コハク酸デヒドロゲナーゼ
サブユニット: SdhA, SdhB, SdhC, SdhD
識別子
EC番号1.3.5.1
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コハク酸デヒドロゲナーゼ (succinate dehydrogenase, SDH)は、コハク酸をフマル酸へ酸化する酸化還元酵素である。コハク酸脱水素酵素とも。このとき同時にユビキノンなどのキノンを還元することから、コハク酸キノンレダクターゼ(succinate-quinone reductase, SQR)とも呼ばれる。クエン酸回路の8段階目の反応を担い、また呼吸鎖においては複合体II(Complex II)と呼ばれている。真核生物ではミトコンドリア内膜に、原核生物では細胞膜に固定されている酵素複合体である。[1]。 触媒する化学反応は次の通りである。コハク酸 + キノン ⇌ {\displaystyle \rightleftharpoons } フマル酸 + キノール この反応は可逆であるが好気的条件では通常右向きに進む。嫌気的条件では逆反応のフマル酸レダクターゼとして働くこともできるが、普通は逆反応を担う専門の複合体が存在する(大腸菌など)か、豚回虫のように一部のサブユニットを入れ替えることが知られている[2]。 一般的に4つのサブユニットから構成されており、親水性の2つがSdhAとSdhB、疎水性の2つがSdhCとSdhDである[3]。
コハク酸
フマル酸
反応
構造
サブユニット構成ニワトリ由来複合体IIの構造と内部での電子伝達。個々のサブユニットが色分けされており、SdhAは緑、SdhBは水色、SdhCは紫、SdhDは黄色である。
SdhA
フラボタンパク質(Fp)サブユニットとも呼ばれる。補因子としてフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)が共有結合しており、その近傍にコハク酸結合部位(後述)が存在している。
SdhB
鉄硫黄タンパク質(Ip)サブユニットとも呼ばれる。[2Fe-2S], [4Fe-4S], および[3Fe-4S]の3種の鉄・硫黄クラスターが含まれている。
SdhC・SdhD
疎水性サブユニット2つで6個の膜貫通ヘリックスとヘムbを含むシトクロムbを構成する。リン脂質であるカルジオリピン
ヒトの場合、Fpサブユニットに2種類のアイソタイプ(FpI, FpII)が存在している。豚回虫およびシノラブディス・エレガンス(線虫の一種)でもFpサブユニットのアイソタイプが見付かっている[2]。 コハク酸の結合部位はサブユニットAのThr254, His354, およびArg399の側鎖で構成され、そこでFADによる酸化と最初の鉄硫黄クラスター[2Fe-2S]への電子伝達が起きる[4]。 ユビキノンの結合部位はSdhB, SdhC, およびSdhDで構成される間隙に位置している。ユビキノンはサブユニットBのHis207、サブユニットCのSer27とArg31、そしてサブユニットDのTyr83のそれぞれの側鎖で安定化されている。キノン環はサブユニットCのIle28とサブユニットBのPro160に取り囲まれている。これらの残基はサブユニットBのIle209, Trp163およびTrp164と、サブユニットCのSer27(炭素原子)と共にキノン結合ポケットの疎水的環境を形成している[5]。 ユビキノンの結合部位[6] コハク酸結合部位とユビキノン結合部位の間には、FADと鉄硫黄クラスターから成る酸化還元中心が連なっている。これは複合体をほぼ縦断し総距離は40 Aに達するが、それぞれの酸化還元中心間の距離は、生理的電子移動の限界として提案されている14 Aよりも短い[3]。
基質結合部位
酸化還元中心