する容量変化、耐圧など回路の目的、用途、環境、コスト、大きさに合わせて各種の形状、材質の物が幅広く用いられる。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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