コローニス
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ドメニキーノの『コロニスを殺害するアポロン』(1616年-1618年)。アポローンに射殺されるコローニスを描いている。ロンドンナショナル・ギャラリー所蔵。

コローニス(古希: Κορων??, Kor?nis)は、ギリシア神話の女性たちである。長母音を省略してコロニスとも表記される。主に、

プレギュアースの娘

コローネウスの娘

オーリーオーンの妻

ディオニューソスの信者

のほか、数人が知られている。以下に説明する。
プレギュアースの娘

このコローニスは、 ラピテース族の王プレギュアースの娘で、医術の神アスクレーピオスの母とされる。コローニスの物語はカラスの色が変わる変身譚とともに語られている。

コローニスはアポローンに愛されて子を身ごもったが、ヘーシオドスによるとエラトスの子イスキュスと結婚した[1][2]

しかし、多くの伝承ではコローニスはイスキュスと密通したとされる。ピンダロスによれば、コローニスはアポローンの子供を身ごもったにもかかわらず、アルカディアー地方からの客人イスキュスに恋をし、父プレギュアースに隠れてイスキュスと密通した。しかし、アポローンはすぐに気づき、アルテミスを送ると、アルテミスは多くの者とともにコローニスを射殺した。そしてコローニスが火葬されるとき、アポローンは自分の子を救い出し、ケイローンに養育させた[3]

後に成長したアスクレーピオスは死者さえも蘇らせる名医になった。ピンダロスの物語ではカラスは登場しないが、多くの物語では、カラスがコローニスの密通に気付き、アポローンに知らせる。アポローンは怒って以前は白い色だったカラスを黒い色に変え、またコローニスを殺した。しかし、アポローンは後悔して自らの手で火葬し、そのさいに子アスクレーピオスをコローニスの胎内から救い出して、ケイローンに養育させた[4][5][6]アントーニーヌス・リーベラーリスでは、コローニスの密通の相手はアルキュオネウスとされる[7]

エピダウロスの詩人イシュロスによると、コローニスはプレギュアースとムーサの1人エラトーとマロスの娘クレオペマーの娘である[8]パウサニアースによると、プレギュアースがエピダウロスにやって来たとき、コローニスはすでにアポローンの子を身ごもっていた。そして、プレギュアースに同行してエピダウロスにやって来て、アスクレーピオスを出産し、ミュルティオン山に捨てた。この赤子はヤギに養われ、羊飼アレスタナスに発見されたとき、神々しく光っていた[9]

なお、一説にアスクレーピオスの母はレウキッポスの娘アルシノエーともいわれ、古代でも意見が分かれていたが、アポロパネースというアルカディアー人がデルポイでどちらの伝承が正しいか神に質問すると、コローニスの子であるという答えが返ってきたという[10]
系図

          アイオロス アトラース 

                     

          シーシュポス メロペー 
  
                                         
                                    
  テルサンドロス                オルニュティオーン       ニーソス     

              ハルモス                            
            
コローノス ハリアルトス            ポーコス トアース ポセイドーン エウリュノメー グラウコス 
   
                                            
            
  アレース クリューセー   ポセイドーン クリューソゴネイア   ダーモポーン   ベレロポーン   ピロノエー 
        
                                                   
               
    プレギュアース       クリューセース     プロポダース   イーサンドロス ヒッポロコス ゼウス ラーオダメイア 
  
                                                  
      
アポローン コローニス イスキュス   ミニュアース   ドーリダース ヒュアンティダース     グラウコス   サルペードーン 
   
                                
                   
  アスクレーピオス   オルコメノス ピュラコス クリュメネー イーアソス ミニュアデス 
    
                                 
               
マカーオーン ポダレイリオス     イーピクロス アルキメデー アタランテー 



コローネウスの娘

このコローニスは、 ポーキス人のコローネウスの娘である。ポセイドーンに求愛されたが拒み、逃げているときにアテーナーによってカラスの姿に変えられた[4]
オリーオーンの妻

このコローニスは、オーリーオーンの妻で、コローニスたち(複数形コローニデス, 古希: Κορων?δε?, Kor?nides)と呼ばれる2人の娘たちメーティオケー、メニッペーの母[11]
ディオニューソスの信者

このコローニスは、テッサリアーでディオニューソスを祭っていた信者の1人である。ボレアースの子のブーテースにさらわれてナクソス島に連れて行かれたが、コローニスがディオニューソスに祈ると、ブーテースは狂気につかれて水死した[12]
その他のコローニス

ディオニューソスを養育したナクソス島の
ニュムペーの1人。他はピリアー、クレイデー [13]

ヒュアデスの1人[14]

脚注^ ヘーシオドス断片239(ピンダロス『ピュティア祝勝歌』第3歌28行への古註による引用)。
^ カール・ケレーニイ『医神アスクレピオス』邦訳、p134。
^ ピンダロス『ピュティア祝勝歌』第3歌9行-46行。
^ a b オウィディウス『変身物語』2巻。
^ アポロードロス、3巻10・3。
^ ヒュギーヌス、202話。
^ アントーニーヌス・リーベラーリス、20話。
^ カール・ケレーニイ『医神アスクレピオス』邦訳、p.48-49。
^ パウサニアース、2巻26・4-26・5。
^ パウサニアース、2巻26・7。
^ アントーニーヌス・リーベラーリス、25話。
^ シケリアのディオドーロス、5巻51・4-51・5。
^ シケリアのディオドーロス、5巻52・2。
^ ヒュギーヌス、192話。

参考文献

アポロドーロス『ギリシア神話』高津春繁訳、岩波文庫(1953年)

アントーニーヌス・リーベラーリス『メタモルフォーシス ギリシア変身物語集』安村典子訳、講談社文芸文庫(2006年)

オウィディウス『変身物語(上)』中村善也訳、岩波文庫(1981年)

ディオドロス『神代地誌』飯尾都人訳、龍溪書舎(1999年)

パウサニアス『ギリシア記』飯尾都人訳、龍溪書舎(1991年)

ヒュギーヌス『ギリシャ神話集』松田治・青山照夫訳、講談社学術文庫(2005年)

ピンダロス『祝勝歌集/断片選』内田次信訳、京都大学学術出版会(2001年)

ヘシオドス 全作品』中務哲郎訳、京都大学学術出版会(2013年)

カール・ケレーニイ『ギリシアの神話 神々の時代』植田兼義訳、中公文庫(1985年)

カール・ケレーニイ『医神アスクレピオス』岡田素之訳、白水社(1997年)

高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』岩波書店(1960年)

関連項目.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}ウィキメディア・コモンズには、コローニスに関連するカテゴリがあります。

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