コンストラクション・マネジメント
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コンストラクション・マネジメント(construction management)とは、建設プロジェクトにおいて、建設発注者から準委任を受けたコンストラクション・マネジャー(CMr)により、中立的に全体を調整して、所期の目的に向かって円滑に事を運ぶ為の行為のことである。CM方式。
CM方式の定義

CM方式はアメリカで確立したプロジェクト実施方式であり、プロジェクトの工期遅延、予算超過などを防止するため、マネジメントを専門に行うCMr(コンストラクション・マネジャー)が、発注者、設計者と一体となってプロジェクトの全般を運営管理する方式である。

職能分化や機能分散が進み、個々の調整を進めることよりも、プロジェクト全体をより統合的にマネジメントすることが求められ、さらには、コンプライアンスや情報公開などの認識が社会的に進むにつれ、建設プロジェクトにおいても、より透明性を高める発注者ニーズが高まってきている。

そのため、「設計者」や「施工者」といった従来の利害関係者がプロジェクト全体をマネジメントするのではなく、第三者性を持つ専門職がその役割を担うことが求められるようになってきた。この専門職がCMrであり、CMrが参加してプロジェクトを実施する方式がCM方式といえる。

アメリカのCM協会でも、CM方式を「建設プロジェクトのマネジメント方式」と解釈し、「CM方式は、特定の入札・契約方式ではなく、建設プロジェクトのすべての段階に適応可能な専門的マネジメント技術」と位置づけている。つまり、時代の変化と多様な発注者ニーズに合わせて常に進化する「従来方式に代わるプロジェクト実施方式(Alternative project delivery method)」としている。しかしながら、CM方式先進国のアメリカでもCMの定義は一様でなく、柔軟な考え方であることを十分に認識しておく必要がある。「分離発注方式=CM方式である」といった単純な数式にはならない。

また、CM方式は、工事費の保証といった工事に関するリスクの取り方によって、「ピュアCM方式」と「CMアットリスク方式」に大別される。(違いについては、後述のピュアCMとCMアットリスクを参照。)
プロジェクト発注の選択肢

CM方式がプロジェクト実施方式であると説明したが、まず、建設プロジェクトの発注方式は次の3つの要素で構成されている。

入札方式(Tendering)

発注方式における設計者や施工者選択プロセス。入札方式には、指名競争、一般競争、2段階競争入札などがある。


契約方式(Contract)

発注者のリスクヘッジの度合いを示す。契約方式には、一括請負契約、最高限度額保証付き契約、単価契約などの、いわゆる請負金額設定のための方法などがある。


プロジェクト実施方式(Delivery)

プロジェクトごとのValue for Moneyを高めるための方法。プロジェクト実施とは、設計施工分離発注方式、デザインビルド、CM(コンストラクション・マネジメント)方式など、プロジェクトを進めるうえでの方法を指している。

これら3つの要素の組合せにより、多様な発注方式となる。当然ながら、発注方式の選択は、建設プロジェクトの特徴や発注者ニーズによるところが大きい。日本では、主な発注方式は、指名競争または一般競争により選択された業者と一括請負契約を締結し、設計施工分離発注を行うか、もしくは設計施工一括発注を行うかの2種類の選択しかなかった時代が長く続いてきた。 

CM方式は、発注者に対し、その2種類以外の選択肢を提供するものであるといえる。「発注方式」は、一般的な言葉ではあるが、日本CM協会では、入札方式、契約方式、プロジェクト実施方式の組合わせからなるものとして定義し、共通の理解のベースとしている。
CM方式の特徴
プロジェクト実施方式とリスクの関係

工事費の保証といった工事に関するリスクの取り方は、基本的にプロジェクト実施方式において、発注者と請負者の間において決定されている。

たとえば、デザインビルド方式は、より請負者のリスクが大きく、CM方式は、より発注者のリスクが大きい。CM方式において、このリスクが大きい事実が同時にコスト高となるのではなく、逆に、発注者がリスクを負担した分、施工者にとってはリスク分をコスト負担することがなくなり、結果として、コストミニマムであり、フレキシビリティに富むなど、発注者の便益も大きくなってくる。

それに対し、デザインビルドは、施工者のリスク負担が大きく、施工者にとっては決められた金額の中で、利益を出しやすい半面、発注者はCM方式に比べ、コスト高になる可能性が高い。

要するに一般的に、発注者リスクが大きければ大きいほど、価格は低くなる傾向にあり、逆であれば、価格が高くなる。
契約関係

CM方式では、CMrは、発注者との間に契約を締結し、技術的な中立性を保ちつつ発注者の側に立って、設計・発注・施工の各段階において、設計の検討や工事発注方式の検討、工程管理、品質管理、コスト管理などの各種のマネジメント業務の全部または一部を行うものである。すなわち、設計者や施工者と別に契約を結ぶことになる。

このようなCMrの業務に対し、今のところ、直接の公法的規制はなく、法律的な義務や責任の中心は契約(準委任契約)に基づく行為と考えられている。所定のCM業務を実施できなければそれに応じて損害賠償義務などが生じることになるわけである。よく、「CMrは責任を取らない」と言われるが、ピュアCM方式の場合、工事費の保証といった工事に関するリスクを取らないことと、責任を取らないことと誤解されているからだと思われる。

また、工事契約の契約関係にも特徴がある。すなわち従来の総合工事業者による一式請負方式では発注者と専門工事業者(一式請負の下では下請負業者となる)が間接的な契約関係であるのに対して、CM方式では発注者と専門工事業者が直接契約を締結することができる。

このような直接の契約関係を締結することによって、発注者にとってコストの透明性が増し、ひいては経済的な工事の可能性を高めることができるとされる。
ピュアCMとCMアットリスク

前項で、CMrの業務を準委任契約に基づく行為として説明した。この方式は、ピュアCM方式と呼ばれているが、CM方式の全てを説明しているわけではないが、現在、日本では、圧倒的に「ピュアCM方式」の採用が多く、単に「CM方式」という場合は、「ピュアCM方式」であることが多い。

ピュアCM方式から、発展して、CMアットリスクと呼ばれる方式もある。ピュアCM方式では、施工に伴う最終的なリスク(施工を分離することなどに伴う全体工事の完成に関するリスク)について発注者が負うため、発注者が支出する工事費がその分増加する可能性がある。発注者が支出する工事費を低減するために、CMrにマネジメント業務に加えて施工に関するリスクを負わせる場合があり、このようなCM方式を「CMアットリスク」と呼ぶ。なお、「CMアットリスク」においても、マネジメント業務の内容そのものについては、基本的には「ピュアCM方式」と同じである

CMrが、最高限度額を保証する条項(最大保証金額(GMP:Guaranteed Maximum Price))や工期を保証する条項を契約に含めたり、あるいは工事完成保証を差し入れたりする場合がある。工事金額等についてCMrがリスクを取ることになり、CMアットリスク方式と呼ばれる。CMアットリスクは、発注者が気になる部分のみをCMr[1]がリスクを担うことも含まれる。

また、米国では、このCMアットリスクが採用される機会が多いが、この場合は、CMrが総合工事業者に近いような形態をとる。「CMアットリスク」では、CMrが施工者、資材業者と交わす契約などについて、発注者の事前の同意を得ることが必要とされ、これによりこれら業者の選任についての発注者の裁量権が確保されるとともに、契約金額が自ずと明らかにされる。また、オープンブック方式、コスト+フィー方式がとられている場合などは、CMrの発注者への請求の中で、実際の業者への支払(予定)額、その他の経費の内訳が明らかになる。

(注)オープンブック方式とは、工事費用を施工者に支払う過程において、支払金額とその対価の公正さを明らかにするため、施工者が発注者に全てのコストに関する情報を開示し、発注者又は第三者が監査を行う方式のことをいう。(国土交通省 CM方式活用ガイドライン(2 アットリスクCM)による)
施工体制

CM方式では、従来の請負契約と異なり、柔軟な施工体制を取ることが出来る。以下は、「地方公共団体のCM方式活用マニュアル試案」で類型として示された、施工パターンである。一括発注するパターン1、分離発注を伴うパターン2および3の契約関係を示したイメージである。

実際のCM方式が採用されたプロジェクトではこれらのバリエーションにとどまらず、ケースバイケースで異なる多くの変型が出現している。

施工パターン1

CM方式においても工事を分離発注することなく、優秀な技術力を有する総合工事業者をそのまま採用するパターン。



施工パターン2

設備工事を分離発注して、建築工事を一括発注するパターン。分離発注という観点からは、官公庁が発注する工事と類似した体制となる。



施工パターン3

建築工事も、中工種あるいは小工種毎に発注し、総合建設業者を含まないパターン。日本では大規模工事には殆ど使われたケースはないが、小規模工事、住宅工事、内改装工事等では使われている。


各国CMの経緯

欧米ではマスタービルダー(日本では大工棟梁)が伝統的に設計・施工の担い手であったが、15世紀以降の教会建築等において設計と施工の分離が起こった。CMの発祥地アメリカ、そしていち早くアメリカの動きを取り入れたイギリスとともに近年根付き始めた日本などを採り上げ、CMrの業務内容、提供方法などが時代背景、技術革新などの影響による変化を以下に示す。
アメリカ
20世紀以前

アメリカでは1857年のAIAの設立により設計と施工の職能は完全に分離された。この中でマスタービルダーが従来担ってきた設計と施工にかかわるマネジメント技術も、設計と施工の分離に併せて「緩やかに」分離されたと考えられる。
1900年代から1950年代まで

産業革命に伴う技術革新はアメリカにおいても製造業等にマネジメント技術の進歩をもたらし、フレデリック・テイラーによる生産性の向上やヘンリー・ガントによるバーチャートの開発の引き金となった。

建設プロジェクトにおける設計者と施工者は、新たな技術(空調・昇降機・カーテンウォール・電話等)を有する製造者・専門工事業者とのコラボレーションにより、新たなマネジメント技術が要求された。工事契約における実費精算方式(Cost plus fee)・石油プラント建設におけるプロジェクト調達方式・マンハッタン計画におけるプランニング手法等の試みは建設プロジェクトにおけるマネジメント方式の先駆的事例と考えられる。
1950年代

二度の世界大戦による軍事産業の需要は、アメリカのマネジメント技術に更なる進歩をもたらした。PErT(Program Evaluation and Review Technique)・CPM(Critical Path Method)等のスケジュール管理手法は、その後の建設産業にも影響を与えている。

建設プロジェクトでは、設計施工分離の原則に基づく設計・入札・施工方式により、設計者と施工者がそれぞれのマネジメント技術を実践していた。
1960年代

NASAのアポロ計画を代表とする軍事・宇宙産業は、ネットワーク・EV(Earned Value)・VE(Value Engineering)・WBS(Work Breakdown Structure)等の新たな管理手法を創造し、現在のプロジェクト・マネジメントの基礎が確立された。PMI(Project Management Institute)の設立もこの時期である。

一般に、CM 方式はこの時期に建設プロジェクトに導入されたとされている。産業の急速な発展に伴い建設プロジェクトが大規模化・複雑化し、従来のプロジェクト関係者(発注者・設計者・施工者等)によるプロジェクト管理の範囲と能力に限界が生じ、更に、労働者不足・建設費の高騰等によるインフレ懸念が深刻化した。この結果、建設プロジェクトの予算超過・品質低下・工程遅延等が、発注者のコスト管理・品質管理・スケジュール管理に対する不満を助長した。

ファストトラック方式はこの発注者の不満に応えるプロジェクト調達方式として、工事発注単位を細分化し、全体の設計終了以前に細分化単位で必要な許認可を取得して順次施工する方式である。設計と施工のプロセスがオーバラップすることにより、工期の短縮・設計に対する施工情報のフィードバック等が可能になる。この方式ではCMrが請負者ではなく発注者の代理人として、委任的立場でコスト管理・品質管理・スケジュール管理を行い、コストの透明性とスケジュールの最適化を実現した。

ニューヨークのワールド・トレード・センター建設工事は、ファストトラック方式を用いたピュアCM による代表的なプロジェクトである。工事発注単位を100以上に分割して工期短縮と工事費低減の効果を実証した同プロジェクトは、アメリカCMの歴史における重要なマイルストーンと位置づけられる。
1970年代

アメリカ連邦調達庁(General Service Administration)は1960年代後半からファストトラック方式を一部で実施したが、1970年代前半にガイドラインを作成してCM方式(ピュアCM方式)を正式に導入している。その後、連邦政府機関のみならず各州政府機関が発注する公共建設プロジェクトでCM方式が普及し、民間建設プロジェクトにも定着した。

CM方式の普及によりCM職能が確立され、CM業務環境が整備されると共に、大学教育においてもCM専門課程が相次いで開設された。
1980年代

グローバル化・情報革新・顧客重視志向・企業組織変革等のビジネス環境の変化により、軍事・宇宙産業で発展したマネジメント技術が、プロジェクト・マネジメントとして一般に幅広く受け入れられた。パーソナルコンピューターの普及とともにプロジェクト・マネジメント・ソフトウェアも普及した。PMIによりプロジェクト・マネジメント知識体系(PMBOK: Project Management Body of Knowledge)が発行され、資格制度(PMP: Project Management Professional)が創設された。

 ビジネス環境の多様化により、1970年代後半には一部にファストトラック方式の弊害も生まれた。細分化発注によるプロジェクト運営はCMrの能力・資質が成否に大きく影響するため、プロジェクト終了時まで工事費が未確定、設計と施工の調整不充分による業務の手戻りと品質の低下、スケジュール調整の不備による工程遅延等、発注者の不満も報告された。これらのコスト・品質・スケジュールに伴うリスクは結果的に発注者負担となり、紛争処理業務も増大した。

 この発注者不満に対して、CMrが工事費の上限額(GMP: Guaranteed Maximum Price)を保証して発注者リスクの一部を負担するCM方式が導入された。一般的にCMアットリスク方式とされているが、契約上は実費精算方式(Cost plus fee)に分類される。
1990年代以降

アメリカのプロジェクト調達方式は更に多様化している。責任一元化(Single Responsibility)をキーワードとするデザインビルド方式が従来方式に代わるプロジェクト調達方式のひとつに位置づけられ、CM方式は新たな発注者ニーズによる進化を続けている。ピュアCMは、単一の建設プロジェクトから同一の発注者による複数のプロジェクト群へ、また、大規模で複雑な建設プロジェクトの発注者側へと業務対象を拡大している。これらの業務はプログラム・マネジメントと称される場合がある。CMアットリスクは、責任一元化の観点で共通性をもつデザインビルドと共に、プロジェクト調達方式に対して多様化する発注者ニーズ(工事費上限保証によるコスト管理重視・設計と施工を包括した責任一元化重視等)に適合することが期待されている。
イギリス

1980年代初めまで、イギリスにおける発注方式は設計・施工分離の一括発注方式が主流で、一般にJCT[2]標準契約書(B/Q数量明細の有/無、概算数量式等)が用いられ、実施設計完了後に入札が行われ施工者を決定し、設計者が発注者代理として監理業務を行っていた。

イギリスにおけるCM方式採用の最初の事例として、70年代後半から80年代前半にかけてSt. Martin Properties(ディベロッパー)により行われたLondon Bridge City 開発プロジェクトがある。CMrはニューヨークに本社のあるLeher McGovern 社が担当して建設計画の全体調整を行い、イギリスのLaing Management 社がマネジメント・コントラクター(MCr)として実質的な工事管理を行った。しかし、CM方式の本格的普及は80年代後半以降となる。

イギリスのCMの歴史は1980年代初めよりイギリスで独自に普及してきたマネジメント・コントラクト(MC)[3]と80年代後半にアメリカから導入されたピュアCM方式の二つの段階に分けられる。以下、それぞれの経緯と実態について説明する。
1980年代 : MC方式の発展と衰退

イギリスの建築許認可は、都市計画法による「開発許可」と建築基準法に基づく「建築確認許可」の2 段階に分かれている。これにより開発許可取得後に工事を着工し、詳細設計・施工段階で順次建築確認・許可を得ることが可能である。

MC方式では開発許可取得とファストトラック採用を前提として、設計と施工を並行して進め、大幅な工期短縮を図り、設計変更の自由度を大きくした。イギリスのBovis Construction 社は1920年よりMarks & Spencer’s の店舗を実費精算方式で施工していた。80年代になるとさらに全国の同大型店舗をはじめ、多くのプロジェクトをこのMC方式で施工していた。

80年代半ばからイギリスの不動産ブーム到来により、早期着工・完成を可能とするMC方式はディベロッパーに積極的に受け入れられ、多くの民間商業施設や空港、大型複合ビル等に採用された。その結果、一般の建設会社はMC 業務を新たなメニューに増やし、建設市場は混戦模様となった。その間、公共工事および小規模で単純な民間建物では、従来通りの一括発注方式が引き続き採用された。

MCr新規参入組による建設ブームの結果、MC方式の本来の目的と現実とに乖離が生じ、さまざまな問題が顕在化したため、発注者側にMC 方式採用を見直す動きが出始めた。不動産ブームの終焉を告げる1987年のブラックマンデー以降、MC方式はほとんど採用されなくなった。1990年にイギリスレディング大学が発刊した調査レポートにMC方式採用事例の問題点が報告されている。主要な問題点として以下の事項が挙げられる。

・MC方式採用により発注者にリスクが転嫁されることが充分認識されていなかった。・MCrは法的にはコンサルタントでも請負者でもない中途半端な存在となった。・MC方式に適合した標準契約書が整備されない状況で多くの工事が行われた。(JCTのMC標準契約書は1989 年に初版が発行されている。)

・MCR と専門工事業者間で一部不明解な取り決めが行われ、発注者へのコスト負担増と不信感を高める結果となった。・専門工事業者への厳しい支払条件(出来高査定、保留金等)の結果、発注者にとっては金利負担を上乗せした形でのコストアップの要因となった。・設計完成度の低さ、MCR の経験・管理能力・責任感の欠如、発注者の判断/承認の遅れ等により、設計変更の増加・工期遅延・品質低下・コストアップが生じることとなった。・専門工事業者への大幅なリスク転嫁(工事遅延責任、瑕疵担保、仮設工事、資機材・仕上げの養生、業者間のクレーム処理等)が行われた結果、係争問題が多発した。
1980年代後半?1990年代 : MCからCMへの変遷

80年代半ばよりロンドン金融街では外国企業の資本投下によりビッグバンが起き、ブロードゲートやドックランド等の大規模な開発プロジェクトが次々と計画された。しかし短期間で完成させるためにはMC方式採用時のMCr業者の処理能力に限界があり、アメリカのCM方式導入によりMCの経験を踏まえてイギリスの建設事情に合致したピュアCM方式が提案・採用された。

CMrは設計者、積算士(QS)と同様にコンサルタントチームの一員となり、発注者はCMrを通して大規模かつ複雑なプロジェクトを直接管理できるようになったが、専門工事業者と直接契約関係を結ぶことにより、発注者の管理業務は従来の請負方式やMC方式より飛躍的に増大した。


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