コピーコントロール
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コピーガード(: Copy protection)とは、BDDVDVHSなど映像メディアや、CDMDなどの音楽メディア、その他、パソコンソフトゲームソフトなど各種メディアにおける無断複製を防止するため、著作権者が自ら、その著作物が複製出来なくなるように処理すること。
概要

法的には「技術的保護手段」と呼ばれる著作権者[注 1]の権利の一種である。主たる目的は著作権[注 2]の保護であり、その適用分野は上記のメディアの他、ソフトウェアや印刷物など、多分野に渡る。一般には「コピーガード」「コピープロテクト」「コピーコントロール」「コピー制御」などと称されることもあるが、特に磁気メディアにおける上書きプロテクトと混同される可能性を嫌い、「コピーガード」という呼称が好まれている。

近年、技術の発達により著作物等[注 3]の複製を行った時の質が非常に高いものになり、また短時間で安価に複製が出来るようになったこと、複製を行える装置が広く一般に普及したことによって世界中で大量の複製された著作物等が氾濫するようになってきている。これに伴い、権利者の利権が害されているとの声もある為、著作物等に複製を行えないまたは一定以上の複製が行えないようにする技術的な措置が施されることが多くなっている。とはいえ、そもそも人間が作るものである以上、完璧な技術は存在しないとも言われており、開発当初は強力なコピーガードとされていたものの、数年経ってから思わぬ盲点が明るみに出る事もあり得る。

コピーガードはコピー商品やカジュアルコピーを防ぐためという大義名分で、これまで認められてきた私的コピーを何らかの形で制限する。また、その制限を突破されないために、多くのコピーガードはハードウェアやOSの想定外のことを行っており、たびたびトラブルを起こす。そのために、利用者や低レイヤの開発者からの印象は悪く、またメーカーもサポートに多くの労力がかかる。

コピーガード技術は視聴者に対してプロプライエタリなOSやソフトウェアを強要するものが殆どであった。DVDレコーダやテレビは(組み込み)Linuxで動いているものが多いにも関わらずプロプライエタリなファームウェアでしか再生できず、PC上での再生もWindows上でベンダー依存のソフトウェアを使わなければ再生できないというものが殆どであった。

これはソフトウェアの改良によりコミュニティに恩恵をもたらしたり身近な人を助けることを目的としたフリーソフトウェア運動(FSM)の精神とは相容れないものであった。FSMの支持者が主体となって行った事実は確認されていないものの、とにかく、複製ではなく視聴のためにアクセスガード及びコピーガードの技術的回避のための技術やシステムが半ば公然と開発、提供されることが常習化するようになった。最初にアクセスガード回避が実装されたOSSメディアプレイヤーのVLCは今ももっとも良く使われているメディアプレイヤーの中の一つとなっている。暗号化方式を非公開にして安全性を保つ方法は常に破られてきたため(CSSを解読するlibdvdcss、DVBスクランブルを解読するlibdvdcsa、CPRM/CPPMを解読するlibdvdcpxm、BD+のDRMを解読するlibbdplus、WMPのDRMを解読するFreeMe2 (後にFFmpegに移植される)、iTunesのDRMを解読するQTFairUse (後にVLCに移植される)、Adobe Flashの暗号化を解読するlibrtmpなど)、最近はHDCPやAACSやMULTI2 (地デジ)などのアルゴリズムを公開し鍵によって制限を保つ方法が主流となっている(HDCPはHDCP Encryption/Decryption Codeで、AACSはlibaacsで、MULTI2はARIB STD-B25 仕様確認テストプログラムで、MPEG-CENC (Common Encryption)はFFmpegやMP4BOXで解読可能)。ただしHDCPは弱い暗号の為にデバイスキーからマスターキーが推測されており、強い暗号のAACSもデコードに必要な鍵が漏れている。また、ハードウェアキーを使ったMULTI2も、インターネット越しによるシェアリングによって回避されてしまっている。

また、パソコン向けコピーガードにおいてはOSの防御システムを迂回してCPUやRAMの最深レイヤに直接アクセスしてクラッシュさせたり(Adobe Software Activation)[1]、ブートローダの領域に書き込んでマシンを起動不可能にしたり(Adobe Flexnetなど)[2]、rootkitを仕込んでトロイの木馬に利用されたり(コピーコントロールCD)といった、致命的な脆弱性を抱えるアクティベーションシステムが横行していた。光学ディスクを使ったプロテクトでは、わざとエラーを起こしたりするためにエラー訂正の強力なドライブなどとの相性が悪く、異常系の考慮が甘いドライブを痛めやすい。また、ノートパソコンが安くなるに従い、光学ドライブの搭載が省略されることが多くなってきている。加えてx64対応以前のAlpha-ROMを使ったゲームは、32bitエミュレーションがあるはずのx64 OS上で動かすことができないという事が起きている。ネットワークを使ったプロテクトでは、以前は開発元が倒産した場合にアクティベーションができなくなるというリスクがあったものの、現在ではSteamなどの大手プラットフォームによるオンラインアクティベーション管理が主流となっている。

このように、世の中には様々なコピーガード回避の手段が溢れているが、それらを全て遮断する事は非常に困難であり、また、法規制を強めるなどして取り締まりを強化しようとすると、今度は行政コストなどの問題もあり、著作権者等が意図しないコンテンツのコピーを完全に防止する事は、事実上不可能だとも言われている。そのため、一般的なツールによるカジュアルなコピーを排除し、複製を禁じているコンテンツをコピーガード回避の手段を用いて悪意を持って複製したことが証明できる方向に舵がとられつつある。
現在実用化されているコピーガード

違法な複製を防止するため、コピーガードは進化を続ける。しかし、新しいコピーガードが開発されると、その後、それを解除する技術も必ずと言っていいくらいに開発されるので、結局はいたちごっこに陥る事がよくある。この項目では、現在実用化されているコピーガードについて解説する。過去にコンピュータソフトウェアに使用されていたものについてはWarezに詳しい。
ビデオなどに使用されているもの

映像信号などに使用されているコピーガードを以下に示す。
アナログ映像信号ブランキングエリアに重畳されたマクロヴィジョン方式のコピーガード信号マクロヴィジョン方式のコピーガード信号の波形

APS(Analog Protection System)とも呼ばれる。アナログ映像信号にかけるコピーガードは、通常我々が画面を通じて見る映像の外側にあるブランキングエリアにかけられる。従って、テレビ・モニタで垂直同調の調整機能があるものではそのブランキングエリアを見ることによってコピーガード信号を見ることが出来る。右図中の1がマクロヴィジョン信号、2がカラーストライプである。
マクロヴィジョン方式

ロヴィ社(旧社名はマクロヴィジョン社)が開発したコピーガードシステム。これが記録されたビデオソフトをVHSビデオデッキにダビングしても、ダビングされた映像は極端に明るくなったり、暗くなったり、或いは著しく垂直同調が乱れたりして、視るに堪えがたい画像になる。原理的には、VHSビデオデッキに搭載されている輝度処理回路のAGC(自動利得制御 - 輝度入力信号の利得(gain)を自動調整し、適切な輝度を保つ)機能を誤動作させる映像信号を入れることにより引き起こされる。

多くのテレビには、AGC回路が無いので映像が乱れることはないと言われており、また、そういった理由から市販DVDなどのソフトのパッケージに「DVDプレーヤーをビデオデッキ経由でテレビに接続すると、画像が乱れることがあるので、直接テレビに接続してください」と書かれているのだが、テレビデオについては、一部の機種で入力された映像が乱れて、正常に表示されない場合がある。

マクロヴィジョン方式のコピーガードは、AGC機能を備えるビデオデッキでなければ効果を発揮することが出来ない為、Hi88ミリビデオベータマックス、初期の頃のVHS、或いはAGC機能を切った業務用ビデオデッキでは、コピーガードが働かず、その他、過去に発売された製品の中には、同期信号の入れ替えなどによって、マクロヴィジョン方式が無効(同期信号の入れ替えなどによって、後述の「CGMS-A」も無効になる場合がある)になってしまう録画機も一部存在する。あるいはビデオデッキ2台をRFケーブル接続した場合も、無効になる場合もある。

なお、日本においてはマクロヴィジョン方式のバリエーション的なものも存在し、例えば「松竹方式」「シナノ企画方式」といったものなども存在し、当時としては、かなり強力なガードであり、古いビデオデッキ利用やRF接続程度では、全く解除できるものでは無いほどで、普通に視聴していてもノイズが気になるという苦情もあった。そういった理由であえてコピーガードを除去する装置を利用するAVマニアも一部に存在していた。

もっとも、最近のDVDレコーダーBDレコーダー等はこのマクロヴィジョン方式のコピーガード信号を検出したら、自動的に録画停止になるなどの動作をするものも多くなっているが、上記で述べた同期信号を入れ替える一部の製品を経由して、映像信号を入力する事で、DVD-R/RW/RAMBD-R/RE等のメディアへの録画が可能な場合がある。波形モニタで表示させたマクロヴィジョン信号を、右図中の1に示す。
カラーストライプ

「カラーバーストコピーガード」とも呼ばれる。マクロヴィジョン規格の一部で、急速に変調したカラーバースト信号をビデオ信号に加えることによるコピーガード。前項の「マクロヴィジョン」と重複して掛けられることが多い。このコピーガードがかかったビデオソフトをVHSビデオデッキでダビングすると、録画した映像には細い横線が15本から25本、均等間隔で入る。「カラーストライプ」と呼ばれるのは、色の乗っている部分にのみこの縞模様が見られる為である。波形モニタで表示させたカラーストライプを右図中の2に示す。「松竹方式」「シナノ企画方式」も含めた従来のマクロヴィジョン方式は全く通用しなかったHi8・8ミリビデオも、このカラーストライプだけには作動する。ただし、登場し始めた時期が遅かった(販売・レンタル共にDVDソフトへの移行が本格化し始めた時期だった)事もあり、この方式のコピーガードを映像信号に搭載したビデオソフトは少ない(2003年に公開された映画『アドルフの画集』のVHS版ソフト等)。今後一層、ビデオソフト版は製造・販売されないケースの顕著化が避けられない以上、この方式の存在がますます薄くなり、幻のコピーガード方式扱いされるものと思われる。
CGMS-A(Copy Generation Management System - Analog)

映像信号にコピー世代・コピー可否の管理情報をのせ、これに対応するレコーダーに相応の動作をさせるというもの。これには著作者の意図に従い「コピーフリー」「コピーワンス」「コピー禁止」などの信号を選択して付加することが出来るようになっている。


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