コリジョンルール
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走者デレク・ジーターをブロックする捕手マット・ウィータース(2011年)

コリジョンルール(: collision rule)は、野球における本塁での衝突(コリジョン)を防止するための規則。本塁での過激な接触プレーによる負傷者が後を絶たなかったことから、2014年メジャーリーグ(MLB)で採用され、日本野球機構(NPB)においても2016年より採用された。アメリカでは、この規則が制定されるきっかけとなった選手の名前から、「バスター・ポージー・ルール (Buster Posey rule)」または「ポージー・ルール (Posey rule)」とも呼ばれる[1][2][注 1](詳細は#規則制定の背景を参照)。

アマチュア野球では古くより危険防止ルールにコリジョンルールと同様の内容が規定されており、高校野球少年野球におけるコリジョンルールは元々存在していた走塁妨害等の規定を厳密に定義したものに過ぎない。
規則

コリジョンルールは、公認野球規則6.01(i)項に規定されている。

規則の大要は、本塁での衝突プレイについて、
得点しようとしている走者が、走路をブロックしていない捕手または野手に接触しようとして、または避けられたにもかかわらず最初から接触をもくろんで、走路を外れることを禁じる

ボールを保持していない捕手が、得点しようとしている走者の走路をブロックする行為を禁じる

である。1の場合は走者にアウトを宣告し、ボールデッドとなって、他のすべての走者は接触発生の時点で占有していた塁まで戻らなければならない。2の場合は走者にセーフを宣告する。

MLBで採用された最初のシーズンは、本塁の判定に関しビデオ判定が92回行われ判定が覆った事が11回あった。中には明らかにアウトのタイミングにもかかわらず「捕手が走路をふさいだから」としてセーフになるなど、物議をかもすことも少なくなかった。2014年9月にMLB機構の野球運営部門が「捕手がボールを持っていない状態で本塁をブロックしたとしても、意図的に走路を妨害した明らかな証拠がなければ、走者をセーフにしないように」と通達し曖昧なルールに一定の基準が設けられた[4]

NPBでは、規則を導入した2016年当初の運用・適用に対し意見書があったことから、同年7月に実行委員会で見直しが検討され[5][6][7]、22日より新たな運用基準が適用された[8][9]。2018年にリクエスト制度が導入された当初はコリジョンルールはリクエストの対象外だったが、2019年からは適用拡大され対象となった[10]
規則制定の背景

2011年にMLBの公式戦において走者が本塁に走って来た際にサンフランシスコ・ジャイアンツバスター・ポージー捕手が左足首靱帯を切る重傷を負った。ポージーと同年にはハンベルト・キンテーロライアン・ドゥーミット、その前年にはカルロス・サンタナジョン・ベイカーブレット・ヘイズなど、多数の捕手が負傷して長期離脱することが問題になっていた[11]。これらをきっかけに本塁でのクロスプレイに関する議論が高まり2014年に禁止事項としてルールに加えられた[12]

NPBでは、2013年以降、阪神タイガースマット・マートンの危険なタックルが問題視され、2015年7月の12球団監督会議でヤクルト真中満監督が問題提起[注 2]した。故障防止を望む選手会からも同じ意見が出され、NPBのゲームオペレーション委員会で検討された。2015年みやざきフェニックス・リーグで試験的に導入され、2016年1月に正式に導入が決まった[16][17][18]
事例
日本プロ野球
初適用


オープン戦での初適用は、2016年3月15日ヤクルト広島。2回表二死一・二塁、會澤翼の左前打で二塁走者の松山竜平が本塁を狙ってアウトとなったが、ビデオ判定の結果、捕手の中村悠平が走路を塞いでいたと判定され、松山の生還が認められた[19][20]

公式戦での初適用は、2016年5月6日西武日本ハム戦。3対2で迎えた6回表一死満塁、西川遥輝への2球目が暴投となり、三塁走者が生還したうえで二塁走者の淺間大基が本塁へ突入し、本塁上で待ち構えていた橋光成が捕手の炭谷銀仁朗から送球を受けると、滑り込んできた浅間にタッチしてアウトとなったが、橋が浅間に覆い被さる形で倒れ込んだことから審判団が映像で検証した結果、橋が走路を塞いでいたと判定され、浅間の生還が認められた。コリジョンルールの適用により、初めて判定が覆った事例でもある。基本的にコリジョンルールは、捕手と走者の交錯を想定したものであったが、初適用されたのは投手であった[21]

セ・リーグの公式戦での初適用は、2016年5月11日阪神巨人戦。3回表二死二塁、脇谷亮太の中前打で二塁走者の小林誠司が本塁を狙ってアウトとなったが、抗議とビデオ判定の結果、捕手の原口文仁がブロックして走路を妨害したと判定された[22][23]。阪神はこの判定に対してセ・リーグに意見書を提出したが、セ・リーグは判定は適切だったとの見解を示した[24]

コリジョンルール適用でサヨナラ


2016年6月14日広島西武、2対2で迎えた9回裏二死一・二塁。赤松真人の中前打で二塁走者の菊池涼介が本塁を狙ってアウトとなったが、抗議とビデオ判定の結果、捕手の上本達之の足が走路を塞いでいると判定され、菊池の生還が認められた。コリジョンルールの適用で判定が覆ってサヨナラ勝利となった、初の事例でもある[25][26]。なお、西武はこの判定についてコリジョンルールの判定基準再確認を求め、パ・リーグに質問書を提出した[27]

議論
日本

張本勲は、「百害あって一利なし」[28][29] として、このルールの導入に反対している。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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