コロナ
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この項目では、天体現象のコロナについて説明しています。

コロナウイルス全般については「オルトコロナウイルス亜科」をご覧ください。

2019年から全世界で流行しているSARSコロナウイルス2による感染症については「新型コロナウイルス感染症 (2019年)」をご覧ください。

電機メーカーについては「コロナ (住宅関連機器メーカー)」をご覧ください。

その他の「コロナ」については「コロナ (曖昧さ回避)」をご覧ください。

1999年8月11日の皆既日食で見られたコロナ。皆既日食中は、コロナやプロミネンスを肉眼で見ることができる。

コロナ[1] (ラテン語: corona) 、または太陽コロナ[2](たいようコロナ、solar corona)は、太陽の外層大気の最も外側にある、100万ケルビン (K) を超える希薄なガスの層である[1]。corona はラテン語で「」を意味する言葉で、古代ギリシア語でガーランド(英語版)やリースを意味する κορ?νη に由来する。

普段は光球彩層からの光が強いため見ることができないが、皆既日食の際には肉眼で見ることができる。コロナグラフという観測機器を使えば、常時観測することができる。ただし、コロナは100万 K以上の温度であるため、可視光よりX線での放射の方が強い。地球の大気がX線を吸収してしまうため、コロナの観測には宇宙空間の方が適している。

主な成分は水素原子原子核電子とに分解されたプラズマである。6,000K程度の光球から遠く離れたコロナが100万Kを超える温度まで加熱される機構(コロナ加熱)には不明な点が残っており、「コロナ加熱問題」と呼ばれている[3]
歴史ニューヨーク Kinderhookでの、1806年6月16日の日食のJose Joaquin de Ferrerによるコロナのスケッチ

1724年、フランス・イタリアの天文学者ジャコーモ・フィリッポ・マラルディは、日食の間に見えるオーラは月ではなく太陽のものであることを認識した。1809年、スペインの天文学者ホセ・ホアキン・デ・フェレールは「コロナ」という言葉を生み出した[4]。デ・フェレールはまた、ニューヨーク州キンダーフックでの1806年の日食の観測に基づいて、コロナは月ではなく太陽の一部であると提唱した[4]。イギリスの天文学者ノーマン・ロッキャーは、地球上で初めて太陽の彩層に含まれる未知の元素を発見した。フランスの天文学者ピエール・ジャンサンは、黒点周期とともにコロナの大きさや形状が変化することを指摘した。1930年、ベルナール・リヨが皆既日食によらずコロナを見ることができる装置「コロナグラフ」を発明した。1952年には、アメリカの天文学者ユージン・ニューマン・パーカーが、太陽表面全体に発生する無数の小さな「ナノフレア」によって太陽コロナが加熱されているのではないかと提唱した。

1869年の皆既日食の観測以降、コロナ中に輝線スペクトルが次々と発見された[2]。これらは未知の元素「コロニウム」の存在を示唆するものと考えられたが、実際には高温によって高階電離したイオンによるものであった。ドイツのグロトリアンの研究を引き継いだスウェーデンベングト・エドレンにより、1942年に637.4ナノメートル (nm) の赤色の輝線が、鉄の9階電離のイオン (Fe9+) から放射されたものであることが同定された[5]。その他、530.3 nmはFe14+、338.8 nmはFe12+、789.2 nmはFe10+に、1074.4 nmと1079.8 nmはFe12+と同定された[5]。これ以降、コロナ中に発見されていた輝線が、ニッケル、カルシウム、アルゴンなどの高階電離したイオンからの放射であると同定されていった[2]
物理的特徴STEREO-Bの紫外線イメージングカメラのキャリブレーション中にキャプチャされた月の太陽面通過[6]

可視光で見えるコロナからの光は、物理過程の違いによって、Kコロナ、Eコロナ、Fコロナの3種類に大別される[7]
Kコロナ
吸収線を持たない、連続光からなる成分[7]。Kは、ドイツ語で「連続光」を意味するKontinuierlicheに由来する[7]。Kコロナからの光は、太陽の光球に起源を持ち、高温に加熱されることで電離して高速運動する自由電子によるトムソン散乱により、太陽の半径方向と直交する向きに強く偏光している[7]
Eコロナ
0.1 nm程度の狭い波長範囲だけに局在する輝線成分[7]。Eは、「輝線」を意味するEmissionに由来する[7]。Eコロナからの光は、コロナ中で高階電離された原子が放射する光である[8]。最も明るい13階電離した鉄イオン (Fe XIV, Fe13+) からの530.28 nm付近の輝線を始め、可視光領域では20程度の輝線が見られる[8]。太陽表面では最も強い成分だが、輝線の強度は電子密度の2乗に比例するため、光球からの距離が大きくなるとともに急速に暗くなる[8]
Fコロナ
光球と同じくフラウンホーファー線を持つ成分[7]。Fは、Fraunhoferに由来する[7]。Fコロナからの光は、黄道面に浮遊するダストの熱放射や太陽光の散乱光で、黄道光の太陽側への延長成分とされる[7]。Kコロナに比べると距離が離れても輝度がゆっくりと減少するため、太陽中心から太陽半径の3倍くらい離れた距離になるとこの成分が主となる[8]。Kコロナ、Eコロナと異なり、高温に加熱されているわけではないため、本来「黄道光」と呼ぶべきものである[8]が、慣習的にFコロナと呼ばれている[1]

太陽コロナは、太陽表面の有効温度よりもはるかに高温である。光球の平均温度が約5,800 Kであるのに対し、コロナは100万 - 300万 Kである。しかしながら、コロナの密度は光球の10-12倍程度と非常に希薄なため、可視光での光度は光球の約100万分の1しかない。コロナは、比較的薄い彩層によって光球から切り離されている。コロナがどのようにして加熱されるのかはまだ議論の余地があるが、太陽コロナ中の磁場によって起こる微小なフレアによって加熱されるとする「ナノフレア説」と、プラズマ中を磁力線に沿って伝播するアルヴェーン波によって太陽表面のエネルギーが上空に伝えられているとする「波動加熱説」が有力視されている[9]。太陽のコロナの外縁は、開いた磁束のために絶えず外へと運ばれ、太陽風を発生させている。差動自転によって太陽磁場が巻き上げられ、捩じられるイメージ

コロナは太陽の表面に常に均等に分布しているわけではない。静穏な時期には、コロナは多かれ少なかれ赤道域にとどまり、コロナホールが極域を覆う。逆に、活動期には、コロナは赤道域と極域に均等に分布しており、太陽黒点のある領域では最も顕著である。太陽の活動周期は、活動極小期から次の極小期までの約11年間である。太陽の自転は、赤道域の自転が極域よりも速い差動自転をしていることにより太陽磁場が絶えず巻き上げられているため、黒点の活動は磁場がよりねじられやすい活動極大期に最も顕著となる。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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