コミュニケーション論
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コミュニケーション学(コミュニケーションがく、英語: Communication studies)は、コミュニケーションの過程を扱う学問分野である。
概要

コミュニケーションは「時空間の隔離を超えてシンボルを共有する行為」と定義され、学問としてのコミュニケーション学は、情報を受け手がどう解釈するのかといった点や、文脈の中で発話や言語がもつ政治的、文化的、経済的、社会的側面に、しばしば関心を寄せる。このためコミュニケーション学は、対人関係、対面の会話から、演説、さらにはテレビ放送のようなマスメディアまで、幅広い主題や文脈にまたがるものとなる。

コミュニケーションは、しばしば現代社会の基本理念であるとされ、コミュニケーションのない現代生活は想像することが難しい。しかし、英語圏において社会思想の主題としてコミュニケーションが取り上げられるようになったのは、20世紀初頭になってからであり、コミュニケーションは比較的新しい、まだ解決していない問題領域である。
「伝達モデル」 と 「儀式モデル」

現在、コミュニケーション活動の概念化について、多くの研究者たち(例えば、 Packer and Robertson, 2006)が論じている内容は、以下、二つのモデルの中間のどこかにあるか、その両者を踏まえてその先へ論及するものである。

伝達モデルとは、「コミュニケーションはメッセージが送られ、伝達され、フィルターにかけられて、受け取られる過程」とする見方である。その核心において、伝達モデルは、1948年クロード・シャノンの論文「a Mathematical Theory of Communication (通信の数学的理論)」[1]に触発された情報理論と密接につながっている。

儀式モデルとは、「コミュニケーションは、意味のある人間関係やコミュニティを形成する、中心的な日常的な儀式に関わるもの」とする見方。ジェイムズ・W・ケアリーが提唱した。伝達が、(空間を超え、一つの時間の中での)輸送としてコミュニケーションのモデルを提案するのに対して、儀式モデルは、(時間を超え、一つの空間の中での)反復されたメディア・イベントの中で意味が構成されることを提案している。例えば、新聞は、読者にテキストを通してメッセージを伝達するだけでなく、毎朝配達され、いつも見慣れた紙面構成を取ることによって、繰り返し意味のあるイベントを提示し、読者に念を押し、確認させるものなのである。
歴史・発祥

アメリカ合衆国において、コミュニケーションに関する大学院レベルのプログラムの多くは、スピーチと古代の修辞学にまでその歴史を遡らせている。コミュニケーションの様々な側面は、昔から人文系の学問の主題となっていた。古代ギリシアローマでは、雄弁と説得の技術としての修辞学が、学生にとって重要な課題であった。長く続いた重要な議論には、基本原理を学べば誰でも効果的な話者となることができるのか(ソフィスト)、あるいは、優れた修辞は演説者の個性の優秀性に由来するのか(ソクラテスプラトンキケロ)、といったものがあった。ヨーロッパ中世からルネサンス期を通して、文法学修辞学論理学からなる三学(トリウィウム)は、ヨーロッパにおける古典的な学習体系の基礎となっていた。
研究対象・方法
名称・制度化

この分野は、大学によって、あるいは国によって、数多くの異なる名称で制度化されてきており、「コミュニケーション (communications)」、「コミュニケーション学 (communication studies)」、「スピーチ・コミュニケーション (speech communication)」、「修辞学 (rhetorical studies)」、「コミュニケーション科学 (communications science)」、「メディア研究 (media studies)」、「コミュニケーション・アート (communication arts)」、「マス・コミュニケーション (mass communication)」、「メディア生態学 (media ecology)」などと様々な名称で呼ばれている。さらに、時として「メディオロジー」と称されることもあるが、通常これはまた別の学問領域のことである。コミュニケーション学は、ジャーナリズム、映画、ラジオ・テレビ、広告・広報、パフォーマンスなどの学術的プログラムとも、しばしば重なりあう部分がある。近年では、多くの教育研究組織が、このとてつもなく深く、広い分野を包括的にとらえるため、「コミュニケーション学」という共通の用語を用いるようになっている。

コミュニケーション専攻出身者は、幅広い分野に進出しており、大学教員マーケティング専門家、メディアの編集者デザイナースピーチ・セラピストジャーナリスト人事管理者、企業内トレーナー、広報(パブリック・リレーションズ)実務家、メディアの経営者コンサルタントなどとして、メディアの制作現場、ライフ・コーチング、演説、組織、政治的キャンペーン/問題管理、公共政策など、多様な分野において活躍している。
下位分野

アメリカ合衆国では、全米コミュニケーション学会(the National Communication Association: NCA) が、広義のコミュニケーション学の下に、はっきりと分かれながら、しばしば重なり合いもする9つの下位区分の存在を認めている。すなわち、コミュニケーションと技術、批判-文化、健康、異文化-国際、個人間-小集団、マス・コミュニケーション、組織、政治、修辞学である。

一方、国際コミュニケーション学会(International Communication Association: ICA)は、より多くの区分をリストに挙げており、その数は増え続けている。リストに挙げられた区分の中には、コミュニケーション史、コミュニケーション法・政策、コミュニケーションにおける民族と人種、フェミニズム研究、LGBT研究、グローバル・コミュニケーションと社会変革、情報システム、指導/開発コミュニケーション、ジャーナリズム研究、言語と社会的相互作用、組織コミュニケーション、コミュニケーションの哲学、政治的コミュニケーション、ポピュラー・コミュニケーション、パブリック・リレーションズ、視覚コミュニケーション研究、などが含まれている。
関連領域・学際性

コミュニケーション学は莫大な幅の広さと学際的な性格をもっており、この学問を教育体制の中でどう位置づけるべきかが、学生たちにとっても組織にとっても、難しい判断であると理解できる。知的な体系性が希薄であるにもかかわらず、この分野は多数の学生を集め続けており、学術誌や学会も盛んであり、学界では研究者、教育者、立法者、ビジネス実務家、改革者などが関わって活発な議論が展開されている。

コミュニケーション学は、しばしば社会科学と人文諸学の両方の一部であると見なされており、社会学、心理学、人類学、政治学、経済学などとともに、修辞学、文学、言語学、記号論などの分野から、多くの要素が導入されている。さらに、コミュニケーション学は、工学、建築、数学、コンピュータ科学、ジェンダー=セクシュアリティ研究など、他の学問分野の業績も組み入れ、重なり合うことがある。
扱うテーマ

生活の中の多くの分野において、コミュニケーションは広く、また、重要な形で関わっているため、コミュニケーション学はどこにでも関わってくることになり、何がコミュニケーションを構成し何がそうではないのかをめぐる混乱を、結果としてもたらしている。コミュニケーション学が、確立した学問といえるのか、分野なのか、単なる主題に過ぎないのか、をめぐる議論は盛んに続けられている。

コミュニケーションそのものに関する近年の研究は、ビジネス、組織開発、哲学、言語学、作文、演劇、ディベイト(しばしば「forenics」=法廷弁論の技術、の意=と称される)、文芸批評社会学歴史人類学記号論、国際政策、経済学政治学などと隣接し、重なり合っている。


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