この項目では、植物名について説明しています。その他の用法については「こまくさ」をご覧ください。
コマクサ(駒草、学名:Dicentra peregrina)は、ケシ科ケマンソウ亜科コマクサ属の多年性草本の高山植物[1]。 美しい花と、常に砂礫が動き、他の植物が生育できないような厳しい環境に生育することから「高山植物の女王」と呼ばれている。和名はその花の形が馬(駒)の顔に似ていることに由来する[3]。学名の種小名「peregrina」は、「外来の」を意味する[4]。命名者Makinoは、日本の植物学者の牧野富太郎である[5]。別名が「カラフトコマクサ(樺太駒草)」[6]。英名は存在しない。花言葉は、「高嶺の花」・「誇り」・「気高い心」・「貴重品」[7]。 高さ5 cmほど。葉は根生葉で細かく裂けパセリのように見え、白く粉を帯びる。花期は7-8月[3]。花茎は10-15 cmで淡紅色の花を咲かせる。花弁は4個で外側と内側に2個ずつつく。外側の花弁は下部が大きくふくらんで、先が反り返り、内側の花弁はやや小さく、中央がくびれ、上端は合着している。萼片は2個で早く落ちる。他の植物が生育できないような砂礫地に生えるため、地上部からは想像できないような50-100 cmほどの長い根を張る。タカネスミレなども同様な場所に生育し混生することもあるが、単独の群落をつくることが多い[4][8]。双子葉類の植物だが子葉の発達が悪く、子葉は1個しか出ない。花が枯れると長さ約1.2 cmの細長い楕円形となり、光沢のある黒い種子ができる[4]。染色体数が、2n=16の2倍体である[6]。 日本では北海道大雪山にのみ生育する天然記念物のウスバキチョウの幼虫は、日本ではコマクサを食草としていて、葉の他に茎や花も食べる。他の国では他の同科キケマン属の植物を食草としている[4][9]。花の蜜を吸いにきたマルハナバチなどが受粉を行う[10]。 日本の薬学者の朝比奈泰彦が、コマクサの成分分析の研究報告を行っている[5]。全株が有毒。微量のアルカロイドのディセントリン 千島列島・樺太・カムチャッカ半島・シベリア東部の東北アジアと日本の北海道から中部地方の高山帯の風衝岩屑斜面などの砂礫帯に分布している[4]。大きな岩礫の地にも分布するが、直径0.5-20 cmの礫地または砂礫地に群落をつくる[12]。大雪山の赤岳と宮城県の蔵王連峰には、「駒草平」という地名がある[13]。秋田県田沢湖町(現仙北市)の「町の花」であった。基準標本は、北太平洋のもの[4]。日本にある最も古い標本は、1886年の帝大標本目録にある信州駒ヶ岳産(1880年8月に採取されたもの)のものである[14]。昔は、花の美しさよりも薬草としての価値が高く、古くから腹痛の妙薬として知られていた。御嶽山では登山記念として、コマクサを「オコマグサ」という名で、一株一銭で登山者に売られていたようで、そこからコマクサは「一銭草」とも云われている。「御百草」(おひゃくそう)の原料の一つとして、薬草が修験者に利用され多くが採り尽くされた[15]。現在製造されている長野県製薬の御岳百草丸には、使用されていない[11]。同様に1905年(明治38年)頃に、乗鞍岳や燕岳でも薬草採りにより採り尽くされた[15]。 田中澄江が『花の百名山』の著書で、白馬岳を代表する高山植物の一つとして紹介した[16]。また『新・花の百名山』で、蓮華岳を代表する高山植物の一つとして紹介した[17]。観光用のおみやげとして販売されている山のバッジで、岩手山・草津白根山・硫黄岳・七倉岳・燕岳・常念岳・乗鞍岳などのものにコマクサの花が刻まれている[8]。後立山連峰五竜岳山腹の白馬五竜高山植物園では、約2万株のコマクサが栽培されていて、7月中旬には「こまくさ祭り」が開催されている[18]。絶滅寸前だった本白根山では、地元の中学生や有志によって復元され大規模な群落となっている[19]。御嶽山には群生地があり、麓の木曽町立開田中学校の生徒らが、毎年御嶽山の学校登山を行い調査保護活動を行っている[20]。
特徴
花の細部、雄しべと雌しべ(2013年7月)
花と実(2001年9月)
黒い光沢のある種子(2001年9月)
花が散った後に黄葉した群落(2001年9月)
北海道大雪山系では、ウスバキチョウの幼虫がコマクサを食草としている。
毒性
分布他の植物が生育できないような風衝岩屑斜面の砂礫地に長く根を伸ばし単独の大群落をつくる。