コンサーティーナ
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コンサーティーナ
別称:双面手風琴、六角手風琴、八角手風琴
[注釈 1]
各言語での名称

Concertina
Konzertina
Concertina
Concertina
六角手?琴


アングロ・コンサーティーナの座奏
分類

鍵盤楽器 蛇腹楽器 気鳴楽器
音域
機種によって異なる。一例:C3?C7[1]
関連項目


蛇腹楽器

アコーディオン

バンドネオン

アイルランド音楽

1856年の英国の絵「盲目の少女」(英語版)に描かれたジャーマン・コンサーティーナ。少女の首の下の白い札には"Pity the Blind"(盲人に憐れみを)と書いてある。

コンサーティーナ (concertina) は、アコーディオン族に属するフリーリード楽器で、蛇腹楽器の一種である。

通常正六角形または正八角形の小型の手風琴(てふうきん)で、欧米の民俗音楽などでよく見かける楽器である。名称は日本語ではまだ固定表記が無く、「コンサーティーナ」のほかにも、コンサーティナ、コンサティーナ、コンサルティーナ、コンセルティーナ、コンセルチーナ、コンサルチーナ、コンチェルティーナ、コンツェルティーナ、コンサーチナ、コンサチーナなど様々な表記を見かける[注釈 2]
特徴

蛇腹楽器の中では最も軽量な部類の楽器で(通常のアングロ・コンサーティーナの重さは1 kgから2 kgの間)、取り回しも楽であるが、メロディーや和音伴奏も弾けるなど演奏性能は高い。基本は座奏だが、慣れれば立奏や歩奏も可能で、室内でも野外でも使える。弾きながら語ったり、歌うこともできる。

コンサーティーナを活用する音楽のジャンルも幅広く、世界各地の民族音楽や、西洋のクラシック音楽、現代的な通俗音楽、家庭音楽や商業音楽など、さまざまな音楽シーンで見かける。

ただ、コンパクトな楽器本体に比較的多数のボタン鍵盤と金属リードを詰めこまねばならないため、構造上、妥協や制約を余儀なくされる面もある。コンサーティーナは種類ごとにボタン鍵盤の配列法や蛇腹の押し引きの方式がまちまちであり(種類を参照)、ボタン鍵盤数の少ない機種では鳴らせない半音もある。

逆に言うと、コンサーティーナの奏者は自分の機種の特性にあった運指や奏法を工夫できる余地が大きく、それがこの楽器の面白さと奥深さにつながっている。
見分けかた
アコーディオンとの違い

アコーディオンの形状は左右非相称だが、コンサーティーナは(バンドネオンと同様)左右相称である。

アコーディオンは、右手側と左手側の筐体(きょうたい。器械を内蔵した箱)では形状も機能も違う(フリーベースアコーディオン等の例外を除き、演奏者から見て右手側の筐体は主旋律を担当、左手側の筐体は和音伴奏を担当することが多い)。また右手側の筐体はベルトで演奏者の体に固着し、左手側の筐体を左右に動かすことで蛇腹の押し引きを行うタイプが多い。

コンサーティーナ(とバンドネオン)は、左右の筐体は形状も機能もほぼ同じで、筐体をバンドで演奏者の胴体に固着させることはない(まれに、立奏のため首から紐で吊り下げたりすることもあるが、その場合でも筐体は演奏者の体に固定しない)。蛇腹楽器のバンドの有無についての説明も参照。

コンサーティーナの3つのタイプ。向かって右から「アングロ式」、「イングリッシュ式」、「デュエット式」。ボタン鍵の並び方の違いに注意。谷口楽器にて撮影。

コンサーティーナ(青い服の女性。イングリッシュ・コンサーティーナ)は左右相称。アコーディオン(赤い服の男女)は左右非相称。

コンサーティーナ(左。30ボタンのアングロ)は六角形や八角形が多く(例外もある)、サイズもバンドネオン(右)より小さいことが多い。

以下に蛇腹楽器の主な種類を示す。コンサーティーナは右の「左右対称」の列の楽器である(バンドネオンは広義のコンサーティーナ属の楽器であるが、狭義のコンサーティーナには含まない)。

左右非相称
アコーディオン左右相称
コンサーティーナ
押引異音ダイアトニック・ボタン・アコーディオンアングロ・コンサーティーナ
ジャーマン・コンサーティーナ
ケムニッツァ・コンサーティーナ
(バンドネオン)
押引同音クロマティック・ボタン・アコーディオン

ピアノ・アコーディオンイングリッシュ・コンサーティーナ
デュエット・コンサーティーナ
(クロマティック・バンドネオン)

バンドネオンとの違い

ケムニッツァ・コンサーティーナなど一部の例外を除き、コンサーティーナはバンドネオンよりも小さくて音域も高く、筐体の形も四角形だけでなく六角形や八角形などさまざまである。
歴史
開発

コンサーティーナは、19世紀の産業革命期の発明品の一つであり、1829年にイギリスの物理学者・チャールズ・ホイートストンが発明して特許を取得した[注釈 3][2]。ホイートストンが発明したコンサーティーナは、今日、イングリシュ・コンサーティーナ(英国式コンサーティーナ)と呼ばれるタイプである。その後、ジャーマン・コンサーティーナ(ドイツ式コンサーティーナ。後のアングロ・コンサーティーナバンドネオンの原型となった)や、最も普及しているアングロ・コンサーティーナ(英国系コンサーティーナ)、改良型のデュエット・コンサーティーナ(重奏式コンサーティーナ)など、さまざまなタイプのコンサーティーナが発明されている。
名称

「コンサーティーナ」という名称は、「演奏会」を意味する「コンサート」に、女性形縮小辞「-ina」[注釈 4]を付けて愛称化したもので、1834年から使われた[3]。この名称を使い始めたのはイギリスの楽器商だと思われる[4]
普及踊りながらアングロ・コンサーティーナを弾く船員を描いた顔ハメ看板。イギリスのポーツマスにて

小型なのに旋律も和音伴奏も演奏可能なコンサーティーナは、発明当時としては画期的な器械式楽器であり、人々の関心を引いた[5]。プロの音楽家だけではなく、移民船員旅芸人行商人、キリスト教の宣教師救世軍の楽隊[6]など、さまざまな人々がコンサーティーナを持って各地を旅し、この楽器を世界に広めた。また、通俗的なダンス音楽や大衆音楽民族音楽賛美歌クラシック音楽など幅広いジャンルの音楽の演奏に使われるようになった。
民族音楽

世界各地の民俗音楽(民族音楽)でも広く使われる楽器である。例えばアイルランド音楽(特にクレア県)や、イングランドのフォーク・ミュージック、モリス・ダンスの音楽、北米のポルカカントリー・ミュージックアフリカーナーのボーア音楽(Boeremusiek)、ズールー人の音楽、ボリビアのフォルクローレ(特にコチャバンバ県)等ではよく見かける楽器である。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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