コノワタ
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「キンコ」はこの項目へ転送されています。樹手目キンコ科キンコ属の動物を用いた料理については「きんこ」を、ナス目ヒルガオ科サツマイモ属植物を用いた料理については「きんこ (サツマイモ)」をご覧ください。

ナマコ
砂地の海底を這うキンコ科の一種 Trachythyone elongata
分類

:動物界 Animalia
:棘皮動物門 Echinodermata
:ナマコ綱 Holothuroidea

学名
Holothuroidea de Blainville1834
亜綱


無足亜綱 Apodacea

楯手亜綱 Aspidochirotacea

樹手亜綱 Dendrochirotacea

ナマコ(海鼠、: sea cucumber)は棘皮動物門のグループの一つで、ナマコ綱 Holothuroidea に分類される。体が細長く口が水平に向くなどの特徴を共有する一群である。世界に約1,500種、日本にはそのうち200種ほどが分布する[1]。食用になるのはマナマコなど約30種類。寿命は約5-10年。
概説

ナマコ綱は、棘皮動物門に属する動物の一群である。この門の他の群(ウニヒトデクモヒトデウミユリ)は体軸を基盤面に垂直にした体をもつのに対して、ナマコ類は体が前後に細長く、腹面と背面の区別がある。見かけ上は左右相称であるが、体の基本構造は棘皮動物に共通した五放射相称となっている。体表が刺や硬い殻ではなく、比較的柔軟な体壁に覆われることもナマコの特徴である。骨格の発達は悪く、細かな骨片として体壁に散らばっている。雌雄異体であるが、外観から区別することは困難である。

ナマコは無脊椎動物としては大きく生育する方で、体長数十cmの種類はざらである。最大級のナマコであるクレナイオオイカリナマコは体長4.5m・直径10cmに達する[2]。日本周辺の海域にはシカクナマコ科のマナマコが特に多く、食用にされるナマコもほとんどの場合はこの種である。
分布と生活様式キュビエ器官(白い糸状の組織)を放出するナマコ
分布

すべてが海産であり、淡水汽水域には生息しない。潮間帯から深海まで分布範囲は海洋全域に及ぶ。大部分が底生で、潜行性のものも含む。深海に住むナマコには、ユメナマコなど浮遊性の種類も知られる。サンゴ礁の海底や深海底の一部では、極めて大きな集団を形成することがある。
行動

基本的に不活発な動物で、海底をゆっくりと這っている。多くのナマコがデトリタス(海底に降り積もって堆積した有機物)を主な餌とし、触手でそれらを集めて食べる。食べ方は種によって異なり、海底表面のデトリタスを舐めとるように食べるものと、砂と共に口にかき集めるものがいる。水中に触手を広げ、海中を漂う有機物を集めるナマコもいる。

特殊な性質として、敵の攻撃を受けると腸管由来の内臓を放出するものがある。熱帯性のナマコの多くはキュビエ器官という白い糸状の組織を持っており、刺激を受けると肛門から吐出する。キュビエ器官は動物の体表にねばねばと張り付き、行動の邪魔をする。マナマコなどキュビエ器官を持たないナマコは、腸管を肛門や口から放出する。ナマコは他の棘皮動物同様に再生力が強く、吐き出した内臓は1-3ヶ月ほどで再生される。同様にある程度絶食の環境にも耐えられる。
形態
外部形態ナマコの外部形態(a - 触手、b ? 肛門、c - 腹部の管足、d - 疣足)水槽の壁を這うアデヤカキンコ。腹側に走行する3列の歩帯が明瞭である

多くは細長い芋虫型で、腹と背の区別がある。前端に、後端には肛門がある。ナマコの体表は主にコラーゲンから成る厚い体壁に覆われている。体壁は柔軟で、伸縮性に富む。表面はクチクラに覆われ、内側には環状筋と5列の縦走筋があり、これらを使って呼吸や運動を行う。体重の90%以上は水分である。深海の浮遊性ナマコは寒天質の体をしており、重量を減らすことで浮力を得ているとみられる。

ヒトデと違ってわかりづらいが、ナマコの体も棘皮動物に共通する五放射相称の構造となっている。ナマコの腹には中央とその両側に歩帯(管足が並ぶ)があり、背側には左右両端に歩帯(管足が変形した疣足が並ぶ)がある。すなわち、全身は放射状に並んだ5つの歩帯から構成されている。腹側の管足は移動に使われ、先端が吸盤となっている。無足目と隠足目のナマコは管足を持たず、蠕動運動によって移動する。板足目のナマコは多くが深海性で、一部には太く大きな管足を持つ種類がいる。触手が発達したキンコ属の一種、Cucumaria miniata

口周辺には管足が変形した触手が輪状に配列し、餌の摂取や、種によっては移動にも使われる。触手は他の管足よりはるかに大きく、先端は種によってさまざまな形に枝分かれしている。触手は口に引っ込めることも可能で、本数は5の倍数であることがほとんどである。

ナマコは骨格を持たないが、体壁の内部に石灰質の骨片が無数に散らばっている。骨片は肉眼で確認できる大きさのものもあるが、大部分は顕微鏡サイズで、微小骨片 (spicule) と言われる。骨片の形は穴の空いた平板型、車輪状、カギ型、錨型などさまざまで、分類上の形質としても使われる。

ナマコの体壁は真皮と筋肉から成り、水分の含有量が高い。体壁はその硬さを大きく変化させることができる。硬質ゴムのように硬くもなり、つかんだ指の間から流れそうなほど柔らかくなることもある。柔らかくなって岩の隙間にもぐりこみ、そこで硬くなって天敵や波に引き出されないようにするなど、ナマコはこの性質を防御に利用していると考えられている。
内部形態星型の疣足が特徴のバイカナマコ(Thelenota ananas)
消化器

ナマコは消化器として食道(種によっては不明瞭)・小腸大腸を持つ。口から肛門まで直線状あるいはS字型の単純な構造をとる種(マナマコなど)と、とぐろを巻いた複雑な構造をとる種(キンコなど)がある。食道の入り口の周囲には囲食道骨と呼ばれる10個の骨板が並ぶ。大腸は総排泄腔と肛門へ続き、肛門には肛歯と呼ばれる5本の歯がついている。
呼吸器

ナマコは明確な呼吸器を持つことで棘皮動物の中では突出している。総排泄腔から体腔内に左右一対の樹状に分岐した管が伸び、ここに海水を出し入れすることで呼吸が行われる。この器官を呼吸樹 (respiratory tree) という。なお、ナマコは皮膚呼吸も行っており、呼吸樹を失っても直ちに生命に危険が及ぶわけではない。板足目・無足目のナマコは呼吸樹を持たない。

楯手目のナマコの一部には、呼吸樹の基部に白い糸状の器官がつながっている。これはキュビエ器官と呼ばれる特殊な防御器官で、ナマコは敵に襲われるとキュビエ器官を肛門から放出する(行動を参照)。
循環器

ナマコには心臓がなく、明瞭な血管系は持たない。酸素の輸送など体内の循環系を司るのは、水管系ならびに血洞系と呼ばれるシステムである。水管系は環状水管と放射水管からなる。環状水管は食道の周りを取り巻き、5本の放射水管とポーリ嚢(袋状の組織で、機能は不明)につながっている。放射水管は体壁の中を走行し、管足に分岐する。管足や触手の基部には瓶嚢と呼ばれる袋があり、ここに水管内の液体を出し入れすることで管足の太さを調節している。水管の中を流れている液体の成分は、海水とほぼ同じである。

血洞系の構成は水管系とよく似ており、周口血洞環から伸びる5本の放射血洞からなる。放射血洞は多数の細い管を腸管に伸ばしていて、栄養吸収・輸送の役割を持つものとみられている。水管系・血洞系はそれぞれ体壁・腸管においてメインとなる循環システムであるが、全身への酸素・栄養供給は体腔内に満たされた体腔液が行っている。
神経系

神経系は食道周囲に環状に配置する周口神経環と、後方へ伸びた5本の放射神経からなる。などまとまった感覚器官は持っていない。外敵との接触や光の変化などについては、体壁に分布する皮膚神経叢によって感知される。
生殖器

生殖巣は体の前方にあり、精子を放出するための生殖口は触手の後方付近に開く。繁殖期には、生殖巣は体腔のほとんどを占めるほど大きくなる。精巣と卵巣は色合いがわずかに異なるものの、肉眼で区別することは一般に難しい。
繁殖と発生
繁殖

ナマコには雄と雌の区別があり、多くの種は体外受精による繁殖を行う。日本周辺でのナマコの産卵期は3月中旬から8月下旬までの間で、この期間に1匹のマナマコが生む卵の数は2,000万個程度と見積もられている[3]。ナマコの生殖口は後頭部にあり、放精・放卵の際には体の前部を大きく持ち上げ、L字型の姿勢をとる。
発生

初期の幼生はウニなどのそれに似ているが、次第にやや縦長の体に複雑に折れ曲がりながら体を取り巻く繊毛帯を持つ幼生(アウリキュラリア幼生:ラテン語耳たぶの意)となって、海中を漂う浮遊生活をする。次の段階では型のドリオラリア幼生(ラテン語で樽の意)となるが、この時期の終盤には海底に沈むことが多くなり、底性生活へと移行していく。


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